「上に天国あれば、下に蘇杭あり」。江南地方といえば、詩と画のごとく、その地の景色が人々の脳裏に浮かんでくる――山紫水明、美しくて豊かな地。浙江省は長江下流の南部に位置し、「地上の天国」という美称がある省都・杭州市は、代表的な江南地方の都市だ。唐代の詩人白居易が名作『憶江南』の中で「江南憶、最憶是杭州」(江南の地を回想する時、最も印象的で思い出深いのは、杭州である)と書いた。
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麗水市仙都の天柱峰 |
浙江省には輝かしい歴史と文化がある。絶世の美女として名を馳せた西施の物語、梁山伯と祝英台の伝説、許仙と白娘子の伝説、また活仏済公の伝説は世間に広く伝わっており、その内容は人々の心を揺さぶる。美しい大地は優れた人物を育てるという言い伝えのごとく、浙江省は多くの傑出した人物を輩出してきた。哲学者の王陽明、詩人の謝霊運と陸遊、書道家の王羲之、科学者の沈括、文学者の魯迅らへの影響は非常に大きい。
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杭州市西湖の観光名所「曲院風荷」 |
浙江省は「魚米の郷、絲茶の府」と呼ばれ、豊かな自然の恵みにより数々の名産品を生み出してきた。例えば龍泉青磁、杭州の南宋官窯などをはじめとする陶磁文化、越劇をはじめとする演劇文化、東陽の木彫と青田の石彫などをはじめとする工芸美術、また、浙江の茶文化、杭州のシルク文化、紹興の黄酒文化をはじめとする地域文化が現在にまで伝わっている。
杭州市は中国の七大古都の1つで、その美しい景色は世界に知られている。この地に伝わる「許仙と白蛇」の恋物語は千百年にわたり、広く語り伝えられている。この多くの歴史や伝統文化の巨匠たちの卓越した技能が西湖の景勝地の形成と変化の過程に大きな影響を与えている。2011年、杭州市の西湖文化景観が世界文化遺産リストに登録された。
杭州には、雄大な銭塘江の満ち潮、人類の奇跡と呼ばれる京杭大運河、野趣に富む西渓湿地、「天下一の秀水」として名高い千島湖など、さまざまな水にまつわる美しい景色がある。また、ここはショッピングと美食の楽園だ。杭州のシルクは世界的に有名で、西湖の龍井茶は中国の十大銘茶の中で一番有名だ。そして、杭州料理は旬の素材を選び、その持ち味を大切にしている。調理法は精緻で、味はあっさりしていて、歯ざわりがとてもよい。代表的な料理は「東坡肉」(ブタの角煮)、「西湖酢魚」(淡水魚の甘酢あんかけ)、「龍井蝦仁」(エビの龍井茶炒め)、「油燜春筍」(春たけのこの揚げ蒸し)などがある。そして、ここの伝統的な美味しい「小籠包」は全国で親しまれている。
美女西施の物語の発祥地である紹興市は古い江南水郷の代表的な都市だ。烏篷船(コールタールで黒く塗った苫をかけた小舟)で、フェルトの帽子をかぶり、両足でかいをこぎ、片手に杯を持つ人の姿を見ると、誰もがすぐに紹興のことを思い出す。ここは魯迅の故郷でもあり、町には魯迅の時代を偲ばせる古い江南地方の情緒があふれ、彼の作品の原文を読み解き、彼が描いた風物を吟味しながら、当時の生活情況を体験できる貴重な場所となっている。紹興市にはさらに蘭亭という名勝地がある。後世の人々に「書聖」と呼ばれた王羲之は、ここで『蘭亭集序』を記した。現在、ここは国立森林公園になっている。
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杭州市の淳安県にある千島湖 |
温州市の雁蕩山 |
金華市の黄大仙祖宮 |
浙江省は古くから「詩画の江南、山水の浙江」と呼ばれ、豊かな自然と歴史文化が共に輝きを放っている。風光明媚な西湖、千島湖、太湖、南湖。詩や画のごとく美しい銭塘江、富春江、新安江、楠渓江。荘厳で雄大な雁蕩山、莫乾山、天目山、江郎山。優美で趣のある烏鎮、西塘、南潯などの水郷。2010年、衢州市の江郎山は他の5つのカルスト地形の景勝地とともに「中国の丹霞地形」として世界遺産リストに登録された。
浙江省は宗教文化も非常に栄えている。西湖の畔にある霊隠寺は中国仏教の有名な寺であり、また杭州の中で最も古い寺だ。舟山市の普陀山は中国四大仏教名山の1つで、天台山の国清寺は仏教天台宗の総本山、寧波市の天童寺は1700百年の歴史があり、日本の臨済宗の発祥地だ。また、奉化市の雪竇寺、金華市の黄大仙祖宮なども昔から有名な寺で、世界にその名が知れ渡っている。
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美しい舟山群島 |
浙江省は中国で最も裕福な地域の1つで、各種の専門市場も繁盛している。ここに世界最大級の日用雑貨卸売市場――義烏小商品城があり、さらに杭州のシルク城、紹興の軽工業紡績城、諸暨の真珠城、海寧の皮革城、永康の五金城、嵊州のネクタイ城など40カ所は、中国はもちろん世界でも有名な専門市場だ。この市場の商品は品質もよく、値段も安い。「思い出せない商品以外は何でも買える」と言われており、それは、この市場に行ったことのある観光客だけが味わえる感覚だ。(王漢平 張春侠=文 浙江省旅遊局=写真提供)
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