北京で起きた福島原発放射能漏れの恐怖から

 

北京など中国の都市では買占めがあり、塩が一時的に売り切れとなっていた。写真は「塩が入荷しました」と伝える北京市内のスーパーの掲示板。

 八年間も生活した福島が世界の関心を集めているが、原発の放射能漏れの恐怖が北京も襲うとは、とても想像できなかった。3月17日、北京など中国の都市では買占めがあり、スーパーの塩が売り切れとなっていた。

「いまはたいへん苦しんでいる。中国にいる両親に電話をすると、日本は危険だ、すぐ戻って来いとばかり言われる。知っている情報が私より多いようだ。何回か言われるうちに、自分も不安になってしまった」。福島原発の放射能漏れの問題について、東京で生活している中国人の友人が、こう悩みを打ち明ける。

だが、原発と60キロしか離れていない福島市在住の元大学教授は落ち着いている。「ガソリンがない、商店も閉店、原発の心配もまだ残っているが、安定に向かっている。外で騒いでいるほどではない」。同じ事件に対して、福島、東京、北京で感じる恐怖感が違う。原因はそれぞれ置かれている「情報空間」にあるようだ。

メディアの情報、人とのコミュニケーションで受け取った情報、現場で見た情報など、それぞれが主に得た情報によって「情報空間」が構築されている。事件の現場に近ければ近いほど、「情報空間」の情報は事件の全体像に近い。今度の被災地とかなり離れている中国では、メディアから情報を得るしかない。だが、メディアの災害報道が被害状況を中心とするため、事件発生地に関する知識が不足しており、客観的に全体像を把握するのが難しい。そのとき、ネットを通じてデマが飛び交い、恐怖感があおられる。

このような、事実に基づかない、拡大された恐怖感の発生は初めてのことではない。中国だけで発生するものでもない。中国で反日デモが発生した時、ギョーザ事件の時、ラサ3.14事件やウルムチ7.5事件の時も日本または世界では似たよう恐怖感が起きている。メディアの受け手としては、情報を受け取ると同時に、自身が置かれている「情報空間」も考え、全面的・客観的に情報を把握するしかない。(文・写真=王 征)

 

人民中国インターネット版 2011年3月22日

 

 
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