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プロフィール 周明偉(しゅうめいい) |
1955年江蘇省無錫市生まれ。1984年、復旦大学国際政治学部を卒業。同年から2000年まで、共産主義青年団復旦大学委員会副書記、学長補佐兼学長弁公室主任、外事弁公室主任、上海市外事弁公室副主任、同主任を歴任。2000年、中国共産党中央台湾事務弁公室・国務院台湾事務弁公室副主任。2004年、外文出版発行事業局(外文局)常務副局長。2009年から同局長。現在、第5期中日友好21世紀委員会委員。 | 近ごろ、第五期中日友好21世紀委員会第3回会合が北京と長沙で開催された。中国側委員の一人として出席された周明偉中国外文局長は、第2ステージの会合「グローバルな視点、地域的な視点から展望した中長期的な中日関係」を主宰し、また第3ステージの会合「政治的な安全と信頼」では貴重な提言を披歴した。新しい時代の中日関係についてお考えをお聞きした。(聞き手・徐耀庭)
――現在の中日関係をどのようにお考えでしょうか。
周明偉氏 新たな時期を迎え、両国関係を改善、発展させる最も重要な基礎は、政治的な相互信頼を増強し、国民感情を増進することであり、それを両国国内の発展と国際的な環境の変化に据えて考慮することが不可欠だと思います。
国内の変化という点では、両国とも転換期にさしかかっています。中国は過去30年にわたる急速な経済成長、大きな社会変化を経て、アジアの変化の主役になっています。国内総生産(GDP)は2000年では世界第6位でしたが、今では第2位に躍進し、10年で大きな成長を実現しました。同時に、改革を推進する上で一番やっかいな問題に取り組む時期、また社会的な矛盾が突出する時期に入り、多元的、多様で変化に富む特徴が現れています。加えて、豪雨、地震、土石流などの異常気象による災害が頻発し、経済発展の過程に見られる不均衡、不調和、持続不可能などの問題が浮き彫りになりました。日本も転換期にあります。10年続いている低成長、人口高齢化、政治指導者の頻繁な交代などの問題の他に、経済大国日本は政治大国の地位を目指すべきだという声が差し迫って聞こえてきます。また、日本も過去20年間、頻繁に起きた地震、津波などの自然災害の影響を受けてきました。
国際的な環境から展望すると、世界の政治経済には大きな変化が起きました。世界が多極化し、経済のグローバル化は一段と進展し、特にインターネットと移動通信機器を代表とする通信技術の発展は、第2次世界大戦後の国際関係の秩序に衝撃を与えました。「9・11」事件と世界金融危機を代表とする世界的な危機は米国に大きな変化をもたらしただけでなく、世界的にも非常に大きな影響を及ぼし、さまざまな伝統的な、あるいは非伝統的な安全に対する脅威と地球規模の挑戦がないまぜになり、一部の突発的な事件がきっかけになり、国際関係と世界の発展方向を変えつつあります。
こうした状況を踏まえて、中日両国関係が直面する問題を研究することは非常に重要です。
――お話のような分析を前提として、中日双方はどのように先方を見るべきでしょうか。
周 現在、中日関係は発展の重要な時期にあり、大きく変化しています。どれほど迅速に新時期にふさわしい安定的な政治的戦略関係を構築できるかが、双方が現実的な利益と長期的な発展を追求する過程で、直面する極めて重要で緊迫した課題です。この課題の核心はいかに客観的、冷静、健全に先方の発展を見守るかということです。
世界がどれほど変化しても、それぞれが望もうと望むまいと、両国の地理的な位置は変えようがありません。また、同じくアジアの大国として、両国はアジアの、そして世界の平和、発展、安全に対して影響力と責任を果たさなければならないことも変えようがありません。さらに、地域問題と経済発展において相互依存関係にあるということも変えようがありません。現在、中国と日本はアジアでふたつの経済大国であり、両国の総合的な国力は上昇途上にあります。こうしたアジアの「二強」の立場にある両国は、どのように先方に対してより適切に対応し、また正確に認知するかという問題に直面しています。もし先方を自国にとって脅威となる相手とみなし、または他の勢力と連合して、先方をけん制・抑制しようとすると、互いの不信感が高まり、抱えている問題がより深刻になり、はなはだしい場合には矛盾・衝突が起き、両国関係や地域の安全と安定に危険を及ぼすだけでなく、自らの発展にとっても脅威となるに違いありません。一方、先方の変化や発展を理性的に見て、互いに競争、協調する相手とみなすならば、新たな形の両国関係の枠組みを構築することができ、自国のためにも、アジア太平洋地区と世界の平和、安定、発展にも貢献できるでしょう。
先方の経済社会の発展プロセスを正確に見て、両国関係を客観的に認識し、構築することは、両国の政治的な相互信頼と相互尊重を促進することにつながります。正確な認識は相互尊重に導き、相互に尊重してこそ相互信頼が生まれ、これが両国関係の安定的発展にとって、重要な前提となります。
――それでは、中日双方は概念的にどこを変える必要があるのでしょうか。
周 中日両国の数千年に及ぶ交流の歴史で、取り分け、過去40年の両国関係の発展の歴程で、われわれは多くの固定した概念と定義を形成し、例えば、何が友好か、何が協調か、何が衝突か、何が矛盾か、何が敵対か、などです。新たな情勢のもとでは、ある種の概念はすでに両国関係の発展した現状にそぐわず、ふさわしくなくなっていますから、転換する必要に迫られています。そのためには、両国政府、民衆、社会の概念をさらに両国関係の発展に有利な方向に、基本的な共同利益を拡大する方向に、力を入れて導く必要があります。さらに、両国関係の発展を制約し、両国人民の相互理解、友好に損害を与える時代遅れの概念を打破しなければなりません。不利な世論を有利な要素に改善し、「迷惑なこと」を両国関係の改善や友好協力の動力に変えなければならないと思います。
――中日両国社会のエリート、言論界のリーダー、メディアは両国関係でどのような役割を果たすべきでしょうか。
周 それらの人々とメディアは両国政府と社会、民衆が両国関係を理性的に思考し、正しく認識するよう導くという重責を背負っている思います。
両国関係が安定的に発展するかどうかは、われわれが直面している問題と迷惑なことを理性的に見ることができるかどうかにかかっています。
一つは、両国関係に発生する突発事件と摩擦を正しく処理しなければならないということです。両国関係と世界的な関心を大局として、平和的発展に有利なように多大な努力を払うべきであり、一時的な迷惑で未来を犠牲にしてはならないし、局部的な問題で両国関係の全面的な発展に影響を与えてはならないと思います。特にしばしば激発される民族主義的な感情を警戒しなければなりません。中日友好の基礎にある厚みは、相違の中で困難を克服し、不釣り合いを調整し、交流の中で相互認知、相互理解、相互尊重を深め、不断に中日友好の基盤を増強するところにあります。
もう一つは両国の国民感情を正確に見ることです。特に数多くの世論調査を理性的に見ることだと思います。世論調査はもとより重要ですが、世論調査の結果に安易に左右されてはいけません。世論調査は適切な誘導を通じて積極的な作用を発揮することもありますが、その逆もあり得ます。例えば、現在、70%の日本人、50%の中国人が先方に対して懐疑的で、非友好的な感情を抱いているという調査結果がありますが、積極的な角度からとらえると、中日関係を改善し、友好発展を推進する動力になり得ます。しかし、安易に消極的な角度から宣伝すると、そのことが先方を好きではない人たちの好きではない理由をさらに固定化することになり、さらに少数の先方を好きだという人々を動揺させかねません。
――中日両国間の相互認知と政治的相互信頼をどのように推進すべきだとお考えでしょうか
周 一番目に、両国の政界要人、政党が大所高所から鳥瞰し、政治的な相互信頼を推進する過程で果たすべき役割の重要性を重視しなければなりません。
今年、日本の首相が中国を訪問し、来年、中国の指導者が日本を訪問する期間に、双方は良好な雰囲気を作るために精魂を傾け、双方の指導者の相互訪問を成功させるよう努力しなければなりません。同時に、両国はもっと多くの交流プロジェクトを開拓し、条件を整え、指導的な政治家が先方の国のより多くの民衆、特に若い人たちと接触する機会を増やすことによって、双方が中日友好の正しい方向をより多く認識することができ、両国の政治的な相互信頼の増強に貢献できるでしょう。
2番目に、青少年の交流をより重視しなければなりません。現在、両国の青年交流はすでにそれなりの規模に達していますが、新世代の青年たちの両国関係発展に対する積極的な活動、影響力はまだ大きいとは言えず、いまだに多くの挑戦に直面しています。そこで、両国の青少年交流の強化に重点を置き、「知中派」と「知日派」、「融和派」と「協力派」の育成にもっと関心を払わなければなりません。
3番目に、メディア間の交流を重視しなければなりません。両国のメディア・言論界のリーダーは中日関係の健全な発展を促し、両国民の間の不信感を増幅させる要素を解消し、両国民が両国関係の発展につながる優秀な文化を評価、発揚するように、客観的かつ理性的に両国関係における問題をとらえ、メディアの積極的な役割を果たさなければなりません。
人民中国インターネット版 2012年1月4日
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