上海自由貿易試験区はこれからどうなる?

 

中国(上海)自由貿易試験区の最大の魅力は貿易の利便化だ。人民日報が伝えた。

▽貨物の出入り・投資・金融が自由 法律法規の保障もあり

10月8日は同試験区が9月29日にプレートを授与されてから初めての営業日で、業務の問い合わせや手続きに訪れる人が引きも切らなかった。同試験区のプレート授与以前にも、一群の企業が待ちきれずに同試験区の管轄区域内で登録申請を行っている。新規登録の企業だけでなく、上場企業の進出の動きも加速した。

計画によると、同試験区は貿易の利便化が重要な内容だ。上海市発展改革研究院の肖林院長の分析によると、世界の成熟した貿易区をみれば、国際的水準に達した自由貿易区の中核的制度は「3つの自由、1つの保障」という言葉で概括することができる。

すなわち貨物の出入りの自由、投資の自由、金融の自由があり、さらに法律・法規による保障もあるということだ。こうした制度設計の下で、貨物の出入りを自由にし、関税障壁や非関税障壁を撤廃し、通常行われる税関の監督管理を免除する。また投資を自由にし、雇用を自由にし、経営を自由にし、経営者の出入国を自由にする。資金面では、企業が必要とする外貨の交換を自由にし、資金の出入りと移転を自由にする。このような制度の下で、企業は自由貿易区以外のエリアでは享受できないさまざまな便宜を享受できる。これが企業が自由貿易区に進出する原因の一つだ。

上海市の計画に基づき、同試験区は9月末までに貨物の「1回の申請、1回の検査、1回の許可」モデルを全国に先駆けてスタートさせ、10月9日には貨物がまず税関を通り後から報告するシステムを実施し、貨物が同試験区に直接運び込まれることや、輸出入される貨物がペーパーレスで通過できるようにし、同試験区内の貨物の流れをスムースにした。税関総署と国家質量監督検験検疫総局(質検総局)はそれぞれ自由貿易区に対する指導意見と部門・市間の協力覚書を起草し、統一的な監督管理メカニズム構築の取り組みも積極的に推進した。

同試験区は貿易を便利にするだけではなく、貿易のモデル転換・バージョンアップの過程を加速させることもできる。世界の先例を踏まえ、同試験区は貿易の業態・モデルの刷新やオフショア機能の刷新を実現するとともに、連動して世界の海上輸送サービス機能の刷新・バージョンアップを推進する可能性がある。

▽ネガティブリスト管理を実施

ネガティブリストとは、投資家に何ができないかを教えるものだ。リストになく、規定が設けられていないことであれば、何でも取り組むことができる。

中国資本企業が同試験区に積極的に進出するだけでなく、外資系企業も進出に強い意欲を示す。すでにシンガポールのシュタインウェーググループ、タイのCPグループ、フィリップスメディカルなど20社を超える企業がすでに進出計画を立てている。

世界の先例を踏まえて、同試験区は投資分野における市場参入、外資系企業の内国民待遇、業務の経営、投資サービスなどの面で高度に開放され緩和された投資・ビジネス環境を創出する見込みだ。

同試験区で実施される投資管理制度の改革は主に、ネガティブリストに基づく管理、外資系企業の投資管理制度の改革、海外の投資家管理の改革、商業登録制度の改革の4方面に体現されている。このうちネガティブリスト管理は重要な突破口の一つだ。肖院長は、「これまでの投資管理では、投資家に何ができるかを教え、できることをリストアップして投資の手引としていた。ネガティブリスト管理は、投資家に何ができないかを教え、できないことを列挙したリストであり、リストにないことで、規定が設けられていないことであれば、何でも取り組むことができる」と話す。

上海WTO(世界貿易機関)事務コンサルティングセンターの王新奎総裁(上海市政府参事室主任)によると、同試験区のネガティブリストが短時間で徹底的に定着することはあり得ず、将来的にはネガティブリストによる管理とポジティブリストによる管理を融合した方法が取られる可能性があるという。

ネガティブリスト管理は新しい模索であり、どのように実施するかは今後模索していくことになる。

▽金融分野の開放・刷新に重要な突破口

同試験区では、全国に先駆けて金利やレートの市場化、資本項目における自由両替、金融市場の開放などが試験的に行われる。

同試験区がまだプレートを授与されていない時、金融機関はすでに活発な動きをみせていた。

上海浦東発展銀行は朱玉辰頭取をリーダーとする課題チームを他行に先駆けて立ち上げ、初めに同試験区に支店を設立することを提案した。また中国工商銀行、中国銀行、中国農業銀行、中国建設銀行、中国交通銀行、招商銀行、上海銀行も支店の設立を申請。華僑銀行をはじめとする外資系企業も積極的に準備を進め、同試験区に切り込むチャンスをうかがう。シティバンク、香港上海銀行(HSBC)、東亜銀行、スタンダードチャータード銀行などの外資行も同試験区でのネットワーク設立を検討中だ。

保険会社も遅れを取らないようにと動き出している。中国保険監督管理委員会上海監管局(上海保監局)は中国太平洋保険(集団)株式有限公司と大衆保険株式有限公司に回答文書を送り、第一期保険会社として同試験区に進出し、主に損害保険業務を取り扱うことを認めた。

同試験区では金融分野の開放・刷新をめぐって重大な突破口が開かれており、国際的な先例を踏まえて、金利の市場化、レートの市場化、資本項目における自由両替、金融市場の開放といった金融の国際化に向けた先行テストが行われる予定だ。

一般的にいって、世界の自由貿易区では金融の自由化は主に緩和された外国為替管理制度に体現されており、資金の自由な出入り、外国為替の自由な両替、決済が利便化された外国為替管理モデルが行われ、資本項目の開放、外国為替口座の開設、資金の回収・支払の利便化、多国籍企業の資金管理、オフショア支払・決済、国境を越えた投融資などで外国為替に関連したさまざまな便宜が提供されている。だがこうしたサービスを中国の既存の体制の中で実現させることは難しい。朱頭取によると、自由貿易区に進出すれば、こうしたサービスを他社に先駆けて試験的に展開することができ、経験を総括して、能力を高めることができるという。

同試験区の金融をめぐる刷新は段階的に進められている。中国人民銀行(中央銀行)上海本部は資本項目での両替実現、人民元の国境を越えた利用、金利の市場化、外国為替管理体制の4方面について細則を制定し、人民銀の本部に報告した。また上海本部は統計モニタリングシステムの建設準備を積極的に展開し、リスクがコントロールできることを前提として、口座を分けて計算する方法を採用し、同試験区の先行的試験項目における両替を可能にするとしている。

現在、中国銀行業監督管理委員会上海監管局(上海証監局)も中国銀行業監督管理委員会(銀監会)がうち出した関連の支援意見に合わせ、中国資本銀行が同試験区に支店を設立することを認め、同試験区内に民間資本銀行を開設することを認め、同試験区内に開設した外資系銀行が人民元業務を取り扱う場合の期間制限を緩和するなどとしている。また上海証監局と上海保監局は、金融市場における業務の刷新と関連業務の開放も積極的に進めている。

 

「人民網日本語版」2013年10月15日

 

 
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