劉江永:釣魚島漁船衝突事件の背後のアメリカの影

 

報道によれば、2010年9月23日、ヒラリー・クリントン国務長官は、前原誠司外相との会談時に、「これらの諸島にはあきらかに日米安全保障条約が適応される」と表示している。米国国務長官がこの立場を示すのは初めてである。2010年10月6日には、キャンベル・米国務長官補と日本の前原誠司外相と会談を行っている。双方は、漁船衝突事件後の日中関係の緊張および朝鮮半島情勢について意見を交換し、日米同盟の重要性を強調し、日米の協力の強化について一致している。キャンベル・米国務長官補は、日本側に対し、漁船衝突事件が中日関係におけるコントロールを失わせることに対するアメリカの憂いを伝え、また菅直人首相が中日関係の急激な悪化が中日およびアジア各国の利益に合致しないことを認識し、必要な措置を採っていることを評価した。オバマ政権は、共和党が重用してきたタカ派のアーミテージのようにまったくおかまいなし、というのではなく、中日関係の劇的な悪化の際に、まず時局がコントロールを失い、アメリカがそこに巻き込まれることを防止している。

10月11日、ゲーツ米国防長官は、「過去10年と同じように日米安全保障条約の義務を履行する」と述べている。いわゆる過去10年とは、実際には、2000年以来、アメリカが釣魚島を日米安全保障条約の適用範囲にするという政策を暗示し、それは継続して執行されている。

米軍の角度からみれば、釣魚島地区および沖縄西南地区においてアメリカと日本の軍事配置を強化することは、中国海軍がいわゆる「第一の諸島」を通過し、「第二の諸島」に入ることに対する監視、コントロールと妨害に有益であるだけでなく、将来的には台湾海峡局勢においてアメリカと日本の台湾海峡に対する関与能力を増強し、中国大陸部が花蓮東部から台湾に対し脅威となることを阻止する。

1945年の日本の敗戦後、アメリカ大統領ルーズベルトが蒋介石政府に琉球を委託管理させようと計画した以外、帝国主義の本能からも、実用主義のやり方からも、地縁戦略の思考からしてもアメリカの台湾およびその付属する諸島である釣魚島への関与と日本への支持は、19世紀70年代の李仙徳から現在のオバマ政府まで100年が過ぎても基本的には本質的変化はない。これはアメリカの釣魚島問題においての長期的に突出する特徴である。

東アジアの構造からみると、2010年はひとつの曲がり角であり、中国は日本に代わり世界第二の経済大国となる。アメリカの国家安全戦略の観念に変化が起きなければ、中国がいかなる外交政策を採ろうと、いかなる制度を実行しようと、中国とアメリカがどれほど友好的であろうと、アメリカは心の奥底で中国を最大の挑戦者と本能的にみなしている可能性があり、すべてがアメリカの国家安全をおびやかすもののレベルが上昇したものとみなされる。これは、アメリカの国家モデル的戦略本能であり、中国をもっとも重要な「治めるべき対象」とし、包囲し、導き誘い、威力をもって脅す。中日が近づけば、アメリカは釣魚島の問題のうえで中日の間に紛争をつくりだし、中日両国を操作する目的に到達する。またこれと同時に、日米の間の共同利益は確実に増加するので、中米関係は良くなったり悪くなったりして、良くても良いからといってどうなるというのでもなく、悪いからといってどうなるというものでもない。良いなかに悪があり、悪いなかに良がある。友人とは交わるべきもので、だからといって心のなかに何も考えがないわけでない。

未来の30年、中国はさらに一歩壮大に発展することにつれ、アメリカは旧ソ連と日本に運用したすべての手段をもって中国に対する。これが釣魚島事件発生の大きな背景の一つである。もし日本の釣魚島における問題の矛盾が激化するにつれ、中日関係は急激に悪化したら、アメリカはまた日本によって中国との軍事衝突に巻き込まれることを憂い、中日の対話、平和的解決の公平をよそおって希望し、中日がともに善処する態勢を作り上げる。

「蚌鷸の争い、漁夫の利となる」、これはまさに「世界の第一」が中日の釣魚島の争いを利用して、「世界の第二」をおさえ、「世界の第三」を駆使させている戦略本能である。火遊びは、燃え尽きてしまうことさえなければ、また続けて遊べる。今後の30年、アメリカは、日本などの国を闘牛に使う深紅の布とし、やすみなくことふるって挑発し、中国を死ぬことが決まっているオスの牛とし、深紅の布にむかって懸命に突かせ、最後に力尽きたときに致命的一撃を与える。それゆえに、中国は自国を闘牛場の牛とするようなことをよくよく気をつけて防止し、戦後の3番目に失敗した「世界第二」とならないようしなくてはならない。

 

人民中国インターネット版 2010年

 

 

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