中日関係の行方

李森(大連外国語大学)

 

「その時の朝顔、もう一度返り咲けるのか。」

私はドキュメンタリー「光の下の戦犯」(鳳凰テレビ 2014年8月放映)の中に出てくるこの言葉を思い出して、ため息をついてしまった。1956年、中国人民の寛大さによって許された元「関東軍」の戦犯たちが、日本に帰国する時に中国人民から朝顔の種が贈られた。見送りに来た撫順戦犯管理所の金源所長は「今度中国に来るときには、武器でなく、平和のしるしとしてこの朝顔を持ってきてください」

と彼らに話した。そしてこの時に帰国した兵士たちは後に約束を果たし、中日友好のかけ橋となり、この「朝顔」も確かに一度中日の間で美しく咲いたことがあったのだ。

ところが、現在、中日政府は様々な問題を巡って非難し合うことを繰り返し、すでに両国関係は21世紀に入ってから最悪の状態に陥っている。例えば今年8月に両国の戦闘機が至近距離に接近した事件などからも、両国関係の悪化がはっきりと分かる。共に東アジアで栄えてきた中国と日本だが、関係の行方は前向きではなく、冷え込む一方で、まさしく「氷」の時期に戻ってしまったと言われている。1972年に両国の国交が回復し、友好的で信頼が強かった頃と比べると、今はやはり何か大切なものが足りないと私は考えている。

周恩来総理は中国に拘束された戦犯の処置に関する指示で次のように述べた。

「日本の戦犯たちを厳しく罰して、中日両国の人民の心の奥に互いへの恨みを残すべきではない。彼らが戦争中に犯した罪を寛大に扱い、中日友好の花の種を蒔くべきである。」

これは「やられたらやり返す」という精神ではなく、「徳を以って、怨みに報いる」すなわち戦犯たちの行為に対して恨みではなく徳、寛大さで答えるというものだ。その後、起訴されずに済み、中国政府に釈放された元日本軍の戦犯たちは中日友好の道に踏み出し、「中国帰還者連合」という組織を作り、中日両国の国交回復にも力を注いだのだ。

以上述べたように、これらは全て周恩来総理をはじめとする中国の指導者たちの両国関係の未来のことを考慮した知恵がもたらしたものだ。中国語には「高屋建瓴」ということわざがある。「高い屋根の上に立って瓶の中に水を灌ぐ」というこの言葉の意味は「より一層高いところから、長い目で物事を処理すること」ということだ。このような「高屋建瓴」の視点に立ち未来の両国の人民の平和と共存を願う知恵は中日両国のリーダーたちにとっては欠かせないもののはずである。「高屋建瓴」の視点で、中日友好の道に踏み出せば、「一衣帯水」の中日両国の間に明るい未来が期待され、後世に幸福をもたらすことができるのではないだろうか。そして、お互いの間に信頼感が生みだされ、長年の間続いた恨みも消すことができると私は思うのである。

中国政府は新しい中米関係を築き、平和かつ穏やかなアジア地域の秩序を作り上げるために、「細かい所に拘らず、一島一地の紛争が国際社会全体に影響を及ぼさないよう両国関係を築く」という対米外交政策を打ち出している。この政策も中日の間の溝を埋めることに活用できるのではないだろうか。国土の領有権を巡る問題は適切な形で慎重に検討する中で、争いによらず解決すべきだ。一方、日本側も中国の発展を恐れる必要は全くないと私は考えている。日本の友人たちに、中国の速やかな進歩が中日双方に利益をもたらすということをきちんと理解してもらえれば本当に嬉しいと思う。

私は中日関係の行方は明るいのだと信じでいる。あの「平和の朝顔」が返り咲いてくれることを心の底から願っている。最近聴いた歌の中の中のこんな言葉がふと私の頭をよぎった。

「明日また晴れるかな、遥か空の下。」

 

人民中国インターネット版 2014年12月

 

 
人民中国インターネット版

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850