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姚力軍さんは、日本の広島大学で工学博士号を取得後、「世界トップ500」にランクされるハネウェル社が開設した電子材料部門の日本製造基地で最高経営責任者(CEO)を務めていた。2005年、海外で博士号を取得した中国人研究者や日本籍・米国籍の専門家ら数名を率いて帰国し、浙江省の寧波市で寧波江豊電子材料有限公司を創立した。
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「千人計画」で招聘された王飛波博士(右側)と科学技術協力で合意に達し握手する宜昌国家ハイテク開発区の代表。湖北省宜昌市の国家ハイテク開発区では1億元の資金を投じて、世界中から優秀なハイテク人材を招いている(新華社) | 姚さんはこれまで超高純度金属材料の研究に携わってきたが、2009年に「千人計画」の対象者に選ばれ、国家が招聘する特別任用専門家となった。その後、姚さんは研究経費をはじめ各方面で多くの支援を得たうえで、国家レベルの重要な科学研究と産業化計画を数多く主宰した。現在、姚さんの研究開発は国家の科学技術および産業イノベーション体系に組み入れられ、姚さんの会社は中国電子材料産業界のリーディング企業になっている。
科学技術開発と国家建設に新たな活力を注ぎ込む「千人計画」とは、どのようなものなのだろう。
「千人計画」は「海外ハイレベル人材招聘計画」の略称で、中国共産党中央組織部(中国共産党中央委員会の指導のもとで、組織と幹部人事関係の仕事を主管する機関。以下、中組部と略す)が実施している。国家発展戦略目標を踏まえ、2008年から5年ないし10年をかけて、中央政府が直轄する大型国有企業ならびに国有商業・金融機関のために、コア技術の課題を解決し、ハイテク産業の発展と新興学術分野での成長をリードできる有能な科学者およびリーダー的人材を海外から中国国内に招聘して、大いにイノベーションと起業を行ってもらうという計画だ。
2010年末までに、「千人計画」では5回に分けて1143人を招聘した。イノベーション関連の人材が880人で、総人数の77%を占める。その中には外国の国家アカデミーや工学アカデミーの会員が10人いる。起業人材は263人で、総人数の23%を占める。IT技術、新エネルギー、新材料などの分野で研究・開発を行い、中国の新興産業の新戦力となっている。また「千人計画」の重要な一環として、全国に海外ハイレベル人材のための創業基地が六十七カ所建設された。
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新しい時代の幕開け |
「千人計画」の実施について、中組部の関係責任者は、「留学経験者を中心とする海外の人材は、わが国のハイレベル人材の隊伍の重要なソースで、社会主義近代化建設の中で積極的な役割を果たしています」と、この計画の発想と意義を紹介する。
新中国成立後、銭学森、李四光らの科学者をはじめとする海外留学人材が次々と祖国に戻り、新中国の工業、科学研究、教育および国防建設事業のために卓越した功績を打ち立てた。現在、国家重点計画の科学技術部門のリーダーのうち、72%が「海帰」(海外から帰国した人材)で、また中国科学院院士(アカデミー会員)の81%、中国工程院院士の54%が「海帰」だ。全国各地にある60ヵ所以上の留学人材起業パークでは、留学経験者が設立した企業が5千以上にも上り、年生産額は100億元を上回っている。
同責任者はさらに次のように語る。「世界の主要先進国や新興国では、本国の人材隊伍を強化・拡大するために、海外から積極的に人材を導入する措置を講じるのが一般的なやり方です。これは比較的短い期間に技術的難関を突破して科学研究の水準を引き上げるための貴重な経験でもあるのです」
中国では「改革開放」が実施されて以来、海外へ留学する人数は絶えず増加している。統計によれば、世界の主要先進国に留学した後、現地で就職した中国人は20万人以上に上り、そのうち45歳未満で、大学の助手かそれに相当するポスト以上の職務に就く者は約6万7千人いる。また世界でよく知られる大手企業や一流大学、著名な科学研究機構に就職し准教授あるいはそれに相当するポスト以上の職務に就くハイレベル留学経験者が約1万5千人いる。これらの留学経験者は長期間海外で働き、生活しているが、その多くが祖国のことを忘れず、帰国して祖国のために働きたいとの願いを持っているのも事実だ。
「改革開放」の目覚ましい進展と各分野での諸事業の著しい発展は、優秀な人材に自分の才能を発揮できるかつてない空間と舞台を提供した。海外からハイレベルの人材を多く導入する絶好の機会が到来したのだ。そこで党中央は、海外から多くのハイレベル人材を招聘して国内で創意・創業してもらうため、資源を統一的に割り振り、政策を整備し、仕組みを健全化して、海外のハイレベル人材を導入する計画を組織・実施するプランを提起したのだ。
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重任を負う人材群 |
施一公さんは清華大学・生命科学学院院長で、医学院常務副院長を兼任する。施さんも「千人計画」により国家が特別任用した専門家の一人だ。彼は中国の未来の中核的競争力はハイレベルの人材にほかならず、「千人計画」で招聘された人材は歴史的な重任を負うと表明している。
ハーバード大学で開かれたあるシンポジウムの席上、施さんは中国の未来の中核的競争力は何かについて参会者と討論したことがある。ある発言者は資本、法律、政府の政策といった側面から見方を述べたが、施さんは次のような見解を明らかにした。資金も政策も法律も、もちろん欠けてはならないが、中国の未来にとって、科学技術面での中核的競争力となるものは人材だ。人材こそがすべてのカギを握っている。
この施さんの見解に、党中央が「千人計画」を実施して人材を誘致することの重要な意義を見て取ることができよう。
「千人計画」の最初の対象者のグループとして、施さんはその責任の重大さを十分に自覚している。彼は次のように語っている。「一人の専門家、学者として、自分の専攻分野で世界のトップの地位を維持しなければならないのは当然として、ただ自分の研究に専念し、若い後継者を育てるだけでは不十分だ。中国国内の科学研究環境は先進国に比べまだ劣っており、多くの解決しなければならない問題が残されています」
施さんの考えはこうだ。「千人計画」で選ばれた人材には、中国の科学技術政策をより良いものに整え、よりいっそう改善するうえで助力するという歴史的な責任がある。国外の優れたものを学び、中国の国情に合った体制やシステムの中にどしどし導入することが必要だ。一方、「千人計画」の実施過程では、国と社会にも責任と義務がある。誘致した人材に優れた環境を提供することが是非とも必要だ。「千人計画」は一つの改革と言ってもいい。中国の発展の歴史上で人材に関わるたいへん大きな出来事であり、国家の各部門が統一的に協調し、政策を着実に実行して、この政策が全社会の支持を得られるようになることを希望する。
人民中国インターネット版 2011年7月
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