英国の小説『ハリー・ポッター』に登場するヴォルデモートが不死なのは、7つの分霊箱を作成したためだ。日本軍国主義をヴォルデモートに喩えるなら、靖国神社は間違いなくその分霊箱の1つであり、この国の魂の最も暗黒な一面を代表している――。中国の駐英大使は元旦に英国メディアに寄稿し、日本の安倍首相による「亡霊参拝」を痛烈に批判した。これに先立ち、中国の駐日大使も日本メディアに同様の寄稿をした。そしてこの2日間に中国外交部長(外相)はドイツ、ロシア、ベトナム、米国、韓国の外相と電話会談した。中国は「安倍を懲らしめる」国際世論戦の火蓋を切ったとの指摘が上がっている。環球時報が伝えた。
中国の劉暁明駐英大使は1日、英紙デイリー・テレグラフへの寄稿「中英は第2次大戦に共同で勝利した」で、日本軍国主義を批判。「靖国神社は第2次大戦のA級戦犯14人を祀っており、日本軍国主義の象徴となっている。日本の指導者による靖国神社参拝は日本の内政や個人の問題では断じてなく、中日関係、中韓関係のみの問題でもない。その本質は日本の指導者が軍国主義の対外侵略と植民地支配の歴史を正しく認識し、深く反省できるか否かだ。安倍氏のする事なす事は侵略の歴史を否定し、軍国主義を復活する危険な道へと日本を導きつつある」と警告した。また、歴史を振り返り「中英は第2次大戦の同盟国であり、両国軍民はかつて肩を並べて日本ファシズムを迎え撃った。歴史の成果を否定する安倍氏の行為を、平和を愛する世界の全ての正義のパワーは許すわけにいかない」とした。デイリー・テレグラフは論評で「中国の駐英大使は非常に生き生きとした表現で現代日本を形容し、その軍国主義を小説『ハリー・ポッター』の『なかなか死なない』ならず者『ヴォルデモート』の現実版と称した」と指摘した。
英紙ガーディアンはこの寄稿を転載した際「中国の大使が用いた『これは侵略と反侵略、正義と邪悪、光と闇という根本的是非に関わる問題だ』との表現は、中国人でさえずいぶん厳しいと感じる」と指摘した。
中国社会科学院日本研究所の楊伯江研究員は2日、環球時報の取材に「『ヴォルデモート』との言葉で日本軍国主義を形容し、『靖国神社』を軍国主義の魂としたのは適切だ。また、中国の大使は近く上映される英豪合作映画『The Railway Man』にも特に言及した。この映画は第2次大戦中に捕虜となった英国兵が日本軍の捕虜収容所でひどく苦しめられた悲惨な境遇を描いている。個人の物語を詰め込んだこうした語り口は、西側の社会環境では一層の感化力を持つ。中国の外交官が西側文化の物語を用いて中国の主張を語り、安倍氏を批判し、友人を得ようとしたのは良い試みだ」と指摘した。
安倍氏の「亡霊参拝」後間もなく、中国の程永華駐日大使は日本の毎日新聞への寄稿「『不戦の誓い』場所が違う」で「日本に自らの死生観、宗教観があるのはいいが、それを日本の指導者がA級戦犯を含むいわゆる『英霊』を参拝する理由にすることはできない。A級戦犯も死ねば、尊崇に値する『英霊』になるというのだろうか」と指摘した。台湾紙・蘋果日報は論説で「中国は安倍氏を懲らしめるため次々に外交連絡を取り始めた。中国の王毅外交部長(外相)はこのほどドイツ、ロシア、韓国、米国、ベトナムの外相と電話会談した」と指摘した。日本の産経新聞は「中国外相、各国外相と電話会談 日本包囲網の構築狙う」との見出しの記事で「各国との協議は中国側が要請し、安倍首相の靖国参拝をテーマとし、日本の孤立を印象づけるために中国が『対日共闘』を仕掛けた」と報じた。韓国紙・文化日報は「米中韓は安倍氏に対する外交的圧力を加速しつつある。韓国の朴槿恵大統領は2日、国連の潘基文事務総長と電話会談した。潘事務総長は安倍氏の靖国参拝に『失望を表明した』」と報じた。
安倍氏の亡霊参拝を中国メディアが集団で批判していることにも外国メディアは注目している。オーストラリアン紙は「中国政府系メディアは日本の戦犯がひざまずき投降する像を建立し、安倍首相その他日本の右翼高官をブラックリストに入れるよう政府に呼びかけた。中国外交部(外務省)報道官はその後、中国の指導者は安倍首相と対話しないとの姿勢を表明した」と報じた。ドイツ紙ベルリナー・ツァイトゥングは2日付で「安倍首相が中国の歓迎されざるリストに入れられるという事態は、中日関係史上初だ」と指摘した。ジャパンタイムズは「中国国営メディアは元旦も引き続き安倍首相への批判攻撃に全力を挙げ、歴史問題でドイツに学ぶよう促した」と報道。中国の一部メディアが、ドイツのブラント首相がワルシャワのユダヤ人墓地でひざまずく写真とメルケル首相がうなだれて強制収容所の犠牲者を追想する写真を掲載したことにも触れた。
日本テレビは2日、中国のこれまでにない強い抗議について、中国政府が自らの強硬姿勢を国内外に広く示し、強調したものと報じた。ドイツ国際メディア研究所の中国専門家は環球時報の取材に「防空識別圏から安倍氏の亡霊参拝まで、中日間の世論戦は一貫して激しい。国際社会は安倍氏の『亡霊参拝』を容認できない。中国政府はこの点を鋭く察した。安倍氏の歴史観に対する世論戦の火蓋はすでに切られた。これは中国が対外宣伝において主導的になり、一層の自信を示し始めたことを物語っている」と指摘した。
「人民網日本語版」2014年1月6日
|