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国外ボランティア「自然の友」が打ち出した「北京に乗る」活動に積極的に参加している(写真提供=「自然の友」) | 北京、夏の昼下がりの南鑼鼓巷に人々の声が沸きかえる。
趙文耕さんほどこの町筋を知っている人はいない。彼の家はこの付近にある。毎日、妻と会社に向かう時は自転車でここを通る。夜、たまに一家三人でここを散歩することもある。
2008年6月のある日の午後、趙さんは資料の入ったかばんを背負って、南鑼鼓巷にやってきて、通りの両側の店一軒ずつに「夏至の日には1時間消灯しましょう」と呼びかけるチラシを配った。これは北京市の環境保護団体「自然の友」の活動の一つだ。
汗びっしょりの趙さんが気にしているのは、店の人が街頭で配られる広告ビラと同じように、自分のチラシをゴミ箱に捨ててしまうのではないかということ。「環境保護は形式化したものではありません」彼はこれをきっかけに、店の経営者たちと環境保護に気を配るエコライフについて交流したいと思っている。
「自然は私たちに光ある世界を永遠に享受させてはくれません。だから昼だけではなく私たちに暗い夜も与えたのです。時間が繰り返し、単調に流れるままに何となく生活していていいものでしょうか?」チラシの最後にはっきりと「夏至(6月21日)の夜8時から九時までの一時間消灯しましょう」と書いてあるが、趙さんは最後のひとことを自分の口で直接商店に伝える必要があると思った。
趙さんの努力によって、最終的に90%の店が提案書にサインをした。
夏至の夜8時、南鑼鼓巷に来た趙さんは、店内の照明を早々と消して店外に坐っている「楽天陶舎」のオーナーを見かけた。趙さんは商売に影響するから店内の明かりは消さなくてもいいんですと急いで説明したが、そのオーナーは手を振りながら、おおらかに言う。「いいんだよ。するなら徹底的にしようじゃないか」。果たして路地のネオンサインが次々と消えていく。観光客たちから驚きの声があがる。事情が分かった後、納得の笑い声が街中に響いた。
2008年、南鑼鼓巷だけではなく、北京の活動に呼応して、鄭州、廈門、台北など多くの都市と香港特別行政区でも、いろんな形で明かりを消した。「エコ生活は人の貪欲さを減らし、無駄遣いは物質の乏しい時代の思想で、多分より多くの人がエコ生活を一種のファッションと考えるようになるかもしれない」と趙さんは見ている。この活動が普通の市民の家の中、都市にあるすべてのライトアップ灯にまで普及されればよいと望んでいる。その時には、中国全土でもっと多くの場所が一斉に消灯することになるだろう。
1994年に発足した「自然の友」は中国でもっとも早く環境保護に取り組んだNGO組織だ。梁従戒さんとともに「自然の友」を立ち上げたあの時のことを、「自然の友」の理事長・楊東平教授は今なおありありと思い浮かべる。
1990年代の中国では、環境保護という概念はまだあまり知られていなかった。成立したばかりのころは、経費もないため、長い間梁さんの家で事務をとっていた。当時、楊さんと梁さんは初めて北京大学で環境保護講座を行ったが、大きなホールにわずか30数人が来ただけだった。
今では、「自然の友」はすでに一万人を超えるボランティアを抱える全国規模の環境保護組織に成長した。この「自然の友」の歩みを振り返ると、楊さんはうれしさ半分、憂い半分である。今の中国では、環境保護やCO2排出量削減の概念はすでに啓蒙普及され、環境保護の概念は人々に深く浸透している。しかし、いかにすればエコ生活が国民の生活理念になるか、いかに国民を導くか、となるとまだ道程は遠い。ここ数年、「自然の友」が取り組んできた「運転を一日やめる」「エアコン26度に設定で省エネ」「夏至の日一時間消灯」などの活動は社会で大反響を呼んだ。ここまで言うと、楊さんの顔に笑みが浮かんだ。
人民中国インターネット版 2013年9月
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