プロの農民を育成し、多様な発展を

 

朱啓臻氏

近年、社会で家庭農場が注目されているのと同様に、学界でもこれに関する議論と研究が非常に盛んとなっている。今回われわれは、中国農業大学人文・発展学院副院長、農民問題研究所所長の朱啓臻氏にお話を伺った。

――ヨーロッパでは非常に早くから家庭農場が発達・成熟していました。中国で提唱されている家庭農場は、欧米あるいは日韓のものとはどこが異なるのでしょうか。

朱啓臻氏(以下朱と略) 欧米の土地は私有制ですが、われわれの土地は集団所有制であり、当然中国の家庭農場は、欧米の家庭農場とは異なります。われわれは自らの道を歩み、自己模索を行う必要があるのです。現在、中国で家庭農場が提唱され始めたのは、現在の小規模農家が分散するという状態に多くの問題点があり、家庭農場によって、小規模農家による農業が持つ弊害を取り除く必要があるからです。

現在存在する問題は、主に二つの原因によってもたらされたものです。一つは若者が都市に出稼ぎに行ってしまい、農村の労働力が高齢化し、農村が衰え、農業が縮小していることでです。現在の小規模農家という経営パターンは、国の農業の安全を脅かすまでになっています。そのため、農業に従事していない耕地使用権所持者の土地を、耕作する人に渡して、家庭農場をつくりあげねばなりません。もう一つは、地方政府が土地を商工業資本に転貸し、いわゆる大規模経営を行う傾向にあります。こうした行為は農業の利益を損ない、土地の用途や性質を変えてしまうリスクを高めます。例えば商工業資本が入った土地では、現代農業の名のもとで観光農業が行われ、さらにはそれが不動産に変化してしまうなどです。

小規模農家と商工資本経営の弊害を取り除くためにも、家庭農場の発展が効果的なのです。

――中国の現在の土地政策のもとで家庭農場を発展させることには、どういった長所があるのでしょうか。

朱 家庭農場は、持続や継承が可能であるため、とても安定しているという長所があります。これは兼業農家や各種の短期的な請負とはまったく異なる長所です。そのために、土地をやせ細らせるような耕作方法は採らないし、持続可能な発展を大切にします。しかも、家庭農場は家庭の労働力を主とします。ご存知のように、農業には経験がとても大切であり、高い責任感も必要です。自分のための労働によって行う農業と他人のための労働によって行う農業とでは、その結果はまるで違ったものとなります。また、家庭農場は小規模農家の弊害も克服することができます。小規模農家はコストが高くつき、科学技術の利用や組織による積極性などに影響することがあります。

――家族を単位として農業を営むのでは、農業の大規模化や集約化レベルに影響が出ませんか。

朱 家族ごとに耕作している現況にあれこれ問題があるからといって、その方式がすでに時代遅れであると考えてはいけません。ましてや、これが原始的な制度だからといって否定するのは大きな誤りです。私は家族という自然なグループと農業生産の特徴の相性の良さは、決して過去のものであるとは言えないと思っており、農業生産の特徴に変化がない限り、家族で行う農業にも何ら変化は生じないと思います。そのため、基礎的な農業の経営パターンは決して揺らぐことはないでしょう。

現在、一部の地域では大規模化・機械化が目指されており、大面積の画一的な農業が進み、農業生産にも大々的に資本誘致が行われています。しかし現実が証明している通り、商工業資本が農業の領域でその力を発揮できる余地は限定的で、一般的には加工・流通過程に限られています。かつ、商工業資本の土地請負は多くのリスクに直面しており、いわゆる「大規模であることによる効果」或いは「リスク対抗能力が高まる」ということはありえないでしょう。

だから、現代農業イコール大規模農業と捉えることは誤っており、商工業資本が経営する大規模農業とイコールに捉えることもまた、大いなる誤ちであると言えます。農業組織の最も基本的な形式は家族であるべきで、この種の組織は、一部の農民が農業を捨てるに従って、ある程度の規模を持つ家庭農場を形成することができます。家庭農場が協同組合のメンバーになれば、さらに大きな協同組織となります。家族単位の農業は現代化を退けたものではなく、逆に現代農業の要素をうまく取り入れることのできるものであると思うのです。

――つまり、家庭農場の発展は必ずしも大規模経営を伴うものではないということでしょうか。

朱 そうです。実践の中で、家庭農場を神秘化あるいは基準化してはなりません。家庭農場を労働者を雇って何千何万ムーの農地を耕作するものだと捉えてはなりません。家庭農場は多様化したものであるべきです。例えば、山東省栖霞市の果実栽培農家の夫婦二人がありったけの力を果樹園に注いでも、五ムーほどの広さを営むのがやっとで、毎年の純収入は四万元余です。しかし、これも家庭農場として登録されます。一方、黒龍江省の農民はトラクターを運転して、一人あたり三〇〇余ムーの耕地を耕すことができます。もし家族が三人いれば、この家庭農場の規模は千ムーにも達しますが、これも家庭農場です。

農場の種類は、専門農場でもいいし、総合農場でもかまいません。総合的な農場を設立することにより、農業労働時間の配分が不均衡であるという問題が解決でき、安定した就職により、保障も提供できます。家庭農場の多角経営は、自然や市場リスクを避けることにも役立ちます。

――家庭農場を通じて現代農業を発展させることは、農民に対して何か新しいことを要求するものなのでしょうか。

朱 われわれが二〇一〇年に行った全国十の省、市の二十の村のモデル調査では、農村の農業労働力の高齢化が深刻となっており、平均年齢は五十七歳でした。これは今後の農業発展の潜在的な脅威となります。このような状況を変えるためには、プロとしての農民、特に若い農民を育成しなければなりません。

プロの農民とは、教養があり、技術を理解していて、経営ができ、農業を職業と考えて、高い社会的責任感を持っている人々です。彼らは大規模請負農家、畜産専門農家、または田舎に戻って創業した元出稼ぎ農民でも、大学や高校、専門学校の卒業生でもかまいません。農業生産を志すすべての人がプロの農民になることができます。しかし、強調しておきたいのは、プロの農民は給料をもらって働く農場労働者ではなく、さらに資本でお金を稼ぐ農業投資者でもありません。自分で農業労働を行っている農業経営者のことなのです。家庭農場はこうした新しいプロの農民の活躍の舞台となることでしょう。(聞き手=高原)

 

人民中国インターネット版 2013年10月

 

 
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