慶応義塾大学の国分良成教授(現代中国政治・外交)はこのほど、1972年の国交正常化で成立した中日関係の基本構造「1972年体制」の3要素が▽二国間から多国間・地域間へ▽指導者の権威から民意の反映へ▽中国との連携による米のソ連封じ込めから中国への「チェック・アンド・バランス(牽制と均衡)」へ--とすでに変化していると指摘。これに伴い、中日関係も道徳的・感情的・儒教的色彩を帯びたものから国際ルールに合致したものへとシフトする必要があるとした。人民日報系の国際情報紙、環球時報が伝えた。
中日関係は本当に変化したのだろうか。今日の中日関係が置かれている国内外の情勢は確かに39年前とは少し異なる。だがこの言い方はあまり厳密ではない。なぜなら中日関係には依然として3つの「不変」が存在する。
(1)両国の平和発展路線を貫く考えや価値観に変化はない。
2008年5月、両国政府は第4の政治文書に署名、▽平和発展が長期的な友好協力の基盤・前提であること▽戦略的互恵関係の発展に不可欠な戦略的相互信頼を真の意味で築くためには、互いの発展路線や理念、価値観を正しく認識する必要があること--を確認した。
(2)中国政府が提唱し、日本政府がそれに応えた有名なスローガン「和すれば共に利し、闘えば共に傷つく」(友好を深めれば双方に利益があり、戦えばともに傷つくことになる)に込められた深い道理に変化はない。
国交正常化以来、両国は「和すれば共に利し」を実行することで大きな利益を獲得してきた。今後もこの状態が永遠に続くことが人々の願いであり、「闘う」のではなく「和する」ことこそ両国国民の大多数の意思であることは明らかだ。今後は震災復興をきっかけに、両国の「和」のさらなる拡大も見込める。今は一つの原発事故でさえ被害がこれほど拡大する時代だ。前世紀に起こったような世界戦争の再現を望む人はいないだろう。
(3)両国が共通の脅威に直面している現実に変化はない。
1972年に国交正常化が実現した背景には、米国と共に「北の脅威」に対処するという意図があった。この共通の脅威は現在、非伝統的な脅威に取って代わられた。東日本大震災とそれに伴う原発事故により、非伝統的な脅威は対岸の火事ではなく、共通の安全保障問題であることが示され、世界各国、特に周辺国は、団結・協力を深め、人類の活動に絡む超大型の災難に共同で立ち向かう必要性を痛感した。 以上3つの「不変」から、両国関係を国家利益の最大化というあからさまな利害関係にするべきではない。両国間には競争や意見の食い違いが確かに存在するが、それでも歴史の教訓を真剣に汲み取り、地球を救うという道徳的見地に立って、国民感情を改善し、東洋文明の伝統的な美徳を共に発揮しなければならない。(筆者 中国社会科学院名誉学部委員 馮昭奎)
「人民網日本語版」 2011年12月22日
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