中日関係の行方 ―氷河期の希望

鄭致遠(安徽大学)

 

 海が荒れ波高く、およそ千年以上の昔、小さな船は中国と日本の間のこの荒海を何度も渡った。恐ろしい自然の力の前に、命を惜しむこともなく、ただ新しい知識と真実を求めるために、彼らは未知なる世界へ旅立った。彼らの努力のおかげで、文化の交流という絆が中国と日本を結び付けた。これがまさに、中国と日本との関係の始まりであった。そして、今、彼らは「遣隋使」や「遣唐使」という身分で歴史書に刻まれ、世間に尊敬されている。

 遠い昔から、中国と日本との関係は絶えることはなかった。両国の関係はよく「一衣帯水」という言葉を以て形容されている。この中には遣隋・遣唐使のような文化交流という積極的な面もあれば、戦争という不幸な面もある。しかし、いかに時が流れようとも、中日関係は東アジアないし世界でも極めて重要な2国間関係の一つであるという事実は変わらない。

 今、両国の関係は危機に向かっている。子供の時より、今の中日関係は著しく悪化したと、ひしひしと感じている。例えば、領土問題で、一度改善した中日関係は再び冷え切った。2013年度の「中日共同世論調査」によると、9割の中国人と8割の日本人が、現在の中日関係は「悪い」と判断している。いずれも過去9回の調査で最悪の水準である。今の中日関係は氷河期と言えるほど深刻である。また、中日関係の行方に悲観的な見方を持っている人も増えている。今後、両国関係は改善に向かうとみる中国人や日本人はともに1割程度に過ぎず、関係の悪化が更に深刻化するとみる割合はむしろ高かった。それぞれ、中国人は45.3%と半数近く、日本人は28.3%と3割近くまで拡大した。

 このような深刻な問題はすぐに解決できないと思うと、悲観論を唱えている人は多い。しかし、実際の中日関係は、私たちが想像する以上に緊密である。私たちは中日関係の未来に自信を持たなければならない。

 両国の緊密な関係を深めるのは人々の交流である。去年、私は交換留学生として日本へ派遣された。日本にいた時、日本の皆さんは本当に親切にしてくれた。留学していた大学の半分以上の留学生は中国人で、その数は私の想像をはるかに超えていた。地元の高校で勉強している中国の高校生も結構多い。また、氷河期と言っても、中国の観光客の数は少なくない。中日共同で開催されたイベントも以前より多くなってきた。特に、音楽やアニメなどの趣味に基づき、両国の若者たちが一緒にやったイベントは少なくない。その中にはイベントに参加するため初めて日本に来た中国人の若者がよく見られた。帰国後、日本の事情を聞きに来た友達に、私は自分の見たことと感じたことを素直に話した。たぶんほかの初めて日本を訪ねた人は帰った後も親戚や友達に自分の感想を話したことだろう。

 そして、日本側からは新学期に日本の大学の先生が日本語教師として私たちの大学に派遣された。つまり、私たちには日本語を教えるという交流が始まる。また、私が今住んでいる町には日系企業が結構ある。これらの企業のおかげで、当地の産業は以前より充実し、経済もずいぶん発展した。大学の先輩たちには日系企業で働いている人が何人かいる。経済面以外でも、彼らは会社の日本人たちに当地の文化面のことも時々紹介する。こうすることよって、相手国のことを理解できる人が増えると思う。だから、民間の交流は問題解決を求める重要なキーである。

 技術が発達した今日、インターネットなどのメディアで様々な情報があふれている。人々もインターネットを通じて、自分の考えを述べることは簡単にできるようになった。しかし、メディアの情報や意見を簡単に受け止めてはいけない。よく吟味してから出した結論は自分の考えである。そして、中国のことわざに「目で見えるものこそ確か(眼見為実)」がある。メディアの情報より、自分が実際に見たことと感じたことこそが真実である。原始的な帆と操帆技術を使い、鑑真大和尚や遣唐使は命をかけて交流を求め、真実の中国と日本を自分の目で見た。私たちも彼らの精神と勇気を見習うべきだと思う。今のような時期こそ、両国の頻繁な民間交流がより一層重要になってきた。

 中日関係の行方に悲観的な見方を持っている人は多い。しかし、私はそうとは思わない。今の氷河期でも、両国の民間での交流を推進している人は多い。このような人々の存在がある限り、両国の交流が絶えることは決してない。私も希望を持って両国の関係を深めるために自分なりの努力をし続けるものと考えている。

 
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