効果は日本経済振興にも

 

中国社会科学院日本研究所 所長補佐・張季風=文

欧州に直結する陸上交通

 「シルクロード経済ベルト」は日本に直接または間接的に積極的な影響を与える。日本は外向経済型国家であり、現在最大の貿易パートナーは中国、続いて、米国、韓国、欧州だ。そのうち、米国、韓国、欧州の市場はほぼ飽和状態に近く、日本がこれらの国々でさらに市場シェアを拡大しようとしても、開発可能なスペースは限られている。しかし、中央アジア、西アジアと東アジアは日本にとって「未開発地」であり、開発スペースはかなり大きく、「シルクロード経済ベルト構想」は日本にとっていい契機である。もし中国が「シルクロード経済ベルト」を開通すれば、日本経済もこの路線を利用し、ユーラシアの内陸部に進出でき、同地域における経済発展の利益を分かち合えることになる。

さらに長い目で見れば、これから30年、50年、ひいてはさらに長い将来、政治問題を適切に解決することを前提に、日本は、橋を架けたり、海底トンネルを掘削するなどの技術を十分生かして、対馬海峡から朝鮮半島へつなぎ、中国でユーラシア鉄道と接続する。そうなれば、日本と欧州を直結する陸上交通ができ、日本経済の発展にとって非常に大きな戦略的利益がもたらされるだろう。

一方、「海上シルクロード」は古代から中日間にのみならず、欧州大陸との貿易発展、関係構築の重要なルートだった。この海上貿易通路は今でも中日のビジネスや貿易関係において大きな役割を果たしている。また、現在、日本はアフリカ市場の開拓事業を始めているが、「21世紀海上シルクロード」は西に向かい、アフリカに到達するので、その東端にある日本がこの貿易ルートの建設に参与できれば、日本経済により多くの利益をもたらす。

オールウインのモデルに

現在、世界における経済協力はゼロサムの戦いではなく、ウインウインまたはオールウインを追求している。中国の経済が発展し、他国との貿易額の増加は、日本にも積極的な影響を及ぼす。中国の経済が不況になれば、日本経済にも激しい衝撃を与える。そのため、今日、日本経済を予測する時、参考にしなければならないのは、まず米国経済であり、次に中国経済である。中国経済は日本経済の発展にとって無視できない要素である。

日本は今後10年、名目GDP3%、実質GDP2%の成長目標を掲げているが、国内市場だけによって、この目標達成は難しいだろう。達成できなければ、高齢化や財政危機など多くの社会問題は解決できなくなる。最近、日本は消費税率を引き上げたため物価が上昇し、これで名目GDPの目標を実現可能にしているが、大切なのは実質GDPの成長だ。給料が上がらなければ、内需拡大だけによって実質GDPをけん引するのは無理だ。そこで、日本は海外市場の成長に頼り、経済発展の目標を達成させなければならないわけだ。

そういう場合に、中国経済と「シルクロード経済ベルト」「21世紀海上シルクロード」は日本経済の頼りになる要素になるだろう。例えば、中国が中央アジア・西アジアに輸出する商品の中に、一部のハイエンド部品やコア技術が日本のものであれば、日本経済は中国輸出貿易によって、日本の技術、中国の企業とアフリカ・中央アジア・西アジア・南アジア・東欧の市場という三角貿易が形成する。したがって日本は実際の利益を得るとともに、日本技術の世界における市場を拡大することができる。

中国を新たな後方基地に

日本経済の海外進出は、まず台湾、香港、シンガポール、マレーシアに対する投資から始まった。中国大陸への投資に携わった日本のメーカー、商社の人員の多くは上述した海外基地からやって来た。今後、日本がアフリカ、中央・西アジアに向けた投資を行う際には、間違いなく中国を後方基地とし、中国で勤務している人員を振り向けるだろう。日本本土でそうした人員を調達するより経済的だからだ。例えば、北京パナソニック、広州ホンダ、一汽トヨタ、東風ニッサンなどのような輸出の形を取れば、人材の育成、技術の開発および物資の流通などにおいて、中国は日本経済の海外進出の新たな安定的で確かな後方になり得る。

現在、日本の対中投資は徘徊期に差し掛かっている。2011年の対中投資は前年同期比50%増だったが、12年は16・3%に下がり、昨年はマイナス4・2%。今年1〜4月期は下落が続きマイナス42・1%になった。こうした不調の主な理由は中国の労働力コストの上昇と中日間の政治関係に現れている複雑な局面が招いている事態だ。

さて、「シルクロード経済ベルト」は日本企業の対中投資に新たなチャンスを作り出している。中国西部地区の労働力コストは東南沿海地区に比べてかなり安いことが分かっている。西部地区は、もし、インフラが整備され、ユーラシア内陸部の市場が健全に発展すれば、この地区の投資環境は1980年代、90年代の東南沿海地区と同じように魅力に満ちたものになろう。日本企業は東南アジア諸国に対する投資に力を入れているが、現状が証明しているように、投資対象国の政局が安定しているか否か、社会が安定しているか否か、インフラが整備されているか否か、要員のレベルはどうかなど要素を総合的に考慮すると、最良の投資対象は中国だ。

ここで、日本政府が長期的な視点と戦略的な知恵を持ち合わせていれば、日本の将来的な発展は中国との相互協力から離れられないことに着目しなければならない。中国が持っている巨大な潜在力と活力を持つ市場に依拠し、中国と手を携えて東アジアの地域経済を手際よく運営し、さらに「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海上シルクロード」に沿って、日本の海外投資を拡大すれば、これこそ日本経済を本格的に振興させる賢明な策である。

 

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