海外発展に必要な人材を

万季飛前中国国際貿易促進委員会会長に聞く

 

張雪=聞き手

 中国企業が「走出去戦略」のペースを加速するにつれ、対外投資が中国経済の発展に果たす役割は日増しに顕著になり、それとともに、グローバルな協力によるリスクも不可避的に増えている。中国企業が国境を越えて発展する中で、いかにしてグローバル化の能力を向上させ、リスクを効率よく解消するかが、極めて重要な課題となっている。この問題について、万季飛中国国際貿易促進会前会長にうかがった。

2012年8月、「中国対外投資企業のシンクタンク」と呼ばれる「中国対外投資基金」が設立された。この類のコンサルティング、サービス機構は中国で増えている(新華社)

 ――中国が対外投資を拡大する理由は何でしょうか?また対外投資によってどんなチャンスがもたらされますか。

 万季飛氏 まず、中国製品は海外発展が必要だということです。多くの中国製品が国内で激しく競争しているだけでなく、国際貿易摩擦も増えています。このような事情から、中国はもっと海外に発展する必要があり、国外に出て行って工場を建設しなければなりません。もう一つの理由は、中国の外貨準備がますます増えて、投資に当てる資金が十分あることです。現在、中国の対外投資は非常に大きくなっています。例えば、高速道路、水力発電所の建設や住宅地の造成などを含めた投資プロジェクトがあり、将来的には高速鉄道への投資もあるでしょう。ここ数年、中国は数多くの海外有名ブランドやハイテク企業などを買収・合併していますが、昔は全く想像できないことであり、中国の対外投資の勢いはますます強まっています。

 ――中国の外貨準備はどんどん増え、対外投資の規模も日増しに拡大していますが、これは中国の外資導入政策が変わったということでしょうか?

 万 外資導入は依然として必要です。ただ、現在求めているのは、量ではなく、質です。いま中国が最も必要としている外資のジャンルはハイテクであり、もう一つは中国経済の弱点をカバーするジャンルです。外資を導入する際には、取捨選択を考えなければなりませんし、技術力の高いものを取り入れ、また、環境汚染をもたらすジャンルは決して受け入れません。

 ――少し前から、中国石油天然ガス集団公司、中国五鉱集団公司、中糧集団有限公司、ファーウェイ技術有限公司などの企業による海外での買収・合併がしばしば拒否され、一部の工事請け負い企業も、特に中東、北アフリカでは政治的混乱の影響で、巨額の損失を出しています。このようなリスクを解消するために、中国企業はどうすればいいのでしょうか?

 万 中国による対外投資のリスクは、さまざまな要素があります。例えば、法律上の障壁があり、市場リスクがあり、また対象国の誤った対中認識などが挙げられます。もちろん、政治的要因も含みます。これは、われわれに課せられた宿題と言えますね。中国の投資は脅威ではなく、チャンスだと丁寧に説明し、中国脅威論を払拭する努力を重ねなければなりません。また、中国側は投資する際に、投資先の住民のメンタル面にも配慮しなければなりません。例えば、アフリカや南米で水力発電所に投資した際、誤解されたことがあります。われわれは実際の行動をもって、投資先の信頼を獲得すべきです。また、投資先のエコ保護に気を配りつつ、現地経済の持続可能な発展に配慮しなければなりません。

 ――中国の一部企業はグローバルなM&Aに着手した最初の頃、損失を出したという問題ですが、これは、中国企業がグローバル化能力の面において何か不足していたのでしょうか?

 万 そう理解していいでしょうね。中国企業は海外拡張を盲目的に急ぐべきではないと思いますね。中国企業がグローバル化にふさわしい経験を積んだ人材を欠いているのは確かなことです。言語能力がある人材だけではだめで、グローバルな経営管理経験を持つ人材が必要ですが、中国ではそのような人材は、確かに足りませんね。そうした人材が足りないことによって、中国の大多数のグローバル企業は、いまだにしっかりとしたグローバルな経営意識を備えていません。またグローバル企業としての運営メカニズムを欠いていますから、一部の企業は、投資を行う際に、科学的な評価ができず、また基本的なリスク管理もできないのです。人材の育成は経験の積み重ねと実践的な訓練の過程を経なければならず、大量のグローバルな視野を持つ人材を育成してはじめて、投資に伴うリスクを効率的に解消できるはずです。

 ――日本には、グローバル化に成功した企業がたくさんありますね。日本の成功体験は、中国にとって、どのような面で参考になりますか?

 万 実は、日本は国内的な経済問題をたくさん抱えていたため、海外で行った数多くの投資プロジェクトは日本経済の発展を支えるためであり、日本経済は海外において、実力を発揮してきました。さらに、日本政府は企業の対外投資に対し、政策的な支援を行い、また、企業の資質も高く、投資を行う際のフィージビリティースタディーは詳細で、市場リスクを防ぐ能力が高く、市場運営手段もわれわれよりも進んでいます。日本は対外投資に着手したのが早いので、蓄積してきた経験が豊富で、多くの面で日本から学ぶべきことがあります。

 

万季飛  

1948年10月生まれ。2003年5月から今年3月まで、中国国際貿易促進委員会会長と中国国際商会会長。現在、第11期中国人民政治協商会議全国委員会常務委員。

 

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