日本の政治家、右傾化に警鐘

 

日本衆議院議員総選挙の投票が16日に行われる。日本の最大野党である自民党は政権公約で、「憲法改正により国防軍を設立する」と表明した。自民党の安倍晋三総裁は釣魚島(日本名・尖閣諸島)への公務員常駐を主張している。日本維新の会は、集団的自衛権の行使容認と自衛隊の武器使用基準の見直しなどを主張した。これら一連の動向から、日本の右傾化に対する懸念が引き起こされている。日本の政治家や有識者はこれを受け、相次いで右傾化に警鐘を鳴らす主張を発表している。

▽選挙制度がもたらした左右のアンバランス

朝日新聞は12日、「右傾化への歯止め必要」と題し、河野洋平・元衆院議長へのインタビューを掲載した。河野氏はインタビューの中で、「9月の自民党総裁選と今回の選挙戦において、タカ派の人物の活躍が目立った。日本政治の右傾化の傾向がはっきりと現れている。最近は欧米も日本の右傾化に非常に関心を持っている」、「冷戦が終わり、共産党や社民党など左派の主張の根拠が弱くなり、保守が左派を気にせずに自由に発言する傾向が強まった。民主党政権でも武器輸出三原則を緩和し、集団的自衛権の行使検討を主張する人がいる。民主党と自民党がいずれも右傾化し、先陣争いをしている。民主党は昔と違い、自民党をけん制する機能が働かなくなっている。民族主義をあおるような自民党の言論は懸念される」としたほか、「民主党も日本維新の会も『保守』を掲げ、自民党も絶えず右傾化している。かつては自民党議員の約3割はハト派だった。社会党や公明党を足せば国会全体で約5割がハト派となり、これが日本政治の左右のバランスをとってきた。日本の政治が右傾化したのは小選挙区制度と関係がある。この制度により、3割のハト派議員は小選挙区で自民党候補になりにくくなった」と述べた。河野氏はまた、「このまま右へ右へと行けばリベラル勢力が絶滅しかねない。崖から落ちれば有権者も気づくかもしれないが、その時は引き返せなくなるという危惧があり、右傾化への歯止めが必要だ」とした。

▽隣国を「悪人」とする見方に懸念

元国連事務次長の明石康氏も12日、読売新聞に次のような文章を寄せている。

一部の政党は有権者に迎合するためか、外交や安全保障分野の主張で注目を集めている。多くの日本国民は、外交や安全保障分野で多くの選択肢があることを知らないため、問題を単純化し、理性的に判断できなくなり、観念的・感情的な対応をし、紛争が存在する隣国を「悪人」に仕立て上げている。一部の政党が領土問題などで隣国との対立をあおっていることが懸念される。戦前の日本を含む多くの国が自衛権を乱用した歴史を持つ。このため、日本は集団的自衛権の行使に対し、極めて慎重になる必要がある。尖閣諸島問題で最も懸念される点は、偶発的な衝突により日中が望まない事態が引き起こされ、両国が後に引き返せなくなることだ。両国の危機管理メカニズム構築は待ったなしの状態だ。中国との関係を改善しなければ日本に平和は無く、安定した未来もありえない。両国の政府と民間は、しっかりとした多層的な関係を構築する必要がある。また日本人、特に若者は現代史への理解が浅い。不幸な歴史という事実に対し、日本人は謙虚さを持つべきだ。

毎日新聞の5日の報道によると、元外務省条約局長の東郷和彦氏も日本の政策が右に傾いているとの見方を示している。東京大学名誉教授の坂野潤治氏も「今回の選挙の情勢を見ると、1937年4月の総選挙を思い出す(注:この選挙の後、同年6月に近衛文麿が首相となり、7月に盧溝橋事件が勃発、全面的な中国侵略戦争が始まった)」と語っている。また共同通信社は「かつて中国侵略戦争を経験した有権者も、日本が戦争の道を再び歩むのではないかと心配している」と報じた。

▽護憲に力を入れる政党も

自民党や日本維新の会は、憲法改正などタカ派的な発想が濃厚な主張を掲げて有権者の注目を集めているが、一方で日本共産党や社民党などの老舗政党は護憲、右傾化阻止の声を強めている。日本共産党は選挙公約の中で、「憲法9条(戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認)を断固として守り抜く国民多数派をつくろう」と呼びかけ、社民党も「自民党は右傾化。維新は自民党以上」と指摘した。

社民党・平和市民委員会事務局長の藤田高景氏は取材に答え、「現在、日本の保守勢力と極右勢力が再編されつつあるのは事実だ。これらの勢力は平和憲法を改正しようとたくらんでいるが、多くの日本国民は憲法9条の改正に反対している」とした。

衆議院選挙後、自民党と連立政権を組むと見られる公明党の山口那津男代表は10日、「もし自民党が憲法改正や、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使の容認を強行すれば連立を離脱する可能性がある」と語った。日本のメディアはこの発言が安倍氏の言行に対するけん制であると分析している。山口氏は「現行憲法の柱を断固として守ることが重要だ。憲法で規定された範疇を超えないために、公明党は原則を守るという役割を担っていきたい。(自民党が)どうしてもはみ出したいと言うならば、限界が来るかもしれない」とした。

 

「人民網日本語版」2012年12月14日

 

 

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850