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光岡英行さん |
重慶日本国総領事 |
――四川料理の代表である麻婆豆腐は日本人にたいへんよく知られていますが、四川省に囲まれた重慶市の知名度はどうですか。
私もこちらに来る以前、実はあまり詳しく知りませんでした。日本の人から見ると、やはり北京や上海が馴染みのある都市でイメージがわきますが、重慶となると、まずどこにあるのかが判然としません。漠然と「遠いところにあるのかなあ」という感じで、主な観光地も知りませんし、思いつく有名なものもありません。イメージしにくいですね。四川省なら三国志の関係で成都がよく知られていますし、パンダもいます。一方重慶は、日本人から見るとあまりなじみのある深い都市ではないですね。
でも、着任して一年が過ぎた今、重慶は非常に活気がある都市だと感じています。ここ十数年来GDPは二桁成長を続けていますし、さまざまな建築物もできています。そして、重慶周辺にはさまざまな観光名所があることも知りました。例えば、大足石刻(中国三大石窟と比べても劣らない芸術価値を持つとされ、世界文化遺産に登録されている)、武隆カルスト地形(世界自然遺産)など非常に風景の良い場所がいくつもあります。また、昨年10月には重慶で世界温泉及び気候保護連合会の年次総会が開催され、「世界温泉の都」という称号を授与されるなど、観光資源が非常に豊富なことに改めて驚かされます。ちなみに、ここの麻婆豆腐ですが、最初はその辛さとしびれる味に慣れませんでしたが、食べているうちにだんだん好きになってきて、今は重慶火鍋も大好物です。
――重慶にいる日本人は少ないですが、重慶は日本企業との縁が深いと聞きました。これはどういうことですか。
私たちの統計によると、重慶の長期滞在者は340人ほどです。上海の5万6500人(2012年10月現在)と比べたら本当に少ないですね。重慶総領事館は重慶市のほかに、四川省、雲南省、貴州省の三省も管轄していますが、全部合わせても在留邦人は1000人余りで、その大部分は重慶と成都に居住しています。
でも、ここには日本企業が多く、自動車のスズキ、ヤマハ、本田もエンジンを製造していますし、いすゞも立地しています。これら自動車関連企業は1980年代から進出しています。特にスズキは、「長安鈴木」として知られており、重慶市内で見かける黄色いタクシーはみな「長安鈴木」製です。というわけで、在留日本人は少なくても、重慶には早くから日本の企業が進出して根を下ろしてきたのです。
私は昨年の5月にこちらに来ましたが、それから半年ほどの間に約30もの日本企業関係視察団が重慶総領事館を訪ねてこられました。北京や上海では投資がずいぶん進んでいて、人件費も上がりました。中国は以前「世界の工場」と言われましたが、今は経済レベルが上がり、市場としても注目されるようになりました。中国は日本の企業にとって非常に魅力のある市場になっています。そうすると、企業としてはやはり中国で仕事をしたいですね。でも、上海など沿海地域はすでに開発が進んでしまっている。では、次はどこに行こうか考えると、ここ重慶と成都など西南地域になるのです。中国政府も、西部大開発という政策を進めていますから、日本の企業はこれからの発展も期待して進出してきています。日本のメガバンクの一つ三井住友銀行はかつて重慶に事務所だけ置いていたのですが、昨年支店を開設しました。今年の2月に入りますと、日本の日揮、三井物産と両江新区(現在全国に六カ所ある国家級新区の一つ)の重慶両江新区開発投資集団有限公司の3社でビジネスパーク開発を行う合弁会社を設立しました。日本と中国の協力で、日本の企業を誘致し、工場から居住エリアまで整備しようというものです。昨年から今年にかけて、日本の企業による重慶の進出が目立ちました。今後とも日本の企業がこの地域に注目する流れは変わらないと思います。
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