パキスタンメディアの報道によると、中国北京北斗星通導航技術株式公司は数千万ドルを費やしてパキスタンに地上局網を建設し、北斗システムの測位精度を高める。これまでにタイ、ラオス、ブルネイ、ミャンマーが中国の北斗システムを採用しており、今回の計画が実現すればアジアで5カ国目となる。環球時報が伝えた。
この情報について、パキスタンの国防問題専門家で、パキスタン国営テレビ局で国防・外交番組の司会を務める退役空軍上佐のスルタン・ハリ氏に取材した。ハリ氏は「北斗衛星測位システムはパキスタンの国防にとって極めて重要だ。特に誘導と精密攻撃に重要な役割を発揮する」と指摘した。
ハリ氏は「戦争状況下で北斗システムと慣性誘導は巡航ミサイルに十分で安全な誘導を提供する。現在パキスタンの巡航ミサイルは主に慣性誘導を採用している。例えば『バブール』はこのシステムで運用されている。他の巡航ミサイル、例えば空中発射型『ハトフ8』などは慣性誘導や地形照合に加え、衛星航法も必要とする。弾道ミサイル『シャヒーン2』にはなおさらに衛星システムによる誘導が必要だ」と明かした。
また「北斗システムはパキスタンの核抑止能力にも重要な役割を果たす。北斗システムの真の価値は潜水艦の精確な測位にある。潜水艦の精確な測位ができれば、慣性誘導だけで十分に潜水艦発射型弾道ミサイルを発射できる」と指摘。「パキスタンの国防にとって北斗の最大の意義は、軍事攻撃システム、対抗システム、指揮システムの現代化が加速することだ」と強調した。
ハリ氏によると、中国の北斗衛星測位システムの応用実演と海外顧客の体験イベントが昨年、パキスタン最大の都市カラチで行なわれた。パキスタンの農業、航空、交通、測量、防災・減災など関係当局および企業、研究所、大学はこれを通じて北斗システムの建設と応用の成果を身をもって体験し、中国の関連企業と幅広く交流した。
ハリ氏は「パキスタンでの北斗の用途は国防だけではない。パキスタンは経済のテイクオフを必要としており、北斗システムはこうしたテイクオフの『視力』、精度、効率を高めてくれる」と指摘。「北斗システムは現在タイの地震対策、被災者救援システムにプラットフォームを提供しており、パキスタンの民用技術部門と科学研究部門における意義も高まっているはずだ。パキスタンが再び天災や人災に遭遇した際、北斗は大いに能力を発揮してくれるに違いない」と述べた。
中国の李克強総理は今月22、23両日にパキスタンを訪問する。訪問中、両国は北斗システムのパキスタンでの利用に関する協力協定を締結する見通しだ。中国にとってパキスタンは外的環境の変化に左右されない協力パートナーであり、両国による北斗システムの利用には民用協力も軍用協力もある。これは他国による利用と異なる点であり、こうした違いは今後も続いていく。
「人民網日本語版」より 2013年5月21日
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