李克強総理の記者会見が示す11の新しいシグナル

 

李克強総理が3月13日に開いた記者会見は、2014年の両会(全国人民代表大会、全国政治協商会議)にピリオドを打った。中国人民大学重陽金融研究院「両会改革措置追跡」課題チームは約2時間に渡る記者会見の内容を真っ先にまとめ、李総理が示した新しい11のシグナルを列挙した。

(一)「昨年は経済成長率低下の圧力に直面したが、中央政府は大胆に債務の全面的な監査を進め、融資プラットフォームおよび予算管理の規範化に取り組んだ」全国地方政府債務は11億元弱に達した。そのうちの多くが、市政建設、土地の買い上げ、交通輸送、保障性住宅、教育・科学・文化・衛生、農業・林業・水利、生態建設などに用いられる投資性プロジェクトの融資プラットフォームの債務で、中国の経済運行に影響する「債務の奔流」を形成した。李総理は「規範化」に何度も言及したが、2014年は分類管理とケース・バイ・ケースの流れが明らかになり、一部の融資プラットフォームは「黒字化」を実現する見通しだ。

(二)「周辺諸国とは摩擦が生じることもあるが、我々は互いに尊重し合い、ずれをコントロールし、ウィンウィンの関係を構築すれば、耳障りな雑音ではなく調和的なハーモニーが奏でられるはずだ」中国は周辺環境が世界で最も複雑な国であり、世界の70億人の人口のうち40億人が中国の周辺に集中している。隣国との摩擦は避けられないが、同じ地域に暮らしているという事実は変えられない。ウィンウィンによる共同発展が、主な方針となる。ゆえに周辺諸国との外交を巡るずれについては、コントロールを強調し、共同繁栄が大局になる。

(三)「権力リスト」の公表の推進を加速する。政府による今年の汚職撲滅の重要な活動は、各級政府に対する権力リスト制度の施行の催促だ。行政の簡素化と権力の移譲により市場の活力を刺激し、原動力と社会の創造力を強化する。この点から見ると、2014年の行政体制の改革はさらに加速されるはずだ。国有資産の改革、土地使用権譲渡料、採掘権の譲渡といった全面的な監査にも、一連の制度的措置が増えることになる。

(四)「さまざまな目標の中の安定成長」李総理のこの表現は、13億人の人口を持つ中国において、政府が雇用確保、国民生活の改善、構造調整などの短期的な目標の他に、「二つの百年」などの長期的な目標といった数多くの目標に直面していることを示した。さまざまな目標の中でいかに安定成長を実現するか、これは政治の知恵と対応力の試練となる。中国はさまざまな目標を実現し、さらに安定成長を確保するという制限的な条件の中、「合理的な運行範囲」という管理システムを模索した。これはマクロ経済管理の重大な革新であり、世界の経済成長に多大な貢献を成し遂げた。

(五)「主要経済体は成長と雇用をより重視する」李総理は記者会見で、G20が成長と雇用を結びつけたことについて触れた。中国の政策における「古いありふれた話」が、世界の主要経済体が新しく取り上げる重要な実例になった。中国は工業化と都市化を進めてきたが、その過程において雇用増が成長によって示された。G7の経済は仮想化されており、成長と雇用の関係が弱まり続けている。G20が成長と雇用を結びつけたのは、投資拡大を提唱するシグナルだ。投資による経済成長の牽引は、中国政府の昔の行為から世界の流れに変化した。

(六)「行政の簡素化、権力の移譲」が再び強調された。政府と市場の関係において、市場の積極性が拡大されている。これはただ単に政府が手を引いたからではなく、市場拡大の効果でもある。政府と市場の関係を適切に処理する上で重要になるのは法治で、法的に禁止されていないことを企業に許可し、法的に許可されていないことに政府が干渉できなくすることで、中国経済に新しい原動力を注ぐ。

(七)「香港の国際金融・貿易・水運センターとしての地位の維持と向上を支持する」香港は最大の人民元オフショアセンターだ。中国の海外進出の過程において、香港の世界金融システムにおける地位は強化の機会を得る。香港が中国大陸に対する「求心力」と安定成長を維持すれば、中国経済が国際化に向かい発展するという歴史の歩みの中で、より大きな力を発揮できるだろう。

(八)「牛の鼻を引っ張る改革」これまでの「一本の髪の毛を引っ張り全身を動かす改革」という表現と比べ、李総理の今回の表現には微妙なニュアンスの違いがある。「一本の髪の毛を引っ張り全身を動かす」過程において、「全身」は受動的で、「一本の髪の毛を引く」ことで刺激の効果が発揮される。「牛の鼻を引っ張る」という表現の場合、牛はそもそも前進するはずなので、その鼻を引張るのはペース調整のためだ。「水の流れて行く所には自然に溝ができる」という改革の表現と比べ、「牛の鼻」は「発展の流れに順応する中、政府はリズムを調整しなければならない」という意味を示している。

(九)「1億ドル毎時の取引が生じる中米関係を推進」李総理は中米関係について、「知者は同を求め、愚者は異を求める。広き所を選んで進み、長期的な利益を求める」と表現した。中国の外交の知恵は、囲碁によって例えられる。共存共栄し、それぞれ自らの生存空間を求める。数によって勝敗を決めなければ、ゲームを長く続けられる。これは中国と西側諸国の外交哲学の異なる点であり、中国の知恵が示される点でもある。

(十)「鉄腕を振るい汚れを撲滅する」、「鉄の規則で汚れを撲滅する」李総理は記者会見で、「鉄腕を振るい汚れを撲滅する」という新しい表現を使った。これは汚職役人を取り締まる他に、大気汚染に宣戦布告する決意を示している。

(十一)「中国製設備」の品質承諾は、メディアの監督を受けなければならない。政府活動報告は、「中国の製造業の世界的な分業における地位を高め、通信、鉄道、発電所などのプラント輸出を奨励し、中国製設備の世界的な名声を高める」とした。中国の経済はアップグレードが必要で、輸出商品もアップグレードしなければならない。ハイエンド製品、特にプラントは品質に対して最も厳しい要求を突きつける。中国はハイエンド市場の競争者の仲間入りを果たしたばかりで、名声を得ることが極めて重要だ。李総理の、中国製設備の品質は監督を受けるという承諾は、産業アップグレードおよび海外進出を実現するという中国の決意を呼びかけた。

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2014年3月13日

 

 

 
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850