第二のスタート地点に立つ中国の改革

 

文=遅福林

中国の経済発展方式は、生産主導型から消費主導型への変換の最中にある。このような経済発展方式の変換は、第12次五カ年規画(2011-2015年 以下「十二・五」と略す)期間中において、もっともキーとなる時期を迎える。それは中国社会の多くの領域にわたる体制の創新に及ぶため、中国の改革はまさに第二のスタート地点にあるといえる。

過去30数年、投資を主導とする中国経済の発展方式は、経済総量において急速な成長を得、今年、GDP総量は日本を越え、世界第二の経済大国となった。けれど、政府主導の経済運営方式のもと、国家は比較的多くの収入を得、それは市場メカニズムが不完全である状況のなか、政府の投資により急速な経済発展を実現するには有利であったが、「国富の優先」という明らかな特徴を伴う。

だが「国富の優先」は、国家の生産力の上昇の優先は、消費能力の上昇を越え、社会の総需要の不足をもたらす。国民の収入が急速には上昇しない、という状況のもとで、依然として重点を物質的生産の上におくならば、過剰生産の危険を容易に生みだすだけでなく、新しい社会の矛盾とリスクを引き起こす可能性もある。また金融危機の突発ののちでは、欧米など先進国の消費需要は中長期的には縮小の趨勢であり、輸出に頼る中国の経済成長モデルの終焉を中国に迫る。

中国は長期にわたって経済総量を方針とする政策を実行しており、それは近年、都市部と農村部の格差、業界の格差、貧富の格差を拡大させている。分配の不均衡は、社会の富を少数に集中させ、収入格差は、すでにジニ係数の示す危険水域に逼迫しつつある。ゆえに、多くの問題は日を追って社会各界の焦点となり、同時に中低収入者の消費能力と消費レベルの上昇を抑えている。利益の分配は、調整が必須の段階である。

ゆえに、中国の発展方式の変換は必須である。経済モデルの変換は、経済システムの大調整、利益分配の大調整であり、また政府の職能の転換であることから巨大かつ系統的な一つのプロジェクトである。だが、中国の全体的な発展の趨勢からすると、収入分配の体制改革は、中国の経済発展モデルの全面的転換であり、消費主導の形成が重要な基礎となる。「民富の優先」をいかに堅持するか、発展の成果をすべての社会の成員が享受し、市民の収入レベルをいかに上昇させるかが、「十二・五」の消費大国の建設にあたっての基本的な課題である。

そのため、先の5年、中国はさらに収入分配体制の改革に注力し、市民の収入レベルの上昇と、過度な収入による分配格差の縮小を重視し、市民の収入の増収速度をGDP成長速度を下回らないものとする。関係制度の改革により、市民の収入のGDPに占める比重を現在の43%前後から60%前後に増加させ、労働報酬の成長を労働生産率の上昇を反映するものとし、企業の利益の上昇を下回らないものとする。労働者の報酬を現在の40%前後から50%前後とする。現在の、中国の都市と農村部一体化の関係制度により、重要な進展が得られれば、都市部と農村部の収入格差は、現在の3.3:1から3:1前後に縮小される。

分配制度の改革は、重大な利益関係の調整におよぶ改革の深化である。それは、国家、企業、住民の利益分配間の重大な調整を含み、都市部と農村部、地区、業界間の利益分配の重大な調整、中央と地方の利益分配の重大な調整にその範囲が及ぶ。その難度と複雑さは、中国の過去の改革をはるかに超える。1990年代の初め、鄧小平は「豊かさを実現し、豊かになったあと富をどのように分配するかが大問題である。問題がすでに生まれ、この問題の解決は、いかに発展するかの問題の解決よりさらに難しい」と予言している。中国の改革はまさに第二のスタートラインにあるのだ。

 

遅福林
博士課程指導員、全国政治協商委員、中国(海南)改革発展研究院院長、中国経済体制改革研究会副会長、中国行政体制改革研究会福会長。国家行政学院、北京大学、浙江大学など多くの大学の特任教授。経済モデル転換および実践の研究に長期間従事し、国務院特殊補給金対象者。2009年、「新中国経済建設60年に影響した100人の経済学者」に入選。

 

人民中国インターネット版 2011年3月1日

 

 

 
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