風過耳=文
2013年がもうすぐ終わろうとしている。どの国でも一年の振り返りが盛んに語られているが、われわれの隣国日本では、第二次安倍内閣が一連の経済刺激策を始めてまる一年になる。世界第3位の経済大国の「刺激打開策」をどのように見るかは、当然今年末の経済界の話題の焦点となっている。
筆者は以下のように考える。われわれが日本の最近のとても複雑で矛盾に満ちた経済データをどのように見るかにかかわらず、理性に回帰し、常識に回帰し、歴史に回帰すれば、明確な結論を出すことができる。すなわち、いわゆるアベノミクスの本質は「毒酒を飲んで渇きを止める」もので、長期的に見れば、求めているものを手に入れることができず、日本の長期的な健全な経済にも利せず、軍備拡張費の更なる拡大に至っては、危険の前触れとなる。
歴史に回帰してみよう。輸出を刺激するための流動性の乱発は、日本の「失われた20年」の最大の原因だった。1978年に中国が改革開放を始める前、日本の第二次世界大戦の経済復興は一度はアジアないし世界で最も目を見張らせられる経済成果の一つであった。しかし1985年のプラザ合意後、ずっと低く見積もられていた日本円が大幅に上昇し、日本の輸出産業は大きな影響を受けた。輸出下降の経済へのマイナス影響を帳消しにするために、日本政府は利率の引き下げや拡張的な金融政策などの措置により、国内の経済景気を維持してきた。1986年1月~1987年2月の一年余りの間で、日本銀行は5回にわたり商業銀行の公定歩合の引き下げを行い、もとの5%から2.5%まで調整され、日本の通貨供給量もそれにつれて大幅に増加した。当時、日本政府は赤字削減のために緊縮財政政策をとり、通貨供給量の増加はすべて民間投資市場に流れ、不動産と株式が「両翼」となって、前代未聞の経済バブルが発生した。この騒ぎが最高潮に達すると、国際金融投資家たちに売りに出され、最後にはバブルがはじけ、日本経済は20年振るわぬままに置かれた。安倍首相はいわゆるデフレ脱却の通貨政策、言ってしまえば実質金利をマイナスに調整し、明日にはお金は価値がなくなるので、今日お金を使ってしまったほうがいいというような政策をとったが、これはかつてバブルがはじけたときの最初の状況にとてもよく似ている。
常識に回帰してみよう。紙幣を印刷することで経済問題を解決できるのか。負債率が200%にもなる日本はさらにどこから持ってきた資金で投資を牽引するというのだろうか。アベノミクスは結局のところ、3つのカードしか持っていない。1つはデフレ脱却のための通貨政策で、通貨の価値は下がり、物価は上昇する。2つ目は臨機応変な財政政策で、言ってしまえば公共投資の拡大であり、ケインズ式の強行な牽引により、人為的に需要と経済発展をつくりあげる。3つ目は投資の拡大と発展傾向にある構造性改革のテコ入れで、日本に存在する経済問題を本当の意味で解決し、持続可能な成長と繁栄を手に入れようというものである。現在、安倍首相がこれにより実現しているのは、貨幣発行と公共投資の拡大のふたつである。紙幣の印刷は当然インフレ局面を変えることができるだろうが、人々は自分が持つお金の価値が減ることを恐れ、商品の買いだめなどの恐慌的な行動に出るだろうし、こうした需要は健康的とは言えない。通貨政策で基礎的成長を実現できるならば、日本は1980年にとっくに成功していて、今日の問題は起こり得なかったに違いない。投資の牽引に至っては、日本政府の負債率はGDP比200%を超えており、世界のいかなる先進国よりも高い。日本人が国を愛さず、大挙して国債を買わなかったら、その国債はとっくの昔に一銭の価値もないものになっていただろう。公共投資を続けて拡大し、借金して投資することは、基礎インフラがすでにかなりととのっている日本では、その投資効率は極めて低く、投資リスクはさらに大きく、ひとたび国債システムが崩壊すれば、その結果は「失われた20年」どころではなく、徹底した経済崩壊と不況に陥るだろう。
理性に回帰してみよう。安倍首相は武士の精神によって日本の経済・社会の深い問題に対応すべきで、浪人のように蛮勇をふるって勇敢ぶるべきではない。日本の問題とは何か。まず、人口の高齢化である。その労働年齢人口は毎年0.7%のスピードで減少しており、日本の女性の就業率は前任の幾代もの首相のたゆまぬ努力によって、大幅に改善(61%)されていて、アメリカの62%と大差がなくなっている。安部首相は前任者が何をしてきたか、冷静に考えるとよい。日本の女性の就業率をさらにドイツのレベル(68%)にまで引きあげ、若者が定職に就くのを助け、派遣社員の仕事への積極性をあげる方法を考えてみてほしい。次に、労働生産性の低さである。2012年にはアメリカの71%であった。これらすべてを変えたいのなら、年間成長2.5%を実現しなければならないが、今に至るまで安倍政権はスローガンだけで、実際の行動に出ていない。三番目に公共投資の非効率、個人や企業の貯蓄過剰である。これは日本が長期的に政府主導型の経済発展モデルをとってきたことによる、「強い政府、弱い社会」の必然的な結果であり、今日に至るまで徹底的な解決は見られない。しかしアベノミクスの公共投資拡大のやり方は、モルヒネを打たれた患者のように、しばらくは意識を回復するが、副作用はより大きい。このような簡単な道理が日本人には分からないはずがない。
国際的に見てみても、12月18日にFRS(連邦準備制度)は、国債と不動産の抵当債券購入量を毎月850億ドルから750億ドルに下げ、以後機会を選びながら次第にゼロに近づけ、量的金融緩和第3弾(QE3)を実質的に正式に市場から退出させるという発表を行った。G20が日本の流動性乱発のやり方を傍観やめるのも、時間の問題だろう。こうした国際的な背景のもとで、もともと問題の多かったアベノミクスは成功する見込みはない。
平和を愛する国際社会からすれば、さらに警戒しなくてはならないのは、アベノミクスが危険な結果をもたらす可能性である。第二次大戦のA級戦犯を祀る靖国神社を参拝したばかりの安倍首相は、公共投資拡大の名のもとに、ひそかに国防予算を増加させ続けている。この結果、次なる日本経済危機とデフレが発生すれば、それは国家が再び軍国主義に向かう前兆であり、1931年前後の日本が大不況から右翼の政権奪取、侵略に向かったのと同じ歴史が繰り返されるのかもしれない。
人民中国インターネット版 2013年12月30日
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