CBDで自らのセンスを売る

 

 
 北京のCBDにある「建外SOHO」

 店の商品を整理する神さん

 神さんは休日にはオシャレな若者が集まる三里屯VILLAGEなどに出かけファッション動向を観察している

2012年11月、上海でメンズファッションの店「ZEAL」を経営する神俊貴さんは北京に2号店をオープンさせた。場所は北京の「中央商務区」(CBD)にある「建外SOHO」だ。ここは北京で最も国際化されたエリアで、それだけに地価も高く、彼の店舗の賃貸料は東京の原宿で店を持つのと変わらないほどだという。  

北京CBDは、西は東大橋路から東は東四環路、南は通恵河から北は朝陽北路に囲まれた一帯で、面積は7平方キロに及ぶ。このあたりにはかつてレンガを焼く窯があり、今も「大北窯」という地名が残っている。新中国成立後に北京第1工作機械工場がここに建てられ、北京でも重要な工業エリアとなった。1980年代末に国際貿易センター第1期部分が完成し、大北窯の工場群は次第にオフィスビル、高級ホテル、コンベンションセンターなど高層ビルに取って代わられ、地域の呼び名も「国貿CBD」に変わった。現在ではフォーブス500に名を連ねる世界的企業100社以上がここに立地しており、北京にある外資系企業の70%が集まっている。この他にも中国中央テレビ局、北京テレビ局など地元メディアのほかCNN、BBC、ロイター通信社など世界の著名メディアもこのエリアに拠点を構えている。

CBDは英語の「Central Business District」から来ているが、ユーモア好きな北京っ子はこれをもじって「China Beijing Dabeiyao(中国・北京・大北窯)」と笑う。ユーモア好きで大らかな北京人は、ファッションの面でも上海人とは好みが違う。神さんによると、上海人は繊細さや自らのこだわりを重視するが、北京人はより内容重視で細かな点にはこだわらない傾向があり、ファッションに対する要求も違っているという。「北京の人も洋服が好きですが、上海の人と違ってデザインよりもモノ、つまり品質の良いものを選ぼうとします。この点で東京人によく似ていますね」。彼の店に並ぶのは「Roen」「BACKBONE」「BLACKTOPMORTORCYCLE」など、北京の顧客のために彼自身が日本の最先端男性ファッションブランドから厳選したものばかりだ。  

中国にファッションの店をオープンした理由について、神さんは次のように語っている。「大学生の頃から、ファッション雑誌の編集部でアルバイトをするほどファッションが好きでした。今、中国は経済が急成長している割には服の選択肢がまだ少ないと感じて進出しました。日本にはショップがありすぎます。私はチャンスの多い中国で、日本のいいブランドを広めたいと考えたのです」  

しかし実際はこれら最先端のブランドは中国ではまだ知名度が低い上に値段も高いので、「ZEAL」はオープン当初から順風満帆というわけではなかった。1週間に1着も売れなかった時期もあり、神さんは宣伝のために思いつく限りの手立てを試みた。若者が集まるクラブに行って名刺を配ったり、ミニブログ(中国版ツイッター)で情報を発信したり、オンラインショッピングに参入するなどの努力を続けたことで次第に人気が高まり、今では常連客も増えた。日本人も多くいるエリアだが、彼の店の主要な顧客は地元の中国人だ。近くのオフィスビルで働いているビジネスマンが昼休みや退勤後に店を訪れる。彼らが気に入っているのは商品のスタイルと品質だ。  

「他の店のように、有名なブランドだから売るのではなくて、自分がいいと思ったものを売っています。いいものをそろえることが一番の宣伝になると信じてやっています」。神さんの経営理念は北京の若者の心をがっちりととらえつつある。

 

 

人民中国インターネット版 2014年

 

 
 

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