中国の民間切り紙 文・写真=力強 切り紙は、民間の芸術として、中国で2000年余りの歴史を持つ。およそ中国の各地には、それぞれ切り紙の名人がおり、村によっては、すべての村人が切り紙をたしなむ村もあり、切り紙の里とも呼ばれる。中国の民間芸術は、地方の色濃い特色をそなえ、各地の切り紙もまたそれぞれの風格を持つ。 切り紙は、古代、金属に模様を施した技術がその源である。女性たちは、また、金銀を薄くのばした板や、色つきの絹を花や鳥に切り抜き、飾り物とした。その後、絶え間ない発展により、彼女たちは、紅の紙または色つきの紙を草花や動物、魚、虫、各種の人物などに切り抜き、おめでたい日にはそれを窓や門に貼って装飾とし、「窓の花」と呼び、灯りの上に貼ったものは、「灯りの花」と呼び、贈物の上に貼ったものは、「贈物の花」と呼んだ。特に、中国北部の農村では、木の格子の窓枠に白い紙を糊付けし、その上に赤や、そのほかの色の「窓の花」を貼ると、室内には、おめでたい気分が満ちる。ゆえに、各家では、旧正月の折に窓に新しい白い紙をはり、そのうえに新しい「窓の花」を貼った。
中国の切り紙は、中国の民間芸術のなかでも、もっとも民族の特色を備え、民間の色彩、地域の特徴にあふれた民間美術作品である。切り紙の言語は、もっとも生活に密接であり、その題材は豊かで、内容は広範であり、種類は多く、その数は巨大なものである。切り紙の材料は安価で、簡素、作業は簡単で覚えやすく、中国の民間に広く根付いている。 切り紙には、切る方法と、小刀で切り抜く方法の二つがある。民間の切り紙は、かつては、切る方法が主で、日常的に使う普通のハサミを使っていた。特にこだわる場合は、刃の細いハサミを使い、特殊加工を経た、切り紙専用の紙を使い、一度に2、3枚を重ねて切った。この数十年来は、絵柄が細かに、さらに正確になるため、小刀で切り抜く方法が主になり、一度に数十枚を作る。 どんな場所でも、どの方式の切り紙でも、その多くは、人が喜びとともに見聞きする事柄が題材となる。陝西省北部の切り紙は、多くは、人々が生活のなかでよく見聞きし、熟知している事柄が題材である。家畜、家禽、花、鳥、魚、虫、果物や野菜、盆やカゴ、急須、花瓶、人やその物語。陝西省の延安地区の切り紙は、「カササギと梅」「牛を放す牧童」などの図が含まれ、中国北部の農民の身辺の出来事への嗜好を映す。延安の切り紙は、素朴、おおらか、簡素、優美な芸術風格と濃厚な地方の特色とで称えられる。 延安の切り紙の作り手たちは、みなハサミをつかい、刀で切り抜くことはしない。一般的には、下絵を描かず、手に従って切り、ひどく自由である。その風格は多種多様であり、北部地区の切り紙は、全体に整い、鋭利で、ラインが長くなく、糸のように細い。中部地区の切り紙は、大胆で、素朴、ラインは太く力強く、そのフォルムは生き生きとしている。南部地区の切り紙は非常に華麗で、繊細、柔らかく、形成するラインが多く複雑であることを特色とし、通例ではラインが髪の毛のほうに細く、小さな点が針の先のようであるのが優れたものとされる。 北部のおおらかな表現形式と比べ、中国南部の切り紙は、細く長い。江蘇省揚州市の切り紙は、切り方が精巧で、ラインが長くのびやかであることを特色とし、清らかで華麗、古風で飾り気がなく典雅な印象をあたえる。揚州の切り紙は、その多くが窓にはる切り紙、灯りにはる切り紙、また、枕の刺繍、帽子の刺繍、、靴の刺繍の型になっており、鑑賞の対象になるだけでなく、その形に従って刺繍をすることもでき、人気がある。揚州の切り紙は、テーマが広く、真実を追究する写実性、美しさを求めての変化、生き生きとした姿を概括し、その素晴らしさをより誇る特色がある。
刀で刻む切り紙については、河北省蔚県を代表とする。この県は、中国の切り紙の郷と呼ばれ、それは、窓に飾る切り紙を主要な形式とし、彩色で染めを施し、非常に装飾性に富む。彼らの切り紙は、北部地域の特色があり、特に県城南の南張荘をもっとも代表的なものとする。 蔚県南張荘は古村である。200年前、村の人々は切り紙をはじめ、現在ではその大多数の家庭が切り紙をたしなみ、また少なくない人が切り紙を家業とする。 ハサミ、小刀以外に、地方によっては、ハサミと小刀を併用する土地もあり、切る手法と紙を刻む手法をともに用いるほか、貼る手法ももちい、より複雑な切り紙を生み出している。例えば山西省浮山県の作り手は、龍の図案の切り紙を作り、金銀の紙で切り抜いた龍の身の上に彩色の紙をはり、龍の体を豊かに表現し、それは、まるで生き生きと動き出すようである。広東仏山の切り紙は、切る、切り開く、切り抜く、ノミで打つ、判を押す、書く、裏打ちする、などの手法をあわせ、それは、色彩が鮮やか、郷土の味わいがあふれた民間の美術品である。仏山の切り紙は、ハサミで切り紙を直接切り、模様を生み出すものもあり、小刀で数十枚を重ねて切り、各種の人物や花鳥などの図案を切り出すこともある。また、銅を薄く伸ばした板の上で、小さな丸ノミで点を打ち出して図案にし、さらに色のついた紙を切り抜いたり、切ったりしたものと、書いたもの、判子をおしたものなどと一緒にあわせたものもある。その特徴は、ラインが大胆でおおらかなものと、細やかでリズムに満ちたものとが、両方あわされ、見る人が感嘆を惜しまないものとなっている。
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