雷偉さんは重慶市客運索道有限公司の副総経理(副社長に相当)で、仕事はケーブルカーやエレベーターなど、重慶独特の公共交通機関の運営管理だ。早朝、人々はケーブルカーに乗り、上空から長江を渡り、住んでいる区から働いている区へ移動していく。彼の説明によれば、重慶の中心市街地では嘉陵江ケーブルカーと長江ケーブルカーの2つがあり、それぞれ1982年と87年から運行されてきたという。ケーブルカー開通以前は連絡船だけが頼りで、乗降のため急な坂道を上り下りしなければならなかった。また、洪水の季節には連絡船が運休となり、濃霧による運休も年間68日にも及んだ。
ケーブルカー設置の構想は1957年に生まれた。当時20歳だった労働者の唐遠さんは、いつも江北区に住む姉が長江を越える交通の不便さをこぼすのを聞いていた。そこで彼は、姉を楽にさせる奇想天外なアイデアを思いついた。「嘉陵江の両岸にケーブルカーを架けたらどうだろう」と考えた彼は、稚拙な説明図を添えて交通部に手紙を出したのだった。当時は技術、設備などの条件が整わなかったが、彼は1982年になって自分のアイデアが現実になるのを見届けたのだった。
現在、長江ケーブルカーは1日6000人の乗客を運んでいる。乗車券は片道5元(1元は約16円)だが、日本のSuikaに似た重慶市の交通カードを使えば1元8角に割引される。ケーブルカー以外に、重慶にはエレベーター、エスカレーター、ライトレール(次世代型路面電車)、地下鉄などの公共交通機関があって坂の多い都市に暮らす市民の足として親しまれている。