陳言 日本企業(中国)研究院執行院長
昨年12月の総裁選挙時、選挙カーから安倍晋三氏が腕を振り叫ぶと、人々からは雷鳴のように呼応する声が響き、数え切れないほどのフラッシュがたかれ、携帯電話のシャッター音が鳴り響いた。携帯電話からSNSにアップされた無数のメッセージが、安倍氏の声を日本中に伝えた。「失われた20年」を過ごした日本にとって、何が何でも2013年を失われた30年の最初の年にするわけにはいかないという思いは強く、安倍首相は経済で日本を復興の道に乗せることを約束し、民衆の願いに答えた。これが12月26日彼が首相の座に就いた後、内閣支持率が50%以上を維持し続けた原因だ。
しかし、安倍氏は首相の座に就いて以後、今年7月には自民党が参議院選挙で再度勝利し、衆議院で与党が多数派だが参議院は野党が多数というねじれ国会の現象を完全に転換させ、安倍首相率いる自民党は完全に日本の政局をコントロールするようになった。
7月以後、安倍自民党には選挙公約を実現するすべての条件が整った。株式市場は外国投資家による投機的売買が行われたものの、結局何割かは上昇した。大規模な金融緩和政策で日本円を大量に発行し、急速な円安をもたらした。過去に日本経済の発展を阻害してきた円高問題は、これによって解決され、日本は経済成長速度を速める各種条件を得た。
しかし、日本国民がこの時に発見したのは、安倍政権が民意から次第に離れ出したことだった。
まず、経済回復で民衆の最大の願いに応えるとした安倍内閣は、過去1年間に具体的な経済成長政策を打ち出せなかった。この1年の安倍内閣経済政策を整理してみよう。最も大きな行動としては、消費税引き上げ法案の通過以上のものはない。長い目で見れば、消費税を現在の5%から2014年4月に8%に引き上げ、2015年10月には10%に引き上げることは、日本の財政赤字を解決し現在の社会福祉を維持するには必須だが、消費税の引き上げは消費の刺激にはマイナスだ。日本の民衆はますますサイフの紐を固くし、2014年の市場規模は2013年より縮小する可能性があり、2015年の再度の消費税引き上げによって、日本市場は徹底的に冷え込む可能性がある。
企業は、市場縮小を予測している時に投資はしないものだ。2013年、日本の大規模製造業では設備投資計画を下方調整している。中小企業はこの時期さらに設備投資を行うことが難しくなっている。将来に対する自信の欠乏が日本市場の大きな特徴となっているのだ。
第2に、安倍内閣の軍事費予算の追加による経済成長刺激効果はきわめて限定的だ。安倍内閣が軍事費予算を増加させるのは、例えば「統合機動防衛力」構築のためであり、今後数年で日本は機動戦闘車を99両増やし、オスプレイ17機、水陸両用車を52両、無人偵察機3機を増やす計画で、過去数年間一貫して縮小傾向にあった戦闘機を260機から280機に増やして国防予算は5年間で24兆6700億円に達する。日本の2013年の税収は約43兆円であり、軍事費が国家税収に占める比重が非常に高い。戦争がない状況では、経済学の基本として軍事費は浪費と考えられる。日本の税収の1割以上がこのように浪費されていくのだ。
安倍首相が主張する「国土強靭化計画」は、言い方を変えると、大型の建物や各種道路を建設し、国家プロジェクトの方式で経済を刺激するものだ。しかし、過去20年に自民党政権であれ民主党政権であれ、繰り返しこうした方法を行ってきたが、効果は生まれなかった。
その結果、安倍首相が政権に就いて1年、人々は日本の実体経済に変化を実感できず、軍事力の増強だけを目にしたのだった。「自由と繁栄の弧」外交を実現するため、中国との対峙を強めるため、大量の予算をアセアン諸国の援助につぎ込むことが必要だ――。このような政治は、民衆の期待する経済回復とはまったく別のものだ。
第3に、日本のメディアのこの数年来の中国に関する報道で、日本の民衆に中国に対して好感を持つ人は少ないが、これと中日対立の挑発は一律に論じてはいけない。東アジアにおいて中国、韓国、北朝鮮との対立を前提とした外交は、日本の民衆が望んでいるものではない。12月26日、安部首相はわざわざ燕尾服を着用して靖国神社を参拝した。これは、日本国内の右翼勢力に迎合することであるが、侵略戦争の中で亡くなった軍人の家族の理解は得られない。とりわけ1945年前後にすでに日本の必敗が見て取れる中で、市民を軍隊に送り死に追いやるようわめきたてたA級戦犯たち、彼らの言行は日本の一般民衆の理解を得られてはいない。靖国神社参拝を通じて、秘密保護法案の審議を強行に推し進めたことによって低下した支持率上げようとすることだろう。安倍首相のやり方は、民意がその政治目的に対してさらに疑惑を持つようにしているだけだ。
間もなく2014年だが、安倍内閣は発足してすでに1年が経過し、民衆は彼に十分な試運転の機会を与えた。来年は経済を良くすることができるかどうか、特に欧米や韓国企業が世界最大で最も発展の可能性を持つ中国市場で躍進している時に、安倍政府は中国から離れようとしている。日本の民衆はこの政府をそれでも支持するだろうか、これはすでに大きな問題となっている。今日の安倍首相はすでに昨年の選挙時のエネルギーとアピール力を持ってはいない。
人民中国インターネット版 2013年12月29日
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