急がれるリスク管理向上

 

 

問題処理でも大きな違い

「いかなる経済活動にもリスクは伴う。対外投資は現地の政治、経済、文化環境の相違などの影響を受け、リスクは大変多い。しかも大部分は法律上のリスクに変わる」―中国人民大学跨国(国際)商事法律研究所の銭衛清所長はこのように総括している。

中国鉄道建築総公司傘下の上場会社・中国鉄建がサウジアラビアで受注した軽量軌道(ライトレール)プロジェクトがその一例だ。2009年、サウジ側と軽軌道建設協定に調印した。施工の途中で、実際の工事量が協定に調印した当時に比べて大幅に増加した。協定には詳細な工事量は明記されていなかった。そのため、その後もサウジ側は工事量の増加を主張し、甚だしい場合は新たな機能の追加も要求した。中国側はこのプロジェクトを継続しないわけにはいかず、最終的に41億元(当時1元は約14円)という巨額の損失を被った。

業界では「リスク防衛の欠陥によって、中国建築企業が海外プロジェクトで被った最大の損失」と評された。中国外運公司総法律顧問の高衛氏は次のように注意を喚起している。「著名なグローバル企業は対外投資をする際に、通常は法律を先行させ、法律上の保護が『パイオニア』の役を演じることは欠かせないステップだ。国内の多くの企業は対外投資をする場合、投資を先に決めて、法律サービスは添え物、お供、脇役に過ぎない」

中国企業は多数の投資先国の労働者を雇用し、彼らにより多くの就職のチャンスとともに技術も提供(東方IC)

彼はさらに次のように指摘した。「中国企業は考え方を変えるべきだ。積極的に外国の法律環境と制度に順応しなければならない。外国の法律サービスは中国に比べて健全であり、細部にわたって専門的だが、各種法律の条文は煩瑣で複雑だ。数十ページ、中には100ページ以上のこともある。一方、中国企業は簡単な契約に慣れており、大プロジェクトの契約でもわずか数ページで済ませてしまう。またグローバル企業間で問題が起きた場合、外国企業は国際的な仲裁を求めるが、中国企業の場合は習慣的に訴訟を起こす。このように問題処理の手法も大違いだ。中国企業が世界と早急に融合しようと思うならば、習慣の違いに順応しなければならない」

行政サービス向上に期待

昨年の中国の対外投資は600億ユーロで、世界3大投資国の一つとなり、投資先は全世界に及んだ。しかし、中国政府の対外投資企業に対する行政サービスは日々その規模が拡大しスピードを上げている対外投資の現状に明らかに遅れをとっている。

批判が集中しているのは、企業の類型、投資額の大小によって審査・認可の権限が分かれている現行の対外投資審査・認可制度だ。商務部(部は日本の省に相当)、国家発展改革委員会、国家外貨管理局、国有資産監督管理委員会、さらに地方政府の関連部門がそれぞれ審査・認可権限を行使しているのが現状だ。このため、監督、管理事務量のむだと審査・認可の煩瑣・非効率を招いている。

この他、2011年のリビア動乱は中国の対外投資企業に対する保険の不備を露呈させた。当時、中国がリビヤで請け負っていた大型プロジェクトは約50件で、契約額は188億㌦に及んでいたが、保険のカバー率は契約金額のわずか5・68%に過ぎなかった。そのため、動乱で損害を被った企業は4億元足らずの保険金を支払われただけだった。

中国の対外直接投資の多くが政治的リスクの高い地域に集中しているが、中国が加入している「多角的投資担保機構公約」は、政治的リスクに対して担保しているが、かなり限定的だ。

李克強総理は5月8日のアンゴラ訪問時に「中国企業と中国公民の海外における合法的権益を適切に擁護するのは、開放拡大の当然の要求であり、また党と政府が果たすべき責任である。われわれは領事関連の保護業務に力を入れ、海外領事による保護を強化したい。早急にグローバルな領事保護業務応急センターを設立し、同胞がどこにいようとも、そこに保護サービスが及ぶようにする。皆さんの安全安心はわれわれの最大の関心事である」と語った。

 

人民中国インターネット版

 

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