信じて進む「立脚中国展開世界」の道

 

――中国での成功者として、将来に対してどんな夢をお持ちですか?

2008年に建築家の松原弘典さんと共に、東京の建築専門の「ギャラリー・間」で二人展を行いました。ギャラリー間で展覧会を開催するのは建築家にとって大きな名誉です。その時、展覧会のタイトルを「立脚中国 展開世界」としました。これは、中国を拠点にしながら世界に向けて僕のデザインを発信していくということです。それは僕個人が建築家としての地位を築くことであると同時に、それが存在する建築は中国にあるわけですから、世界から見ると「中国にもあんなすごいデザインのものがあるんだ」となります。それは結局、中国全体の建築の地位を高めることにつながるはずです。それを信じてやってきました。

――東北スカイビレッジの進行は今どうなっているのでしょう。

まず、「東北スカイビレッジ」は建築と土木の融合した構築物であり、海と共生する街であり、環境防災都市です。今のところ住民と行政との間で現地再建の合意がまだ形成されておらず、スタートが切れないでいます。市長は元の場所に街を再建したいのですが、住民の中には家族を亡くすなどして、他の場所に移りたいと考えている方もおられます。市長は、人口が少ないと街が持続する可能性が低くなるので、みんなで一緒に元の場所に安全な街を再建しましょうと訴えていますが、双方がなかなか合意できず、そこが一番のネックになっています。

僕には、スカイビレッジというプロジェクトを成り立たせるために、必要な条件と考えていることがあります。安全な住宅をつくるのはもちろん最も大切なことですが、同時に産業を興し、雇用を生み出さないと街が持続できないということです。幸い、スカイビレッジの考え方に賛同し、既に進出を積極的に考えてくれている企業が複数あります。また様々な分野の方々が支持をしてくれています。特に被災地の取材を数多くしているメディアほど、このスカイビレッジを応援してくれています。必ず実現させるという使命感を持って努力しています。

――迫さんが会長をしておられる北京和僑会はどんな組織ですか。中日関係が困難な今、北京在住の日本人として、また和僑会の会長として、両国関係改善のためにどんなことしていきたいとお考えですか。

僕が発起人である北京和僑会は、3年前に設立されました。そのころ、中国はどんどん発展していて、日本企業が置かれている立場がどんどん変わっていると感じていました。両国の差が縮まっていく中で、北京にいる日本人も成長しないといけません。そうしないと自分たちの価値が低くなってしまうと感じて、北京で起業している日本人が集まり、ノウハウや問題意識を共有したり、共に学び成長するために和僑会をつくろうと考えました。

最初、僕は副会長を務めていましたが、昨年秋に前会長が体調を崩されたため、会長を引き継ぐことにしました。日中関係も非常に悪い時期でした。僕はもう10年以上中国で仕事をして、北京にいる日本人の中でもベテランになっていたのですね。最初、僕が中国で仕事を始めたころは、日本のクライアントからの仕事はほとんどありませんでした。中国での仕事がメディアなどで取り上げられるようになって、ようやく日本からの依頼も増えてきたのです。

昨秋以降の状況の中で再確認したのは、僕らはもうここに根を下ろしており、ここでずっと仕事をしていくということです。ですから、僕らこそが日中関係を本当に真剣に考えなければいけません。

去年の秋の状況を振り返ると、日本のメディアは大企業ばかりを取材し、取材を受けた人の名前や会社名も匿名で報道していました。そうした報道は、僕らの肌感覚とはちょっと違いました。日本での報道を見ていると、中国の至る所で日本人の身に危険が及ぶかのような印象を受けたようですが、実際は違いました。建外SOHOで働いていても何も危険はありせんでした。デモが起きた日、建外SOHOにある日系コンビニには臨時休業の張り紙が出ていましたが、その前で二人の中国人が「なんで閉まっているの。不便だなあ。コンビニは何も関係ないでしょう」と話していました。こうしたことは、現地にいるから分かることです。僕ら和僑会のメンバーは、こういう時期だからこそ日中関係の改善にますます努力したいと思ったのです。両国が、お互いに理解を深めれば、無駄な争いを少しでも減らすことができるはずで、僕らが実感したことを、きちんと日本の人たちに伝えていこうと考えています。

――7月に行われた「中日子ども100人写真展」では、北京和僑会も実施組織の一つとして参加されました。この写真展を迫さんはどう評価しておられますか。

素晴らしいことだと思います。僕にも6歳の娘がいるので、娘の将来と可能性について感じていることがあります。

僕らの世代で完璧な中国語を話してビジネスをしている人はほとんどいません。しかし、娘の世代はそれが可能になると思います。日本語と中国語が話せて、幼稚園から中国人の友だちと一緒育っている娘にとっては、日本人と付き合うのも中国人と付き合うのも全く変わりがありません。遊べる友だちがいれば国籍や言葉は関係ないという子たちが、今育ってきているのです。彼らや彼女らが社会で活躍し始めると、歴史問題や領土問題などいろいろ難しいことはありますが、確実に両国の関係が変わるのではないかという希望を僕は持っています。

写真展で披露された子供たちの笑顔を見て、このようなことを続けていくことがとても大切だと思いました。国家間の出来事に比べて、僕らのやっていることは本当に小さなことかもしれません。でも、僕らは未来への種を植えることぐらいはできるんじゃないかと思っています。これからも愚直に、そして信念を持って続けていきたいと思っています。(聞き手=于文)

 

人民中国インターネット版

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