第8回アジア欧州会合(ASEM)首脳会議に出席した温家宝総理と菅直人首相が4日、「廊下」で言葉を交わした一週間後、エレベーターで「偶然」に出会った日本の北沢俊美防衛相と中国の梁光烈国防部長は握手をして20分ほど話し合い、特別な「エレベーター外交」を終えた。
多くのメディアは、これは両国関係の明らかな改善を示すプラスの行動だとしているが、中国社会科学院日本研究所の高洪副所長は、「偶然の話し合い」は不正常な状態であり、日本政府は自ら引き起こした不利な局面を反省し、より積極的な態度で、ハイレベルの正式な会見の早期実現に努力しなければならないと話す。
中日間の衝突の必然性
日本は釣魚島沖での衝突事件での対応で、これまでの政策を変えて漁民を拿捕するという先例を作り、事件は急速に悪化した。高洪副所長は「これは日本の内外環境と密接な関係がある」と言う。
この数年の中国経済の急成長は日本社会をあわてさせている。このような状況の中で、「市民型」のタカ派の政治家たちは、社会の一般的な世論や国民の感情に迎合するために、中国に対して強硬な姿勢をとり、菅内閣は鳩山内閣の政策調整の失敗を考慮して、対中政策の変更を通じて、民主党の新しいイメージを樹立しようと考えている。
その他にも米国は最大の外部要因である。東アジア地域の経済発展に伴い各国間の関係が緊密化し、「亜元」など地域間通貨の登場が現実味を帯びているが、これは米ドルの支配権を維持したい米国にとっては災難そのものだ。米ドルへの挑戦を阻止するために、米国は中日関係が親密になり過ぎることを望んでおらず、中日間にもめごとや摩擦を作り出すよう日本をそそのかしている。
以上の3つの原因は、中日間の戦略的バランスに新たな衝撃をもたらす。釣魚島沖での衝突事件は偶然だったが、かつての戦略的バランスが壊れたあと、両国間の敏感な問題において摩擦や衝突が発生することは論理的には必然である。
日本に紛争を直視させること 一部の学者は今回の衝突事件発生後、釣魚島問題への対応では、再び「紛争を棚上げする」ことは不可能であり、中国は早く新しい解決案を出さなければならないと考えている。こうした見方について高洪副所長は、「紛争を棚上げして共同で開発する」という方針は依然として問題解決への道だと話す。
今のところ釣魚島は日本側の支配下にあり、最近の日本国内には、釣魚島における領有権紛争の存在を認めない人が増えている。外交が努力する近い将来の目標として、釣魚島問題の解決は決して一度でけりがつくというものではなく、慎重に進めていくしかない。最初の一歩は、「釣魚島で領有権紛争がある」という基本的な事実を日本に認めさせることである。
そして高洪副所長は「今は不愉快な事件を通して、日本や国際社会にこの問題を重視させ、日本に交渉のテーブルに戻させることであり、釣魚島沖及び周辺海域の紛争地域を画定し、摩擦防止ルールを制定し、双方が認めるメカニズムを作り上げることが私たちの外交上の一つの方法だ」と語る。
「偶然の話し合い」は不正常な外交
高洪副所長は、日本側は中国側が厳しい対応策を取ったあと、数回にわたって「話し合い」など非公式な外交努力で中日関係の改善を求め、これは外交手続きからいってあまりとがめるべきではないが、今回の事件は完全に日本が引き起こしたことで、その後の悪化は日本の処理方法が原因であり、もし日本の努力が「偶然」という側面にとどまるのであれば、それははるかに不十分だと考えている。
そして高洪副所長はこう指摘する。「初めてすばらしい比喩を作るのは天才だが、2度目に同じ比喩を作るのは凡人。何回も何回も同じ比喩しか作れないのは愚か者だ。日本政府は自らが作った不利な局面をよく反省し、より積極的な姿勢で、双方が握手をする時にはその手をより長く伸ばし、いつも立ち止まって言葉を交わすのはやめたほうがいい。言葉を交わすのは正式な会談ではなく、正式な声明もなく、不正常な外交状態だ」
双方は新しいバランスを見つけるべき
今回の衝突事件は、日本側による船長の釈放で緩和されたが、徹底的な解決にはほど遠く、マイナスの影響もまだ続いている。高洪副所長は、中日両国が互恵関係の枠組みで相互関係を発展していきたいのであれば、新しいバランスを見つける必要があると話す。それは積極的に両国関係の発展の交流に努力し、絶えず交流や協力を促す新しい成長分野を見つけ、両国国民の相互寛容を作り出す前提やチャンス、互いに補い合い、求め合い、信頼というプラスの要素を利用して、再び友好的な状態を回復することであり、それは両国にとって有利なことだという。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年10月14日
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