文=高原 写真=馮進
近年、飛躍的な発展を遂げている中国の都市化によって、多くの働き盛りの農業人口が仕事を求めて都市に向かったため、村に残って農作業をするのは、ほとんどが女性とお年寄りとなっている。毎日苦労して耕作しても収入はたかが知れているため、土地の請負経営権を大規模栽培農家に転貸し、土地賃貸料を受け取る方式を選ぶことが多い。現在、農民が作物栽培によって得ることのできる純収入は一ムー当たり千元にも満たず、その中には人件費などのコストも含まれている。一方、家庭農場が農民に支払う土地賃貸料は少なくとも一ムー当たり数百元で、東北地区ではそれが千元以上になり、北京市周辺地域ではさらに二千元以上になることもある。こうした状況が中国の農村部で家庭農場を発展させる有利な基礎条件となっているが、その複雑な賃貸関係が借り手にも貸し手にも難題を投げかけている。
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安徽省で10年間、建築の内装をしてきた銭徳明さん(左)は、江蘇省如皋市1000余ムーの土地を請負い、如皋市の最も若い家庭農場主となり、食糧販売量に関する表彰を受けた(新華社) |
たとえば、山東省鄒平県では、農業生産に従事する人口比率が極めて低く、土地請負経営権の集中率が非常に高い。鄒平県太和鎮に住む李勇さん一家が経営している農場は、面積が七百四十余ムーに達し、純収入は年間三十万元を超える。その土地はほとんどが、都市部に出稼ぎに行った地元の農民が李さんに転貸したもので、李さんは一戸ごとに転貸契約を結ばなければならない。ここに一つの隠れた問題があって、現在、農村部で行われている土地使用権転貸にはほとんど証明書類がなく、昔から行われていたように口頭で約束したものに過ぎない。「みな数十年間一緒に畑を耕してきた仲なので、契約を結んだ時には、土地経営権証明というものがあるなんて誰も知りませんでした。今になって考えると、もし契約期間終了前に使用権を返してもらいたいと思う人がでてきたら、どうしたらよいのでしょうか。私はいま耕作してお金を稼いでいますが、心中は穏やかではありません」。
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河南省宝豊県の108ヵ所の家庭農場では農耕以外にも、畜産、シルクじゅうたん加工、苗木栽培などが行われている。(新華社) |
一方、土地使用権を転貸した農民も不安を抱えている。古来より農民は常に土地と緊密につながっている。多くの若者はもはや農作業をしないが、都市部で仕事を失うことがあれば、あるいは年をとって田舎に戻って農業に従事しようとしたならば、自分の土地の使用権を取り戻せるのか。
人々の不安を解消するために、各地では土地使用権転貸手続きの規範化を図り、借り手も貸し手も不利益を被らないよう、いろいろと手を尽くしている。例えば、山東省農業庁は家庭農場登録制度の実施を計画中である。これが実施されると、どの家の土地も登記され、土地請負経営権証明書が発行される。一家につき一つの証明書があり、土地使用権転貸の際の証拠となる。また、山東省滕州市西崗鎮は全国に先立って土地使用権転貸取引市場を開設し、取引の際の「三つの不変」原則を堅持している。すなわち、土地の集団所有制の不変、土地請負権が農民にあることの不変、農地という性質の不変である。こうして、土地使用権の転貸契約が満期を迎えれば、使用権はまた農民に戻る。しかも使用権が誰にあるにしても、国家の食糧確保のために、食糧提供用の農地では食糧となる作物を栽培しなければならない。
人民中国インターネット版 2013年10月
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