文=新華社 呉学蘭
2月22日から24日にかけて、日本の安倍晋三首相が訪米した。これに先立って、安倍首相は『ワシントンポスト』に対して、釣魚島をめぐる紛争は中国側の意図によって作り出されたものだなどとぶちまけた。これは、安倍首相の釣魚島問題でより多く米国からの支持を得たいという野心を露呈するものだ。また、彼が日米同盟を強化し、それをもってアジアに覇をとなえるという夢想を持つことも暴露している。しかし、このたびの首脳会談期間中の米国側の反応は、日本が期待していた熱烈なものとはかけ離れており、「冷や水を浴びせられた」という辛らつな論評もあった。
もはやかつてと違う日米同盟
安倍氏の米国に対する親近感は、再度の首相就任後露骨に見られる。就任後の記者会見上、安倍氏は自民党新政権の「米国重視外交」を強調し、日本外交を安定・強化させるには、まず米国との同盟の絆を強めることが必要だとストレートに話した。彼のブレーンのひとり、内閣官房参与の谷内正太郎氏は、日米同盟は日本の国際的地位と外交を固める「脊椎」であると主張する文章を発表している。
今回、オバマ大統領との会談終了後、安倍首相はメディアに対して「双方は日米同盟を強化することで完全に同意した。ここに日米間の強い絆が完全に復活したと宣言したい”と述べた。しかし、日米同盟の問題に関して、米国側は本当に日本と「完全に同意」というレベルだとは言えない。確かに、オバマ大統領は記者たちに対して、日米同盟はアジア太平洋地域における基礎であると述べたが、さらに進んで具体的に述べたり評論を行ったわけではない。むしろ、話題を変え「日米について言えば、目下の最重要分野は経済だ」と話した。双方の表現における重点には明らかな差があった。
少しの変化に、安倍首相は心の準備をしておくべきだったろう。それは現在の日米同盟の背景には冷戦時期とは大きな違いがあるということだ。当時、米国とソ連はお互いに敵対し、双方の経済圏の線引きさえはっきりしていた。米国は日本を丸め込んで見方にし、双方の同盟関係はこのために安定していた。しかし現在では、中国と米国の経済依存度は高く、中国は米国の最大の債権国で、中米関係には摩擦もあるが協力が主流となっている。もし中日間の問題のために、最後に自分の身に火の粉が降りかかるなら、それは米国にとって引き合わないというのものだ。
日本の『毎日新聞』は見識のある視点を見せている。それによると、かつて日米関係はかなりの割合で日本の対中政策を決定していた。しかし今日ではちょうど逆に、それぞれがいかに中国に対応するかが、かなりの割合で日米関係を決定しているというのだ。
日本のメディアはまだこうした知恵を持っている。米国は当然、すでに“時代遅れ”の日米同盟をひたすら強調して、中国の感情を傷つけるようなことはすまい。
釣魚島問題で立場表明を拒否した米国
釣魚島問題について米国の高官が、これは日米安保条約の範ちゅうに含まれると発言したことがあるにしろ、いったん問題がエスカレートしたら、米国は日本にどのような支持を与えるのだろうか? 安倍首相は今回の訪米でこの点について確約を取ろうとしていたが、米国側はやはり彼に「精神安定剤」をくれはしなかった。
両国首脳会談中、オバマ大統領はまったく釣魚島問題に触れなかった。ケリー国務長官は日本の岸田文雄外務大臣と別の会談を行いこの問題を検討したが、ケリー長官の態度は、日本のこの問題での自制的態度を賞賛するものだった。この話を正しく読み解くと、ホワイトハウスが中日関係が緩和すること、特に日本が冷静な頭を保つことを希望してい.ることが分かる。これは、安倍首相訪米前に、米国最大部数を誇る新聞『ウォールストリート・ジャーナル』が、日本は最初の1発を撃たないよう希望すると呼び掛けたことを思い出させる。『ウォールストリート・ジャーナル』はホワイトハウスとの関係が密接であり、このような表現が無根拠に出てくるはずはない。
米国メディアが控えめな論調で釣魚島問題を処理していることからは、米国社会をリードする層が安倍氏の“島への野心”に対して、それほど熱心でないことが見て取れる。まず、米国側が両国首脳会談終了後に恒例として行われる共同記者会見の開催を見送り、数人の記者の簡単な質問に答えただけだった。そして、その際米国メディアがオバマ大統領に行った質問は日本に関するものではなく、政府支出の強制削減に関するものだった。傍らに立っている安倍首相はさぞかしばつが悪かったろう。
安倍首相はその後、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)で講演を行った。その表現は強硬なものだったが、米国メディアの大きな関心を引くことはできなかった。彼は講演の中で、島の領土主権に対するいかなる挑戦も容認することはできない、と言い放った。
安倍首相の「精神安定剤」を求める考え方を、米国はすっかり見通していたが、もしこの「精神安定剤」が米国の手中にあるなら、ひとつには中国の怒りを買わず、ふたつには引き続き日本をコントロールし、日本を米国の「アジア太平洋回帰」戦略の先兵にすることができるだろう。こんな大きな利のあることを、米国はなぜ喜んでしないことがあろうか。
TPP、普天間に簡単に応じられない安倍首相
今回の日米首脳会談には、日本には日本のもくろみがあり、米国には米国の計算があった。米国が期待するもののひとつは、日本が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の加盟交渉に同意することだった。世界第3位の経済体である日本のTPP加盟は、米国経済回復にとって重要なポイントとなるからだ。さらに、TPP自体も米国が中・日・韓自由貿易協定(FTA)をけん制する上で重要な道具になるものだ。再選を果たしたオバマ大統領は、一般教書演説の中でもTPP交渉を成功させると主張しており、極めて重視していることが分かる。
しかし、日本国内の政界や経済界にはTPP加盟に関して異なった意見がある。自動車を代表とする日本の製造業界は、TPP加盟は海外市場拡大に有利で、輸出を増加するものと考えている。一方、高い関税で保護されている農業関係者は、いったん市場が開放されれば、壊滅的な打撃を受けると考えている。今年7月に予定されている参議院選挙の審判を受けなければならない安倍首相にとって、農業関係の票は極めて重要なものだ。彼は農協の意見を考慮せざるを得ない。自民党の基盤は農民だからだ。このため、今回安倍首相がTPP交渉の席に着くかもしれないと表明したとしても、彼は現場でイエスとは言わなかったし、米国から“関税の聖域”について保証を得られることが前提だ。ここから、日米はTPPをめぐる議論にも同様に温度差を持っていることが見て取れる。
ほかにも、長年日米関係に横たわる難題がある。それは普天間基地移転問題だ。日本の歴代総理大臣はいずれもこの問題を大きく進展させることができていない。沖縄の地元住民の強烈な反対や、鳩山由紀夫元首相の「悲壮な結末」は、安倍首相に簡単にこれを請け負わないよう戒めている。このため、2月4日、ジョン・ルース駐日米国大使が菅義偉官房長官との会談の中で、普天間基地移転問題の進展を求めたが、今回の首脳会談では、この問題についてなんら目立ったコンセンサスは得られなかった。普天間基地移転は、依然として長期にわたって日米関係を困惑させる問題になっている。
人民中国インターネット版 2013年3月13日
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