農村の発展を促す新原動力

 

文=高原 写真=馮進

「家庭農場」という言葉は、中国においては新語である。欧米における「ファミリー・ファーム」は、家族を単位として営まれる伝統的な農業経営のことだが、中国における「家庭農場」は、家族が主な労働力となり、大規模化、集約化、商品化した農業生産・経営活動を行う新型の農業経営を指す。二〇一三年一月の中央一号文書で、初めて「家庭農場」という言葉が使われ、中国で家庭農場を発展させることが奨励された。この時、この新しい概念が初めて国民の視野に入ったと言える。

上海の同済大学土木建築学科を卒業した伍運興さんと妻の張国萍さんは、杭州での安定した仕事を捨て、故郷の浙江省に帰って30ムーの土地を請負い、60万元を投資して、家庭農場を始めた(新華社)

二〇〇四年、西南農業大学農学部を卒業した王永波さんは、故郷の河北省の農村に戻り、農民として働く道を選んだ。「私たちの村では代々、小麦やトウモロコシを栽培してきましたが、一年中働き続けていても、たいしたお金にはなりませんでした。私が戻ったのは、自分が学んだ先進的な技術で、村のみんなを豊かにしたいと思ったからです」と、王さんは語る。彼は村民の土地を借りて農場主となり、大規模な栽培を行って、みんなの手本になろうと考えた。資金が限られていたため、最初はまず五ムー(一ムーは約六百六十七平方㍍)の土地を借りて、地元で初めて暖房付きの高性能グリーンハウスを建て、プチトマトを栽培した。これを三年間続けて、十万元を貯蓄した。

温室栽培のほか、王さんはさらに農業技術サービス、農民教育、農業用物資の供給を一体とした農業用品店を開き、農薬、種子、化学肥料を販売すると同時に、村民に技術教育、土壌・生育状況診断、現地指導などのサービスを無料で提供した。八年間にわたって資金、人脈、市場スキルを蓄積した上で、二〇一二年の秋、一ムー当たり七百元の価格で付近の二十九の農家から計百三十ムーの土地を借り受けた。その後も次々と請負契約を行い、今年末には五百ムー以上となる見込みだ。今年三十四歳の王さんは、目の前の広い土地を指しながら、「この土地は去年の冬に土地使用権転貸方式で請負ったもので、今年春に上質なジャガイモを植えました。今すでに半分以上のジャガイモが売れています」と、説明する。

王さんは規模が拡大できたことを嬉しく思うが、今後に関して心配なこともある。たとえば、大規模な商品作物栽培には、大きな農産物貯蔵場と施設が必要で、その建設用地を獲得しなければならない。一家庭で数ムー、多くても十数ムーの土地しか持たない農民にとって、こうした建設用地の獲得はなかなか難しい。そのため、政府がいち早くこうした農業プロジェクト請負、資金援助、制度的保障などの面で実行可能な措置を打ち出し、家庭農場と土地使用権転貸の進展を導いてほしいと、王さんは考えている。

 

人民中国インターネット版 2013年10月

 

 

 
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