冬は暖かく快適な南方で過ごし、夏は涼しく心地よい北方の避暑地で暮らす。
短い時は15日、長い時には2、3カ月から半年滞在することも……。
生活水準の向上にともなって、老年時代の過ごし方、考え方も大きく変わってきた。
その1つの「渡り鳥方式」が静かなブームを呼んでいる。
10月から海南島で快適に
「海南島の空気は本当にきれいですよ。長患いの咽頭炎も完治しました」—海南島生活の話になると、77歳の楊静琴さんの言葉はよどみなくほとばしり出る。楊おばあさんは退職するまで北京の病院で働いていた。孫の面倒を見るために、81歳の夫とともにずっと北京で暮らしてきた。2006年、孫が中学を卒業し、世話をしなくてもよくなったので、二人は海南島に旅行に出掛けた。空気は新鮮で潤いがあり過ごしやすかったので、二カ月も滞在。その後何回もやってくることを考えて、ここに家を買う考えが浮かんだ。いろいろ調べた結果、海口に13万元で50平方メートルの家を購入した。さらに思いも寄らないことに、現在、住宅価格はすでに二倍になっている。「シルバーエージも投資も安心ですよ」
2007年から楊さんは夫と二人で毎年10月末に海口にやってきて、翌年の4、5月まで約半年間滞在して北京に戻る。海口では生活の利便性と快適さを考えて、静かなガーデン式の分譲住宅を購入した。歩いて十数分のところに、三軒の病院と大型スーパーがあり、ぶらぶらするのにぴったりの公園も近い。またここでは70歳以上の人は一年以上住んでいれば、公園もバスも無料だ。
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「長寿の郷」として有名な広西チワン族自治区の巴馬県。各地から多くのリタイア組がやってきて毎年数カ月滞在 |
楊さん夫妻は毎日、バスで図書館に通い、本や新聞を読み、公園を散策し、スーパーへ行っておかずを買うという生活に大いに満足している。精神的なストレスもなく快適そのものだ。彼らにとって一番嬉しかったのは、楊さんの慢性咽頭炎が治り、冠状動脈心臓病の夫も薬を飲まなくてよい状態に改善したことだ。
海口生活の合間に二人は海南島各地を旅行し、北京の老年大学で覚えた撮影知識を生かして写真をたくさん撮っている。
冬の北京は最低気温がマイナス十数度にもなるが、海口では気温は下がっても12、3度にしかならず、老後の健康には最適だ。二人の「渡り鳥生活」は元の同僚たちの憧れの的になり、同じ病院で働いていた五人の同僚たちが次々にやって来て、楊さんと同じ分譲住宅を買った。今では、みんなで集まって、おしゃべりをしたり、散歩をしたり、まるで異郷にいる感じがしない。居心地がいいので、春節も北京に戻らず、ここで年を越す。「お互いにギョーザをプレゼントし合って、これほど楽しいことはありませんよ」。楊さんによると、この分譲住宅に住んでいる北京出身者は十数戸だけ。「北京のほかに、東北、新疆、内蒙古、甘粛から来た人たちが、海口、瓊海、三亜などに家を買い、中には一家全員で移ってきた人もいますよ」
海外のホームと提携交流も
誰でもが楊さんのように経済力があって快適な場所に家を買ったり、ホテル住まいができるわけではない。そこで一部のホームや高齢者向けアパートが「渡り鳥方式」のモデルを模索し始めている。
遼寧省に住む65歳の張小華さんは毎年冬になると、持病のリウマチが悪化して出歩くのが辛くなる。ここ数年、家計がよくなってきたので、南方で冬を過ごしたいと思っている。最初は広州の親戚の家に行こうかと考えたが、広州に短期の旅行客向けの老人アパートがあることを知り、直接、広州友好老年アパートに出向いてみた。「天気は暑からず、寒からず。二カ月暮らしましたが、鼻かぜも引きませんでしたよ」
広州、海南島以外でも、上海、北京、天津、河北などの養老施設が「渡り鳥方式」のモデルを探している。こうした高齢者向けアパート生活では、専門的な介護を受けられ、費用も旅行や賃貸アパートに比べて安いし、一時的に多額のコストをかけて家を買う必要もない。さらに重要なのは、高齢者が共同生活を送ることによって、寂しさを紛らすことができ、生活をエンジョイすることができることだ。
ある調査によると、上海の高齢者の10%が「渡り鳥方式」を望んでいる。しかし、経済的な条件があり、実現している人はわずか1%に過ぎない。「渡り鳥式ホーム」の出現は、こうした人たちの願いをかなえてくれる。
昨年10月、上海祥福頤養院が開業した。ここは庭園式の環境に加えて、耳目を集めたのは外国の養老施設と提携して、相互協力を行うプラットホームを立ち上げたことだ。中国内外の高齢者がいろいろな季節に、現役時代の休暇をとるような感じで、異郷の老後を体験し、別のホームでまったく新しい方式やサービスを体験できる。
沈潔院長は「海外のホームとの連携によって、ここに入居している人々を海外のホームに送り出し、休暇を過ごしてもらい、また海外のお年寄りにここの生活を体験してもらっています。いま日本のホームとも連携を深めようとしていますが、国内のホームのネットワークを作り、『転地養老』のチャネルを開拓していきたいと思います。そうすることによって、高齢者は各地の風土と人情に触れることができ、各地のシルバーエージ理念を知ることができます」と語っていた。
人民中国インターネット版 2011年3月11日
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