今年5月に発表された「中国海洋経済発展報告(2013年版)」は10年から20年先の海洋経済を予測している。その中で、中国の戦略的な新興海洋産業が海洋経済を持続的かつ健全にけん引し、2030年には、成熟期に入ると分析している。その時点のGDPに占める比率は15%に達し、中国の「ブルーエコノミー」は全面的に加速されると見通している。
党大会で海洋強国を提起
中国共産党第18回全国代表大会(党大会)で提起された海洋強国建設の戦略目標は「海洋資源開発能力の向上、海洋経済の発展、海洋エコ環境保護、国家的な海洋権益の断固擁護」という方向を明確に指し示している。
ここ二年の間に、国務院(政府)は天津、河北、遼寧、浙江、福建、江蘇、広西、山東の8省・自治区・直轄市の2011年から2020年までの海洋機能区画を承認し、海洋経済発展戦略のスピードアップを明示した。経済の発展に伴って、沿海先進地区の陸上の用地、資源は次第に足りなくなってきた。産業移転が可能な内陸地区とは条件が違う沿海地区は視線を広大な海洋に向け始めた。
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浙江省政府と国家海洋局の共催で、同省寧波市で開催された第1回中国海洋経済投資商談会。海洋経済の分野における最初の全国規模の投資商談活動は内外の注目を集めた(新華社) |
昨年9月20日、遼寧省大連に停泊中のクルーズ客船「渤海翠珠」の前で行われた第1回世界海洋大会の開幕式。中、米、英はじめ59カ国・地域から来賓1200人が出席した(新華社) |
1990年代以来、世界海洋経済のGDP年平均成長率は11%で、同期の世界経済の成長率3~4%を大幅に上回っていることは明らかだ。米国、日本のGDPに対する海洋経済の貢献度はともに50%を超え、ヨーロッパの海洋産業生産額は欧州連合(EU)のGDPの40%以上を占めている。
小さな漁村に大きな変化
浙江省寧波象山県石鋪鎮は東中国海に面し、千年も前から、漁で生計を立てる小さな漁村だった。それが今では星付きの一流ホテル、海鮮料理店が軒を連ね、船主はアウディを運転し、船に乗って海に出るのは外来の労務者だ。統計を見ると、中国の海洋水産品の総量は食肉用家禽総量の4分の1、海上石油資源、天然ガスはそれぞれ総量比23%、30%を占め、淡水資源の不足を補う海水淡水化と冷却用水は急速に増加している。中国東部の多数の沿海省・市は近年、海洋総合開発能力を向上させている。
海洋経済というおいしいパイを前に、沿海各省・市は活気に満ちた発展計画を立案している。
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「東海漁都」と呼ばれる浙江省舟山群島新区の沈家門漁港。この新区は浙江省の海洋経済発展の先進地、長江デルタ地域経済発展の成長の極として期待されている(新華社) |
広東省は「第12次5カ年規画(十二五)」末の2015年までに「海洋経済に強い省」としての基礎を固め、海洋生産額を2009年比で倍の1兆5000億元に増やす計画だ。
また浙江省は、2015年までに、海洋経済モデル地区の海洋生産額を全省GDPの16%、7000億元にする目算だ。
福建省は今後5年から10年の間に、主に沿海都市群、港湾群に依拠して、海峡ブルー産業ゾーンを打ち立てる構えだ。つまり、福州市の都市部と厦門(アモイ)、漳州、泉州都市圏を海洋経済競争力強化の二大中心とする。また、北東岸の三沙湾内にある三都島の商港・三都澳など六大港湾地区を開発し、平潭島など十の島の開発建設を模索する。
開発とエコの両方を重視
海洋は豊かな経済価値を含むばかりでなく、巨大なエコ機能も有している。陸地と比べると、海洋のエコ環境は脆弱で、一旦破壊されると、容易に回復できない。また、海水には流動性があるので、一カ所で発生した汚染は周囲に広がる可能性が大きい。近年、海洋における一連の原油流出事故は海洋エコ保護の重要性をさらに深く認識させた。国も海洋エコ保護に一層力を入れている。
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浙江省舟山市は今年中に市内200の島嶼全てに名称を記した石碑を設置する。石碑の裏面には名称の由来、経緯度、陸地までの距離などの紹介が書かれている(新華社) |
広東省珠海市で開催された中国海洋博覧会。新中国成立から60年の間に達成した海洋開発計画、海洋法整備、海洋生態環境保護などの成果を詳しく紹介(新華社) |
厦門の青い海原で、観光客は「ピンクドルフィン」が飛び跳ね、船を追いかける様子をしばしば見ることができる。長年、厦門が海洋の水質管理で得た貴重な経験は、汚染源から手をつけることだった。厦門は九龍江の河口に近く、毎年、九龍江から海に流れ込む汚染物質は厦門海域の汚染源の半分以上を占めていた。そのため、厦門は上流の龍岩や漳州などの都市と協力し、毎年4000万元以上の資金を提供し、九龍江上流地域の都市と農村の汚染対策を支援してきた。流域総合管理を通じ、流域全体の汚染防止と河口周辺海域の環境保護を推進してきた。
国務院は『全国海洋機能区画(2011~2020年)』の中で「発展とともに保護し、保護とともに発展」という原則を確立した。また、最近集中的に承認した各省・自治区・直轄市海洋機能区画では埋立地の規模、海洋保護区の面積、整備する海岸線の長さなどの面でも数値指標を明示した。言い換えれば、かつての「粗放用海(おおざっぱな海洋利用)」という方式から、今後は区画設定した「ブルーライン」に依拠した方式に転換させるということだ。ここで言う「ブルーライン」はエコ文明、環境との共生など多くのことを意味している。
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