日本の地方自治体と中国の地方政府の絆を結ぶ機関である日本自治体国際化協会は、建国門駅にほど近いニューオータニ長富宮の長富宮オフィス棟に北京事務所を構えている。地方同士の交流が注目される今、北京事務所はどのような役割を果たしているのか。寺崎秀俊所長にうかがった。
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寺崎秀俊
1968年兵庫県生まれ。1991年東京大学法学部卒業、同年4月自治省入省、2000年4月鹿児島県財政課長、2007年7月総務省自治税務企画官、2008年7月総務省大臣官房広報室長、2009年4月熊本市副市長、2013年6月より現職 |
――中日で地方対地方の交流が進む中、こうした機関が北京に拠点を持つ意義に変化はありますか。
日本自治体国際化協会は世界各地に事務所を持っており、日本の各地域の国際化をミッションにしている日本の地方政府の協同組織です。中国と日本は一衣帯水の近しい関係にあり、地方政府同士には古い交流の歴史があります。それをよりいっそう深めるために、1997年に北京に事務所を設けました。当協会はある意味で政府関係機関ですから、中国の政治や経済の中心となっている北京に事務所を開設したことには大きな意味があります。また、日本の地方自治体は上海に事務所を設置しているところが多く、北京にはあまり拠点が多くありません。中国の本来の情報を得るには、北京に自治体の共同拠点があるのは非常に意義があると思います。
――北京事務所はどのような役割を果たしていますか。
日本自治体国際化協会は総合的な窓口機関です。日本の地方自治体に関する情報はすべてここにあるというような感じで、情報提供や仲介の役割を果たしています。北京事務所は年に1度、日中の地域間交流セミナーを開催しています。日本と中国の地方政府がそれぞれの知識や経験を交換し合い、新たな出会いが生まれる場です。今年は浙江省の義烏で開催しました。その際、中国の人は、日本の知識や経験を中国の発展にどのように生かすことができるか、どうしたら日本からの投資がもっと中国に向けられるかなどに関心があるようでした。それぞれの地方同士が顔を合わせて仲良くなることで、チャンネルが広がり、新たなチャンスが生まれます。これはお互いにとって有意義なことだと思います。
――最近の中日地方同士の交流状況はいかがですか。
2012年9月から、さまざまな交流イベントが中止または延期され、日本側だけでなく、中国側もがっかりしているという話を聞きました。地方政府同士は長年の交流の歴史を持っており、国と国の関係が難しい時こそ、地方政府同士が仲良くして、交流のチャンネルをつないでいくことが重要です。地方同士は仲良くすればするほど利益が生まれます。そういう意味では私たちの役割は大きく、期待度も高いと思っています。例えば、北九州市と大連市との間で環境問題についての交流が展開されています。北九州市ではかつて公害が大きな問題となりましたが、さまざまな努力を通じてそれを克服しました。その経験を大連市に提供するという技術協力レベルでの交流が進んでいるのです。それに伴って市民同士の交流も深まっています。また、日本の地方が中国に期待しているのは、たくさんの中国人に魅力的な日本の地方へ来ていただきたいということです。
――ご自身が北京で生活されてみて、何かお気づきになることはありますか。
以前、ニューヨークに勤務したことがありますが、人種のるつぼと言われるニューヨークと比べると、北京は顔立ちも日本人と似た人が多くてホッとします。そして、何よりも安全です。ニューヨークでは、暗い道は絶対に歩かない方がいいと言われて、夜はあまり出歩かなかったのですが、北京ではその心配はありません。北京ではバスに乗ってあちこちに出かけるのが大好きです。私は中国の歴史に興味を持っており、故宮や頤和園などで長い歴史を感じることができるのは大きな喜びです。また、北京では至る所に英語の案内があるので、中国語がまだできない私にもとても便利です。外国人がその国の人とあまり変わりなく、安心して生活できることが国際化の基準だとしたら、北京の国際化はとても進んでいると思います。 |