難題は農村の老後対策

 

 3500万人が養老金受領

「わしはずっと百姓だから、夢にも思わなかったんだが、年をとってから、街の『勤め人』と同じように月給をもらってるんだよ」。2009年末、山西省清徐県源鎮孔村の67歳になる張建家さんは生まれて初めて「養老金」という月ぎめのお金を支給された。初めてもらった時の感激は今でもよく覚えており、喜びを隠さない。彼は若いころ、退職金があり、それを老後の糧にできる労働者たちが羨ましかったそうだ。今では農村でも養老金が支給され、今後の生活の心配をしなくてもよくなった。

昨年2月、四川省仁寿県で行われた新型農村養老保険金の初支給の記念式典。カゴを背負って仕事に出掛ける前の農民が多数参加した

 張さんが毎月受け取っている65元の養老金は、国が全額支給する最低基準の基礎養老金55元に清徐県が10元を補填して支給されている。65元といえば、都市では一回の外食代にも満たないだろう。農村では?  

「一日あたりにすれば数元だが、わしが一日に必要な油、塩、めん類、たどんを買うには十分だよ。子どもからお金をもらう必要はないね」と、張さんは満足げに話してくれた。  

張さんのようなケースは、2009年8月から試行された「新型農村養老保険」(新農保険)が大いに役立っている。「新農保険」は満16歳以上(在学生は含まない)で、「都市職工基本養老保険」に加入していない農村住民は、本籍地で自ら志願して加入できると規定している。この保険は個人負担の保険料、団体補助、政府の補填からなり、すべて個人口座に記入される。国が定めた個人負担額の基準は、100元から500元まで百元刻みで設定され、地方は実情に応じて、さらに刻みを増やすことができ、加入者が選びやすいように配慮している。地方政府は加入者の負担に毎年一人30元を下回らない補填を実施している。

安徽省合肥市肥東県は昨年2月から、60歳以上の13万人に月額60元の養老保険金を支給している。窓口で手続きをしている受給者

30歳近い湖南省株洲県の農民・陳知林さんの両親は60歳に達していない。しかし、陳さん夫妻は二人と両親の合わせて四人分の百元を自己負担しての「新農保険」に加入している。陳さんが言うには、これで後顧の憂いがなくなり、両親は自分たちで老後を過ごせるし、彼自身も両親の分を負担することで幸せに感じる。また、自己負担額の刻みが多く、毎年変更できるので、収入が多い時は高い刻みの金額を負担する。そうすれば将来の支給額も多くなるからだ。

「新農保険」制度が実施された時に、満60歳で「都市職工基本養老保険」の優遇を受けていない加入者は自己負担が無料で、毎月55元の基礎養老金を受領できる、と規定されていた。陳さんの祖母は昨年10月に亡くなったが、亡くなる前までの数カ月、月額55元の養老金を支給され、家族は「この政策がこんなに良いとは思わなかった」と、語り合ったそうだ。  

「新農保険」は試行以来、農民の幅広い歓迎を受けた。昨年末、全国838県と北京、上海など四直轄市の大部分の区、県が国の試行対象に指定され、この他、12省の298県が自費で試行に着手した。その結果、現在、3500万人の農村の高齢者が養老金を受給されている。

 2020年には全高齢者を対象

 「新農保険」計画の工程表によると、2009年段階で、全国の県、市、区の10%程度で、実験的に実施し、2010年にはカバー率を23%に上げる。今年は「第12次五カ年規画」の初年度に当たり、これを40%に拡大し、新中国成立前の根拠地だった旧解放区、少数民族地区、国境隣接地区、貧困地区に傾斜配分する。2020年には中国全土をカバーする方針だ。

福建省福州市の人民広場で太極拳の朝練に励む(写真・劉世昭)

 現在、60歳以上の農村に居住する高齢者は既に一億人を超えている。現在実施している毎月一人当たり55元の最低基準の養老金で計算しても、2020年に完全実施すると国庫の財政負担は毎年700億元に上ると推計されている。

 

人民中国インターネット版 2011年3月10日

 

 

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