張春侠=文
長江中下流域にある江西省南昌市は、中部に位置する発展途上都市である。しかし中部地区でも経済規模が中、下層クラスのこの省都は、中国初の『低炭素経済白書』を発行し、世界低炭素・生態経済大会の永久開催地となり、今後5年間で817億元を投資し、超低炭素都市を造り上げようとしている。南昌市は「低炭素」の道をすでに先頭を切って走っていると言える。
進賢県のエコ養殖とエコ栽培
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エコ養殖が軍山湖のモクズガニの質を向上させている(写真提供・進賢県宣伝部) | 秋になり風が涼しくなると、カニが食べ頃となる。カニと言えば、真っ先に思い出すのが有名な江蘇省陽澄湖のモクズガニ(大閘蟹=上海ガニ)だが、江西省進賢県軍山湖でとれる大閘蟹はご存じないだろうか。身が大きくおいしく栄養満点なことで、その名が国内外に知られている。
進賢県は江西省中部、鄱陽湖南岸にあり、省都南昌市の東の門戸とも言える位置にある。「中国モクズガニのふるさと」として知られる江西省進賢県軍山湖は、全国でも県の中にあるものとしては最大の淡水湖で、総面積は約32万ムー(1ムーは667平方メートルに相当)である。ここは工業地域から離れているため、澄んだ水と緑あふれる岸辺を持ち、エサとなる生物も豊富で、江西省農業庁は「無公害水産品産地」に認定しており、モクズガニ養殖の理想的な場所となっている。
しかし、過度の養殖により、かつて軍山湖の生態環境はひどく破壊されていた。湖には水草も生えず、雨が降ると湖水は濁り、カニの品質も大幅に下がった。2010年、南昌市は全国初の低炭素試験省都となり、進賢県軍山湖の低炭素農業とエコツーリズムモデル地区が4大低炭素経済モデル区の一つとなった。
このため、進賢県はモクズガニの養殖をはじめとする特殊水産業の発展に力を注ぎ、エコ養殖を推進し、カニの養殖密度を厳密にコントロールするだけでなく、エサをすべて天然の水草やタニシ、小魚などにした。同時に水草を育てカニを育成する技術を広め、広い面積に水草を植え、小カナダ藻を移植し、カニの品質を保ち、同時に湖の生態環境を維持した。進賢県農業局の胡愷副局長の説明によれば、「以前、軍山湖では稚ガニが3000万匹余りも投入され、ひどい過養殖が行われていました。現在ではモクズガニの養殖基準が発表されており、湖の養殖量を制限しています。昨年に投入された稚ガニは1000万匹で、生態環境が保護されたばかりか、モクズガニの品質も大幅に向上しました」。2011年、全県のモクズガニの養殖面積は約40万ムーで、モクズガニの販売量は180万キロに達し、販売総額は2億7000万元、湖沿いの3500戸の農家の一戸あたりの収入が1万元近く増加した。
現在、軍山湖のモクズガニは国家地理マークによる保護製品と有機食品となっている。2011年、上海で「中国軍山湖杯第10回鄱陽湖カニ祭り」が行われ、同時に上海市は「第5回豊収杯全国モクズガニ大会」を開催して、軍山湖のモクズガニは「カニのクイーン賞」を受けた。さらに、三つの「最も口あたりに優れた賞」の第2位、三つの「最も優れた品質賞」の第1と第3位をとり、専門家の広い称賛を得た。
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前坊鎮の広大な茶園(写真提供・進賢県宣伝部) |
エコ養殖を発展させると同時に、進賢県はエコ栽培にも力を入れ、広大な茶園や果樹園、アブラツバキ園を造り上げている。青嵐果業公司のレジャー農園で、われわれは果汁たっぷりで甘い翠冠ナシを味わった。前坊鎮共産党委員会の涂莉花書記の説明によると、青嵐果業公司は2008年からエコレジャー果物園を始め、浙江省から翠冠ナシ、果肉が赤いザボン、白ビワ、ヤマモモなどの品種を導入し、4年後には1万ムーほどの果樹園、四つの栽培基地、20万株余りの果樹を持つに至っている。青嵐果業を出た後、涂書記はさらにわれわれを、緑の茶畑が赤土の丘陵を埋め尽くす、金峰茶業公司の前坊茶畑に連れて行ってくれた。道を知っている人なしでこの茶畑に来たら、なかなか出口を見つけることはできないだろうと、車の運転手は言う。この茶畑は8000ムーの広さがあり、江西省でも最大の茶畑である。今後2、3年で、青嵐果業と金峰茶業はエコツーリズムのレジャー地となるだろうと涂書記は語る。同時に茶や果樹が、現地農民の産業構造の調整をもたらし、伝統農業から現代的な効率の良い農業へと転換する手助けとなるだろう。
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