中国では長らく陶芸は男性の仕事とされ、女性が従事することはごくまれだった。こうした伝統を打ち破ったのが楊鳳年だ。彼女は中国史上初の偉大な女性陶芸家であり、その作品である「風巻葵」は現在まで伝えられている。
楊鳳年は、清の嘉慶年間の名匠楊彭年の実妹だ。最初兄は彼女が陶芸の道に入ることを許さなかったが、彼女は兄の影響を受けて陶芸に魅了され、ひそかに陶芸を学んでいた。彼女は他人の真似では大きな進展は望めないと考え、独自の境地を切り開こうとしていた。そんなある日、彼女は裏庭でゼニアオイの花が風に揺れているのを見てひらめくものがあった。そして、その姿をうつした茶壷を制作し「風巻葵」と名付けたのだった。当時の陶芸家たちはこれを見て絶賛した。兄の彭年も驚きを隠せず、彼女が茶壷を製作することを認めたのだった。
これ以降、風巻葵は逸品として伝えられ、幾多の動乱にも破壊を免れ、中国宜興陶磁博物館に所蔵されている。現在の宜興では、大勢の女性陶芸職人が活躍している。