高齢人口 2030年には日本抜き世界一

上海の老年大学でピアノの演奏と声楽を習う
 最近見たテレビのお見合い番組で、内気そうな若者が長い間もじもじした挙句、お嫁さん候補の出場者に向かって切り出した。「結婚したら田舎で一人暮らしをしている母親と一緒に住みたいのですが……」。その瞬間、それまで、若者に心を動かされていた彼女たちの期待はガラガラッと音を立てて崩れてしまったようだ。

 この若者のような悩みを持つのは1980年後生まれの「80後」だけに限らない。『2009年度中国高齢事業発展統計公報』によると、中国の60歳以上の人口は1億6700万人を超え、総人口に対する比率は12.5%に達し、しかも毎年800万人のペースで増えているという。

3割が65歳以上の社会  

驚くべきことは、中国は現在の高齢化率が高いだけでなく、そのスピードが想像以上だということだ。統計によると、先進国社会の高齢化は数十年から百年余で到達している。例えば、フランスは115年、スイスは85年、英国は80年、米国では60年の年月を経ている。これに対して中国は「一人っ子政策」などの影響で、1981年からわずか18年で達してしまった。猛スピードで高齢化が進み、しかも、この先、長期にわたってその速度は維持される見通しだ。

『中国財政政策報告 2010~2011』は、2011年から20年間に、高齢化は加速度的に進行し、2030年には65歳以上の人口が総人口に占める割合が日本を追い越し、高齢化率は世界一になる、と推定している。

2050年には高齢人口が4億3700万人に達し、高齢化率は30%以上になり、その時の中国人の3、4人に一人は高齢者だ。

「現在、総人口が年率0.66%で増えているのに対して、高齢人口はその五倍近い年率3%で増えている。しかも、高齢化は東部が速く、浙江、上海両地区では4.5%に達している」と、民政部(省)の担当者は語っていた。

ユネスコ(国連教育科学文化機関)が制定した規準では、60歳以上の人口が総人口の10%に達した時点で、既に高齢化社会に入っていると見なす。上海は全国平均よりも20年も前の1979年に高齢化社会に入っており、1990年には浙江、江蘇、広東の各省と天津市が高齢化社会入りしている。現在、上海、浙江などの経済が発達した地域の高齢化率は20%前後に達している。

 豊かな社会が来る前なのに

 北京市民の孟憲平さんの母親は89歳になり、誰かが面倒を見なければならない状態だ。しかし、孟さん夫妻は二人とも働いており、住宅事情から言って、家政婦を雇うわけにも行かない。そこで孟さんは母親と相談して、高齢者施設を探すことにした。気に入った施設を見つけて、昨年末に登録はしたものの、空きベッドがなく、いまだに入居することができない。  「順番待ちは四千人を超え、2004年から待っている人が多数いらっしゃいますが、未解決です」というのが施設側の説明だ。国家二級福祉事業施設で、500床以上ある北京第一社会福利院でさえベッド一つ手に入れるのも難しい。こうした状況は北京にとどまらず、上海第三福利院でも数千人が空き待ちしている。

国際的に通用している基準によると、高齢者施設は老年人口の5%を収容できる量が必要だが、800万床必要な中国では250万床しかなく、550万床も不足している。

不足しているのはベッド数だけではない。中国は世界で唯一老年人口がすでに一億人を超え、高齢化社会入りを目前にしているが、養老保障、医療保障、養老サービス、独居老人家庭など解決しなければならない問題が山積している。

中国の人口高齢化は先進国にはなかった深刻な事情を内包している。「豊かになる前に高齢化社会に到達してしまった」のだ。

現役時代は朝夕の通勤に嫌になるほど乗った自転車も今では貴重な運動用具

「先進国が高齢化社会に到達した際の一人当たりGDP(国内総生産)は5000ドルから1万ドルだった。これに対して、我国が到達した1999年では、わずか806ドルにしか過ぎず、2009年時点でも4000ドルに届いていない」と、民政部の担当者は深刻な状況を明らかにした。

こうした角度から中国の高齢化社会が直面する諸問題を見ると、先進国に比べてより厳しい状況に置かれていることがよく分かる。例えば、養老年金の創設はかなり遅く、1991年から始まった企業改革にともなって制度が確立されたものの、まだ徐々に改善が進んでいる段階だ。一方、農村の養老保険はやっと始まったばかり。こうした事情から、中国の高齢化問題を「コントロール」するのはきわめて困難だろう。

老年人口の増加は生産人口の比率の低下を意味している。ある研究によると、2039年になると、二人足らずの納税者が一人分の養老費用をまかなわなければならなくなり、いわゆる「高齢社会の危機ポイント」に到達する。

さらに、それぞれの両親(四人)を夫婦(二人)が扶養し、子ども(一人)を育てる「四二一家庭」が大量に出現する時代になり、夫婦の負担はますます大きくなる。中国高齢事業発展基金会の李宝庫会長は次のように指摘している。「子どもが巣立ち、老人だけになっている独居老人家庭は大都市の平均30%以上で、さらに50%を超えている大中都市もある」

 

人民中国インターネット版 2011年3月2日

 

 
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850