「中紀委」が先頭に立って

張雪=文

 中紀委(中国共産党中央紀律検査委員会)は、中華人民共和国監察部と合同で事に当たる、千人余りの人員と27の職能部門を持つ組織だ。主な任務は省・部級の高官を対象に腐敗した「トラ」を探し出すこと。省・部級の高官とは国家各部や委員会、局の正副部長(主任、局長を含む)、各省・自治区・直轄市の正副書記、省長(直轄市の場合は市長)、地方人民代表大会主任および副主任、地方政治協商会議主席および副主席を指す。

 1927年、成立間もない中国共産党は党員隊伍の革命性と清廉性を守るため、武漢で開いた第5回党大会の席上、初めて選挙によって中央監察委員会を成立させ、主に党員の紀律違反問題調査・処置を受け持たせた。その後の数十年間にこの機関は何度も名称や組織変更を経たが、職能が変わることはなかった。1978年に行われた第11期3中全会において、「党中央紀律検査委員会」となり、党中央が等級の高い党員・幹部の腐敗問題を処理する「鋭利な剣」となった。

権限は小さく

 「トラ狩り」を専門とすると聞くと、中紀委は大きな権限を有するように感じるかもしれないが、実際のところそれは人々の想像するほど強大なものではない。例えば、処罰手段については、主な党紀処分としては「警告」「厳重警告」「党内職務の罷免」「党籍保留で観察」「除名」となっている。規定に照らすと、中紀委は腐敗した高官に対して法律を執行することはできず、法の執行は公安や検察部門の職責となっている。中紀委には腐敗官僚に対して司法裁判を行う権力を有しないが、党の最高監察機関として問題の徹底調査を行うという、腐敗官僚を震え上がらせる力を持っている。  このため、等級がどれだけ高い党員・幹部でも、いったん中紀委の調査で党紀違反が明らかになった場合は、すぐに相応の処分を受ける。この数年間の重大な腐敗高官摘発は、ほとんどがこの機関がまず調査・処置を行ったものだ。

視界は大きく

 中紀委の公式サイトによると、同委の27部門中、調査関連部門が10を占めている。そのうち第1から第4監察室はもっぱら中央各部・委員会の副部長級以上の幹部事案を扱っている。例えば、昨年の国家エネルギー局劉鉄男元局長の事案は第1監察室が担当した。第5から第10監察室はそれぞれ34の省・自治区・直轄市の副省長級以上の高官を扱っている。このうち第10監察室は内蒙古自治区の統一戦線工作部部長の重大な党紀違反事案を担当した。

 一昨年年11月の新中央指導部発足以来、中紀委は前後2度にわたって巡視チームを派遣し、20の省・自治区・直轄市、政府各部・委員会、政府監督管理の国有企業、大学に対して腐敗調査を実施した。昨年11月の3中全会では、中紀委による中央級の党および国家機関への検査機関の派遣駐在を全面的に実施するよう決定した。派遣駐在機関は中紀委が統一的に指導し、機関の責任者の多くは中紀委員となっており、メカニズム上からこの機関が調査を実施する過程で派遣先組織の干渉を受けないようになっている。巡視チームの巡視と駐在機関の整備によって、中紀委の腐敗一掃に対する視野は全国をフルカバーしていると言える。

 中紀委の張軍副書記は次のように話している。「全面的なカバーと不断の巡視を通じて、問題ある人物には逃げ切る希望を少しも持たせず、腐敗分子には身の置き場を残さないようにするのです」

 中紀委の具体的な事案処理のプロセスは対外的に公開されておらず、中紀委がどのように業務を進めているかは謎だった。昨年3月、中紀委は公式サイトで事案処理の流れを公開した。それは主に受理、初期的事実確認、立件、調査、移送審理の5段階から成っている。

調査は明快に

 現在、中紀委の事案の手がかりは主に投書・陳情による告発、司法や財務監査機関による発見、中央指導部の指示、中央巡視チームによる発見、省級の紀律検査委員会による報告などのルートから得られている。民衆による監督・告発の権力を確保するために、昨年に中紀委は公式サイトに一般からの告発がしやすい、専門の「私は告発する」というページを設置した。このページでは、運用開始から20日間で平均2分間に1通の割合で告発メールが届いたという。

 中紀委は各事案の手がかりについてすべて「初期的事実確認」を行い、告発が事実でない場合は告発された者が所属する組織の党組織に事情を説明する。問題はあるが情状が軽微で法律に触れていない場合は関係党組織に党紀に照らして適切な処置を取るよう意見する。情状が重大な場合は必ず立件し調査を開始する。  調査によって、当該人物に党紀違反のみならず法律違反があることが明らかになれば、党内処分の後、中紀委は事案を司法機関に引き渡して法律に基づいた審理に委ねる。この時、この件についての中紀委の職責履行は終了となる。

 

 

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