難題は農村の老後対策

都市の高齢者対策も深刻だが、農村ではさらに困難に直面している。

中国高齢科学研究センターの調査によると、農村では60歳以上の高齢者が1億人を超え、全国の老年人口の75%を占めている。農村の高齢化率は都市に比べて1.24ポイント高く、この状態は2040年まで継続すると推定されている。都市と農村の高齢化率の差異は、両者の経済社会の発展過程と社会保障の格差を増幅し、農村部の高齢化問題をますます深刻にしている。

薄れる「老後は子に託す」  

67歳の李国安さんは家の塀に寄りかかりながら、腰からキセルを取り出し、遠くに広がる稲田を眺めやった。

安徽省合肥市の在宅介護サービスセンターで、独居老人らに届ける料理を作っているボランティア(左の2人)

重慶市開県岳渓鎮九亭村出身で、若いときからずっと畑を耕してきた。昔からの考え方から言えば、ゆっくり休んで、幸せな余生を送るところだろう。しかし、今でも長年苦労を共にしてきた奥さんと一緒に畑仕事を続け、特に農繁期は朝から暗くなるまで働かなければならない。

「まだ体が動くからいいが、あと何年かして体が動かなくなったらどうすりゃいいんだ。子どもに老後の面倒を見てもらいたいよ。それが本望じゃ。だが、子どもは出稼ぎに行って、稼ぎがよくなくて、自分の生活が精一杯らしい。そんな子どもになんとかしてくれとは言えないよ」。李さんはもういつまで働けるか分からないと感じており、一番心配なのは老後の生活だ。どこの農村でも老人たちはこうした悩みを抱えている。

「子どもを育て、老後は世話になる」というのが数千年の伝統だ。しかし、今は農村青年が都市に稼ぎに出掛け、高齢の父母の面倒を見ることができなくなっている。老齢科学研究センターの調査によると、都市部の約半数の高齢者が子どもと同居しておらず、農村部では独居老人が約四割を占めている。農村から大量の労働力が都市に流れている現状を考えれば、独居老人問題はますます深刻にならざるを得ないだろう。

北京の天壇公園で真冬の早朝でも、集まって元気に声を張り上げて合唱(写真・劉世昭)

このほか、子どもに父母の老後を見る余裕がなかったり、家庭内の不和が原因で、自分で「寄る辺なき苦境」に立ち向かわなければならない。  老後は子どもに面倒を見てもらうという考え方は少しずつ変わり始めている。その中の一人、重慶市合川区大石鎮双石村の羅世芳さんは「若い人は子どもには勉強させなければならないし、家も直さなければならない。我々が少しでも彼らの手伝いができれば、彼らも助かるだろうし、我々もうれしい」。  このように「老後は子どもに託す」という考え方が薄れてきているだけに、農村の老後対策は焦眉の急になっている。1990年代の初め、民政部は試行の経験を踏まえて、『県レベルの農村社会養老保険基本方案』を通達した。後に「老農保険」と呼ばれるようになったが、農民個人の負担が大きく、相互扶助の比率が低く、実際には、一種の貯蓄と変わらないため、積極的な加入者は少ない。

 

 

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