新疆北部を訪ねて
張雪=文 馮進=写真
中国西北部にある新疆ウイグル自治区は、中国の陸地面積の6分の1を占め、8カ国と隣接しており、中国の省・自治区・直轄市の中でも面積が最も大きく、陸地の境界線が最も長く、隣国が最も多い。新疆は多くの民族が集まって居住する地区で、ユーラシア大陸の交通と文明が行き来する通り道で、古代の東西文明で著名な「シルクロード」につながる。
美しい新疆は不思議で、神秘的で、人を引きつける地である。今日もし、あなたが新疆に来ればきっと多彩な民族風情を味わうことができるだろう。最も特色のある少数民族の美食を味わい、独特な歴史文化を体験し、この上なく美しい新疆の特異な自然景観を観賞し、情熱的で客好きな新疆の各民族の人々と歌い踊ることになる。
農牧畜民の新生活
イリカザフ(伊犁哈薩克)自治州は新疆の西部にあり、西はカザフスタン共和国に隣接し、天山、この天然の障壁が南北に抜けるのを阻んでいる。ここには新疆の「塞外江南」(万里の長城外の江南)と呼ばれている美しいイリ川と河谷がある。今ではイリは広々とした草原、群を成す牛と羊、情熱的なカザフ民族がきっと独特な民族風情を体験させてくれるだろう。農牧畜民の生活も静かに変わりつつある。
草原の民の盛大な祭―競馬祭
夏のツァオス(昭蘇)草原、青空の下で草原の野花が満開になり、遠く白雲の下の牛や羊がのんびりと草を食み、微風がそよぎ、草原特有の清新な草の香りが漂う。近くの雪山が陽光を受けて、真っ白に光る。29歳の蒙古族の若者バトゥブレンさんは美しい民族衣装を身にまとい、馬頭琴を持ってテントの外で待っていた。この日、彼はツァオス県の2011年ツァオス草原第2回スーパー馬術耐久力公開競技開幕式に招かれて参加し、蒙古族の伝統楽器馬頭琴を演奏し、蒙古族の踊りを披露する。
新疆イリカザフ自治州ツァオス県には、カザフ族、漢族、ウイグル族、蒙古族など21の民族が住んでいる。ここは優良な天然草原で、彼らは世代にわたって水と草を追う遊牧生活を送ってきた。競馬と草原ナーダム大会は、草原の若者にとって最も盛大な祭である。競馬祭で多くの馬が一斉に駆ける勇壮な場面、競馬、「叼羊」(羊の奪い合い)、「姑娘追」(娘が若い男を追うゲーム)など牧畜民族特有の行事が次々と出てきて味わうことができ、国内外からの観光客も聞きつけてやってくる。
新疆音楽学院ピアノ専攻を卒業したバトゥブレンさんは、ツァオス県文化体育局の職員である。小さい時から大草原で育った彼は、父親が馬頭琴を弾き、兄弟姉妹と母親が一緒に踊った楽しい子ども時代を今でもはっきりと覚えている。草原への懐かしさから、大学卒業後何年かよそで生計を立てていたバトゥブレンさんは、また草原に帰ってきた。
今、県城に戻ってきた彼は、給与は毎月2000元。彼は県城で家を買い、都市での生活が始まった。彼の兄弟のうち4人が大学に合格し、それぞれ別のところで仕事に就いている。両親も年をとって草原からは離れられないが、今は定住生活をしている。この数年国が牧畜民を支える一連の政策を打ち出した。牧畜民のための定住用住宅を建設しただけではなく、彼らのために農村社会養老保険を設立し、15年保険をかければ、60歳後それぞれ毎月養老金を受け取ることができる。
ツァオス馬の産業も草原牧畜民の金のなる木になっている。ここの農牧畜民家庭はほぼ、馬を飼っている。馬の品種改良のため、当地政府はイギリスから純血馬を購入して、ツァオス天馬と交配した。改良後のツァオス馬は性能がよく、競馬や馬術に使うことができ、国内各地に販売し、馬の飼育が当地牧畜民の財源になりつつある。
遊牧と定住 草原に暮らす人々の生活の変遷
広々とした定住用住宅の建設現場で、私たちはコルガス(霍城)県蘭干郷梁三宮村のウイグル族の女性アダラティさんに出会った。今日、彼女は3歳の子どもを連れて工事現場に、自分の家の建設具合を見に来たのだ。計画によれば、今年8月末には彼女の一家はこの新しい家に引っ越すことができる。
9万6600平方㍍のこの地に、建築面積が60、80、100平方㍍と3種の定住用住宅百棟を建設する予定である。それぞれの家には村民が家畜を飼育できるように、1300平方㍍くらいの中庭がある。アダラティさん一家の5人は80平方㍍の住宅を選んだ。住宅の建設コストは約10万元で、アダラティさんは3万元支払えばよく、不足分は政府が補助する。アダラティさんは「元の家は水もなく、交通も不便だった。新しい家は道路に近く、村の出入り口にはバスストップもある。水道水もあり、近くに学校、診療所もあって、生活環境が大いに改善されました」と語った。
新疆の牧畜民は27万2100世帯、122万8200人に達する。そのうち、定住基準を満たす牧畜民は総戸数の37%しかいなく、6割以上の牧畜民はまだ遊牧状態である。ここの牧畜民は主にカザフ族、蒙古族などの少数民族で、遊牧生活はこの世代にとっては先祖代々大草原に生活してきた生活様式である。しかし、遊牧生活は自然環境の影響が大きく、気候の影響や自然災害を受けると、牧畜民たちはきわめて大きい損失をこうむる。医療や教育問題も保障を得にくい。
牧畜民が生活の中でぶつかる困難を解決するために、新疆ウイグル自治区は「定住による牧畜業復興プロジェクト」を2009年に立ち上げた。計画では10年間で、76万牧畜民の水や草に頼る、一年中遊牧する伝統的な生活様式を変えて、定住酪農の実現を目指している。2011年に、新疆の牧畜民の定住用住宅問題を解決するため、中央政府は資金7億1500万元を補助した。住宅建設後、5万戸以上の牧畜民が受益する。
定住地が出来上がる前は、四季の変化に合わせて牧畜民は冬夏2度、放牧地を移さざるを得なかった。定住地ができれば、冬が来る前に牧草を備蓄し、畜舎で飼育することができる。夏は、牛や羊を牧場で放牧する。老人は平穏に暮らすことができ、医療の保障も得ることができ、子どもが学校へ行くのも便利だ。これによって牧畜民族の天に任せた、居所の定まらない生活を根本的に改善することができる。
りんご栽培がもたらした新たな富
タクス(特克斯)県チョラクテリク(喬拉克鉄熱克)鎮のアクテリク(阿克鉄熱克)村に来て、大規模なリンゴ園の中に、緑のリンゴがこずえにたわわに実っているのが見えた。新疆は日照時間が長く、昼夜の温度差が大きいため、昔からいろんな果物を産する。トルファン(吐魯番)のブドウ、ハミ(哈密)のハミウリ、ホータン(和田)の玉棗(ナツメ)は中国全国に名を知られている。
イリ河の河谷に位置するタクス県はリンゴの生長に最も適している。ここのリンゴは大きく甘く、口当たりも良い。リンゴの80%はカザフスタン共和国に輸出されている。全村の2.33平方㌔に近い土地のすべてを果樹で覆いつくすという目的は実現した。主にリンゴ、一部にアンズも植えられている。全村の村民は平均して1人あたり3330平方㍍の果樹園があり、1人当たりの年収も1万元を上回る。
31歳の趙民さんの家には、2万平方㍍の果樹園がある。1995年、彼がまだ中学生だった時に、父親はリンゴを植え始めた。現在、家の果樹園はすべて彼が引き継いでいる。彼の家族5人の1人当たりの年収は2万元に達し、趙民さんも車を買い、毎日、5歳の息子を県の幼稚園に送迎している。
付近のカザフ族の村人もリンゴのビジネスチャンスを見て、続々とリンゴ栽培を始めた。アクテリク村から来る漢族の農業技術者は進んで村人を助け、彼らにリンゴの栽培技術を伝授した。
村のリンゴの評判がますます高くなり、毎年収獲の季節にはたくさんの商人が村にやってきて、リンゴを買い付ける。リンゴの売れ行きを心配する必要はないが、村には商才のある人材がいないため、リンゴは仲買人が買い付けて港に運び外国商人に売られる。村民の収益は大きく割り引かれてしまう。
そこで、村では八卦果実業専業合作社を設立し、全村のリンゴ販売の責任を負うことにした。しかし、国際貿易の経験不足のため、効果は十分とはいえない。父親の世代は子どもが大学に合格し、将来都市で生活することを期待していたが、趙さんは逆に子どもが将来大学を卒業した後、村に帰って、父親の仕事を引き継ぎ、自分の力で村のリンゴを国際市場に進出させるよう期待している。
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