|
須藤みか さん(48) |
作家 |
――最近の上海についてどうお感じになっておられますか。
格段に生活は便利になりました。かつての話をすると、在住年数の少ない日本の方に大変驚かれます。現在の上海からは想像もできないからでしょう。
――上海の人たちについてはいかがでしょうか。
上海で出産を経験しましたが、出産、子育ての過程で、中国の方々の優しさに触れました。地下鉄に乗れば、妊婦だと気づいた若者が何人も席を譲ろうとしてくれましたし、雨の日にビルに入ると、警備員が走って来て「滑るから気をつけて」と回転ドアを押さえてくれ、階段を下りれば一見こわもてのおじさんが手を差しのべてくれたこともありました。見知らぬ人から「絶対男の子だよ」と何度も言われましたし、買い物かごを覗き込んで「うん大丈夫、(お腹の子に)栄養満点だね」と話しかけてくるなど、楽しいマタニティーライフでもありました。
――上海について書かれた著作が数多くありますが、最近取り組んでおられるのはどんなものでしょうか。
歴史街歩きの本を出版したいと準備を進めています。中国の近代史の舞台として、上海は非常に重要な役割を果たしましたし、日本の近代史とも大きくかかわっています。日本と中国の過去からの関係、そして過去が現在につながっていることを、建物や場所の持つ物語を通して分かりやすく書けたらと思っています。
――生活面ではいかがでしょう。
上海には数多くの日本人女性グループがありますが、東日本大震災後に、自分たちにできることをしたいという思いから、6つのグループが連携する「上海日本人女性ネットワーク」ができました。被災地支援などの活動を続けていますが、中国の方たちが被災地に温かい思いを寄せてくださっていることを感じる機会が多く、その思いを被災地にもつなげていればと思っています。
上海日本人女性ネットワークの中には、経済困難区の子どもたちの教育支援を続けるボランティアグループ、日中絵本交流や地元の自閉症児施設への定期訪問を続ける日本語図書館など、さまざまな形で中国の人たちと関わる女性グループがあります。こうしたささやかだけれど、人と人の間に笑顔が生まれる活動に少しでも関われることを嬉しく思います。最近では、日中の有志の仲間たちと六月一日の国際子どもの日に、「日中未来の子ども100人の写真展覧会in上海」を開催いたしました。明るい日中の未来を築きたいという願いに多くの方が賛同してくださって、成功のうち閉幕することができました。
――オススメのスポットを教えていただけますか。
外灘です。多くの方が建築の外観しかご覧になりませんが、絶対に建物の中、そして外灘の横道、裏道に入って見るべきです。現在も商業施設として利用されていて、中に入れる建物はたくさんあります。外灘エリアのそこかしこに歴史の小片があり、多くの物語が眼前に迫ってきますよ。(聞き手=井上俊彦)
人民中国インターネット版 |