中日は利益と友好のバランスを立て直すべき

 

野田佳彦内閣は今年、内政も外交も行き詰まり、総選挙で惨敗した。民主党は政権獲得からわずか3年余りで下野し、中日関係の改善という難題を間もなく発足する安倍晋三内閣に残すことになる。(文:劉江永・本紙特約論説員、清華大学現代国際関係研究院副院長。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)

安倍氏は首相就任後の来年、中日関係改善のチャンスを手中にする。安倍氏は前回首相在任時の2006年に中日関係の「氷を砕く旅」を実現した。かつて両国関係の立て直しに貢献したし、就任後両国関係の改善に尽力する考えも表明している。中日関係の悪化を引き起こした日本政府の「島購入」事件は野田内閣が行ったものだし、自民党は衆議院で安定多数を獲得したため、国内右翼勢力の圧力を気にかける必要がない。安倍新内閣には発足後調整を少し行う機会があり、摩擦をエスカレートさせる必要はない。日本の無数の国民、特に経済界は両国関係の改善を望んでおり、両国関係が悪化し続けて両国の付き合いに影響が生じることは望んでいない。

中日平和友好条約締結から来年で35周年になる。中日双方はこのタイミングを捉えて条約の精神を学び直し、確認して、両国関係発展の大きな方向性を把握することができる。来年は中日韓の新たな指導者が自国の政治、経済、社会発展プロセスを始動する「元年」だ。いかにして良いスタートを切るかが、今後長期間の東アジア地域の平和・安定・繁栄の大局に関わってくる。中日韓の民衆はみな、新指導者が就任後まず互いに善意を示し、北東アジアにポジティブなエネルギーを注入することを期待している。

だが中日関係には憂慮される一面もある。野田政権時、釣魚島(日本名・尖閣諸島)係争のために引き起こされた中日間の民族的感情対立と安全保障上の隠れた危険の激化だ。安倍氏の選挙時の政策綱領における釣魚島への公務員常駐などの強硬姿勢は、右翼の代表的人物である石原慎太郎氏の考えと何ら違いはなく、ひとたび新政府の行動となれば、一段と深刻な結果をもたらす。

靖国神社など歴史問題での安倍氏の姿勢にも隣国は安心できない。その対中政策が中日関係の政治・経済の両輪を順調に前進させられるか否かは、個人的要因のみで決まるものではなく、日本の国内政治の右傾化が引き続き中日関係に衝撃を与えるか否かも見なければならない。安倍内閣は来年7月の参議院選挙の結果に基づき、憲法第9条の改正を突破口に日本国憲法改正を推し進める可能性が高い。つまり衆参両院3分の2以上の賛成という憲法改正発議要件を過半数に改め、将来の憲法第9条改正に道を開くのだ。これは日本が平和的発展の道を堅持するかどうかという戦略的問題に関係する。日本国憲法第9条は日本は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と定めている。

安倍氏の対中戦略構想は「中国を21世紀の日本の外交と安全保障上の最大の課題とし、日米同盟の強化を通じて、また中国周辺の地政学的摩擦の中から中国を念頭に置いた協力パートナーを探し求める」というものだ。安倍氏は中日戦略的互恵関係は利益優先であり、友好は手段に過ぎないと強調している。言外の意味は、日本は自国の利益のためには友好は重視せず、非譲歩、非妥協、非友好的な姿勢をとることができるということだ。これは友好と利益を対置する狭隘な観念であり、新時代の外交の真髄に対する真の理解を欠いているようであるし、対立を互恵に転化することも困難だ。

実は中日両国が戦争状態を終結し、平和友好を実現したこと自体が中日間の最も根本的な共通利益だ。さもなくば「中日平和友好条約」締結はあり得なかった。現在、中日友好の基礎は一部の利益の対立によって妨害されている。中日両国が利益と友好のバランスを立て直すことができなければ、戦略的互恵関係は魂を失うし、一部の利益の衝突のために戦略的対抗関係に転化しさえする。

以上述べたことをまとめれば、安倍新首相が手中の機会をしっかりと把握し、利用できるか否かには、まだ多くの可変的要素があり、刮目して待つ必要がある。

 

「人民網日本語版」2012年12月21日

 

 

 

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