農民画家のプライド

 

カシュガル市に隣接する疏附県では、農村の楽器作りの伝統を観光資源とした開発を進めているという。このあたりの村では150年に及ぶ楽器作りの伝統があり、現在も500人以上の農民が楽器を製作しているという。2000年には国務院が「中国新疆民族楽器村」の名称使用を許可し、12年には無形文化遺産生産性保護モデル基地に登録されている。そして、ここでは楽器以外に工芸品や農民画も観光資源化する試みが進んでいる。数人が作業をしていたが、その中に自らも絵を描くという農民がいた。なんとなくお互いに話し始めたら話が弾み、後になって名前さえうかがわかなったことに気づいた。うっかりした記者もいたものだが、何かそれがとても自然だったのだ。ウイグル族の彼のくせのある普通話と私のぎこちない普通話の会話は、脇で聞いていた漢族の記者には内容が判然としないものだったようだが(苦笑)、私たちはお互いの言いたいことを理解しコミュニケーションを楽しんだ。

 

主に秋蒔きの小麦とトウモロコシ、綿花を栽培している彼は、農閑期となる冬を中心に民族の習俗や、動物を描くのが好きだという。「時間がある時に描く。忙しければ描かないさ」と、絵が観光客に売れることがあってもあくまでアマチュアのスタンスだ。コンクールに応募したこともないし、家族も彼の趣味については特に何も言わないという。聞いていると、あくまで本職は農業なのだというプライドのようなものが感じられる。私が日本の北海道から来たと告げると、北海道ではどんな作物が取れるのか質問してきた。「綿花は栽培しないのか? そうか、きっと降水が多いんだな」と、やはり農業に関心が行くようだ。最後に握手と記念撮影をして辞したが、私は彼が教えてくれたウイグル語「ホーシュ」で別れを告げ、彼は「さよなら」と手を振った。

 

人民中国インターネット版 2013年7月

 
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