浙江 中国のアニメ産業を牽引する

 

中国アニメの話となると、「アニメの都」である杭州がすぐ脳裏に浮かぶだろう。毎年4月から5月にかけて行われる中国国際アニメフェスティバルはいつも大きな盛り上がりを見せる。アニメフェスティバルの影響で、浙江省のアニメ産業は急速な成長を遂げた。2011年、中国が制作したテレビアニメは435作で、総計26万1224分間だった。浙江省のアニメ制作量は4万7545分間で、各省を抑えて初めて中国のトップとなった。

杭州 アニメの都に

「楽比悠悠」をイメージしたデジタルペン、「爆爆虎」のトランスフォーマー、「天眼」のマークが入った子ども靴、文房具、服など、中南カートゥーン社の関連商品の展示ホールに入ると、さまざまなキャラクターグッズが勢ぞろいし、まるで童話の世界に入ったかのようだ。

しかし、何年か前までは、アニメというと、ほとんどの人は米国の『トランスフォーマー』や日本の『ちびまる子ちゃん』などしか思い出せず、アニメを「中国制作」と結びつけようとする人は少なかった。

中南カートゥーン社が開発した文房具、服飾、おもちゃ、歌舞劇などのアニメの関連商品

息子が海外アニメに夢中な姿を目にして、中南建設グループの呉建栄会長は大きな刺激を受けた。2003年、彼は思い切ってアニメ業界に進出することを決断した。当時、アニメは「きわめてお金がかかる」業種とみなされており、彼の友人たちも呉氏の決定を理解できなかった。それでも、呉氏の決意は少しも揺るがなかった。「たとえ2億元を損失したとしても、アニメを制作したい」

わずか8年間で、デビュー作の『天眼』から『楽比悠悠』『魔幻仙踪』『中国パンダ』『鄭和の西洋下り』に至るまで、中南カートゥーン社は35作の優れたアニメを制作し、年間制作量は8000分間を超えた。アニメ関連商品を70カ国に輸出し、海外での売り上げは300万㌦に近い。

そのうえ、同社はアニメ制作から事業を拡大し、次第に文房具、服飾、おもちゃ、歌舞劇など関連商品のトータルな開発も推し進めていった。「キャラクターがスクリーンを出て、生活に入り込むようにすることはアニメ産業の必然的な動向です。現在、当社の利益の60%はアニメ関連商品によるものです」と同社の沈玉良社長は語る。

中南カートゥーン社に続いて、杭州辺鋒ネットワーク技術有限公司、渡口ネットワーク公司、太子龍文化伝播公司など多数のアニメ・ゲーム企業が急速に成長してきた。2004年、第1回中国国際アニメフェスティバルの開催前、杭州のアニメ企業は10社にも及ばず、制作量はほぼゼロだった。2010年、杭州で登録されたアニメ企業は207社もあり、従業員は2万人を超え、国家級のアニメ産業基地は2カ所、国家級のアニメ教育基地は3カ所あり、それぞれ国内全体の10分の1と8分の3を占めている。2011年、杭州で制作されたアニメは45作あり、総計3万4606分間で、浙江省全体の70%を上回り、3年連続で中国各都市のトップに輝いた。

「アニメの都」はすでに杭州の輝かしい肩書となっている。

アニメで中国伝統文化を紹介

「中国の子どもたちが見ているのは、ほとんどが外国アニメで、中国の伝統文化になじみがありません。私たちはアニメを通じて、より多くの子どもたちに中国の伝統文化を理解してもらいたいのです」

寧波卡酷アニメ制作有限公司の姚林社長は寧波で生まれ育った寧波人だ。2009年に、アニメ産業に進出したときから、アニメを通して寧波の悠久な歴史や文化、風土や人情をより多くの人々に紹介したいという願望を持っていた。

寧波卡酷アニメ制作有限公司の姚林社長とキャラクターの麦圏と可可

姚さんが制作した最初のアニメは『麦圏可可漫遊記』だ。それは麦圏と可可という二人のキャラクターが寧波で起きた面白い出来事を通じて、天童寺、天封塔、走馬塘など数多くの寧波の観光スポットを紹介している。36話からなるこの作品は一躍人気となり、地元で放送されただけでなく、黒龍江テレビ局など省クラスのテレビ局で放送され、寧波から初めて、省境を越えて放送されたアニメとなった。

その後、卡酷社は勢いに乗って、相次いで『麦圏可可尋宝記』『麦圏可可遠古大冒険』『拯救地球―麦圏可可在行動』『麦圏可可宝島奇遇記』など11の作品を制作し、総計1万3670分間にもなる。そのうち、7000年前の河姆渡文化を題材にした『麦圏可可遠古大冒険』は香港、台湾、タイ、インドなどで大きな反響を呼び起こした。伝統的な演劇の普及を図るために、同社は越劇(浙江省の地方劇)アニメ『孔雀西南飛』を制作し、中央テレビ局の演劇チャンネルでも放送された。

また、幼いときからアニメを見て育った朱俊澎氏も『三字経』『水滸伝』などの中国伝統文化をアニメの題材とした。1983年生まれの朱氏は、寧波莱彼特文化伝媒有限公司の創始者として、アニメ産業に従事し始めて3年目になる。自社の主力作品である『三字経里的故事(三字経物語)』は52の物語を通じて、『三字経』に秘められている深い哲理を分かりやすく解説した。2011年6月1日に放送を開始し、視聴率は業界6位だった。

寧波莱彼特文化伝媒有限公司が制作した『三字経里的故事』(写真提供・寧波莱彼特文化伝媒有限公司)

現在、莱彼特社は3Dアニメ映画『徐福東渡記』や大型2Dアニメ『中華伝統文化物語・祝祭日編』、また『水滸伝』を脚色したコメディーアニメ『水滸・英雄列伝』などの制作に取り組んでいる。

卡酷、莱彼特以外に、水木、天維、宣逸、鋭典などアニメ・ゲーム会社は多数あり、寧波市鄞州区にある国家アニメ・ゲームオリジナル産業基地に集結し、中国アニメ産業に大きな活力を注ぎ込んでいる。(王漢平 張春侠=文 劉世昭=写真)

 

人民中国インターネット版 2012年4月

 

 

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