文=陳言
今年の外資系企業の話題の多くは、労働コストの上昇であった。とくにここ数年、場合によっては2桁台の賃金上昇となり、会社の経営にプレシャーを与えている。
ただし、その賃金上昇について角度を変えてみると、まったく違う結論が出てくる。 出稼ぎ農民労働者は昨年に4兆2000億元(約6770億㌦)の商品とサービスを消費し、「その数字はインドネシアの昨年の消費総支出の1.5倍に相当し、またトルコの2011年の消費支出よりも23%高い」と、イギリスの『フィナンシャル・タイムズ』4月25日付けの記事に書かれている。
10年前から中国は「世界の工場」になり、当時の出稼ぎ労働者の賃金は、18世紀の産業革命時の英国の労働者よりも低かった。今では約2億2000万人の出稼ぎ労働者は、次第に消費力を持つ階層に仲間入りし、中国に新しい経済変化をもたらすという局面が強調されるようになった。
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2013年2月25日、旧暦1月16日、旧正月をふるさとで過ごした若い出稼ぎ労働者たちが、また新たなる出稼ぎの旅に旅立つ。安徽省淮北駅の待合室でネットをしている若者たち(東方IC) |
この変化はまた、中国自身の変化とも重なる。それは経済が曲がり角にさしかかっていること、社会心理や世代ギャップなども如実に反映している。例えば、相対的に豊かになった1990年代に生まれた「90後」は、消費の面では「80後」「70後」よりずっと気前がいい。彼らが収入の53%を消費してしまうのに対し、「80後」と「70後」は、それぞれ47.2%と38.3%であった。
出稼ぎ労働者の毎月の消費は、ほとんどが日常消費財に費やされており、例えば即席麺、ファストフード、ビール、ノンアルコール飲料、衣服や携帯電話などである。彼らはブランド品にはまだはっきりとした認識はないが、今後の収入増加に伴い、国内外のブランド、とくに外国ブランドに大きな関心が寄せられるのではないかとみられている。
2010年頃からブルーカラーの人材市場は供給過多から不足に変わり、『中国投資参考』によれば、2012年はブルーカラーの求人数に対する就職者数は75%に達しなかったという。
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11月9日、建築業、飲食業、弁護士、ガードマンなどさまざまな職業の80組の重慶の出稼ぎ労働者が、渝北龍頭寺公園で集団結婚式を挙げた(東方IC) |
人材市場が根本から逆転を遂げたことにより、出稼ぎ労働者の収入も急速に増加した。彼らの賃金上昇率は、その他の消費者層よりも高かった。出稼ぎ労働者の2012年の収入は12%増、平均月収が2995元であったのに対し、都市住民の収入は9.3%増にとどまっている。13年の関連データはまだ出ていないが、12年の状況と大きく変わることはないだろう。
中国では出稼ぎ労働者の消費力増加は、バランスの取れた経済成長モデルの実現、城鎮化(都市化)の促進と密接な関係にある。出稼ぎ労働者の収入増加に伴い、投資依存型の経済成長から消費による安定成長への転換が可能となる。また、出稼ぎ労働者の消費を含めたその役割は、ますます重要なものとなる。今年の国内総生産(GDP)増加のうち、消費から得られたものは5割以上にのぼる。今年も消費のGDPに対する貢献は投資より大きく、それはすでに3年連続の現象となっている。
人民中国インターネット版 2013年12月 |