「労教」を廃止し法治推進 | ||
沈暁寧=文 昨年12月28日、全国人民代表大会常務委員会は「労働・教育・訓練制度(労教制度)」の廃止を正式決定した。この決定に基づき、「労教」執行中の人々に対して、労働・教育を解除し、残余期間の執行を停止した。58年間にわたって執行されてきた「労教制度」の歴史に幕を下ろした。この決定は中国の人権擁護、法治に対して積極的な意義を持つ。 「人治」による不公平処罰 中国政法大学刑事司法学院の曲新久院長は「労教制度の廃止は中国の法制整備において象徴的な里程標だ」と高く評価している。この決定が専門家から評価されているのは、中国の司法改革が人権擁護、法律尊重、国際社会のルールに則った道を歩んでいることを証明しているからだろう。 中国特有の「労教制度」は過去半世紀、賭博、詐欺、麻薬、暴行、売買春等の裁判にかけるほどではない違法行為を犯した人々を矯正し、社会復帰させてきた点で、治安維持の観点から有効な役割を果たしてきたと言えよう。しかし、「労教制度」は法律行為ではなく一種の行政罰だった。具体的な執行例を見ると、公安機関は裁判所の判決を経ずに、該当者を閉鎖された「労働教育施設」に送り、最長4年間、人身の自由を奪い、強制労働、思想教育等の措置を講ずることができた。この一点だけ取り上げても、「中華人民共和国憲法」が定めている法律的な決定を経ずに、国民の人身の自由は侵害されないという規定に適合していない。また、長期間にわたるこの制度の執行中には、誤った判断に基づき、該当者の権利を侵害したケースもあった。つまり、この制度は創設の初志は良かったが、法律的な裏付けのない人身の自由制限には、明らかに「違憲」の疑いがあり、「人治」の不公平が存在した。
1998年、中国は国連の「市民的・政治的権利に関する国際規約」に調印し、人身の自由権擁護において国際社会と次第にコンセンサスを持つに至り、2005年には日本の軽犯罪法に類似した「治安管理処罰法」が施行され、軽微な違法行為も法律的な根拠によって処罰されるようになり、「労教制度」の存在価値は次第に社会的に疑問視されるようになってきた。ここ数年、学者、専門家から全国・各地人民代表、司法界人士に至るまで、日増しにこの時代遅れの制度廃止をアピールする声が高まっていた。 2012年の中国共産党第18回全国代表大会(党大会)以降、司法制度改革の推進が提起され、「法治中国」実現が加速された。法に基づく事務処理が行政面だけでなく、社会生活面でも次第にその色彩を濃厚にしてきた。こうした背景の下で、「法治精神」にふさわしくない制度、手法は次第に廃止されるか改められている。そうしたことから「労教制度」廃止の機運も高まってきていた。 昨年11月、党第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)は「改革の深化についての若干の重大問題に関する党中央の決定」で、「労働教養制度の廃止、違法犯罪行為の処罰と矯正に関する法制整備、健全なコミュニティー矯正制度の確立」を提起した。1カ月後、全国300カ所余の労教施設はそれぞれ麻薬中毒患者施設、刑務所に転用され、収容されていた人々は全員釈放された。この制度はこの時から中国の社会発展史に残るひとつの記憶となった。 中華全国弁護士協会の朱征夫副会長は「この制度廃止は法治の勝利であり、人権と憲法尊重の擁護だ。これは民意に応えただけでなく、『法治中国』に対する期待を抱かせた」との認識を示した。
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