中日関係の行方
譚裕儒(川崎精密機械(蘇州)有限公司)
最近、中日関係について「一衣帯水の隣国」とか「二千年の友好関係」とかいうキャッチフレーズに取って代って、よく「中日関係の行方」という表現を耳にするようになるが、「ゆくえ」とはどういう意味であろうかと、気になって、早速、手元にある『広辞苑』を開いて見ると、「①進んで行く先。行くべき方向。②前途。将来」という主な意味が二つあることが分かった。つまり「中日関係のゆくえ」とは中日関係が新たな局面を迎え、転換点に立たされて、今後の中日関係がどういう方向に向かって行くのか、どういう針路に沿って展開していくのか、といったような些か懸念も含めている表現であると思う。
個人レベルの関係においても国同士の関係においても意見の食い違いや主張の不一致、時には、利益利害の対立などが付き物であり、避けられないのである。しかしながら、「大同小異」という大局的な立場に立って、対立や不和を克服できるはずである。また、最も大事なのは「和而不同」という理念を貫徹して、いま中日関係の直面している問題に臨むべきであると思う。「和而不同」は『論語』にある表現であり、「君子は和して同ぜず。小人は同じて和せず」と解される。「和」は、主体性を保ちつつ、私心を差し挟まず、心からとけ合う状態。「同」は、主体性がなく、気まぐれや利害関係などで他人と同調するうわべだけの付き合いを言い、いわば、「付和雷同」ということである。即ち「和」という精神を貫き、双方の「不同」を認めつつ、食い違いを乗り越えて行くのは「中日関係の行方」であり、取るべき道でもあると確信している。
大学卒業して、間も無く一年間になった。日本語学科の卒業であるから、身につけた日本語の知識を職場に活かそうと考え、日系企業に就職することを決めた。社会人になっている、いまの自分は、中日関係の行方について学生時代より考える視野も広くなり、視点も複眼的になっている。前に勤めていた積水化学の社名は、中国最古の兵法書、「孫子」にある「勝者の戦は、積水を千仞の谿に決するがごときは、形なり」に由来するそうである。当該会社は年に二回、蘇州郊外に位置する玉屏山で環境に優しい植林活動を行うことになっている。ここにおいても、中日の「和」による協力関係が健在しており、中日の「絆」も様々な形で結ばれていると痛感している。両国の中小企業間の協力関係は一層強固なものになっている。一方、日本の中小企業は、中国への投資も増えつつあり、金額としては全体の90%以上を占めている。そして、現在、中日の経済関係は、切っても切り離せないほどまでできており、優れた状態が続いている。なお、中日関係のゆくえはどのような方向に向かえばよいかについて私は私なりに次のように考えている。中国の大気汚染が深刻になる一方で、環境保護に中国政府は目を向け、日増しにそれを重視している。戦後の経済成長期を経た日本では、同じく汚染問題に悩まれ、最後に公害等の解決に漕ぎ着けたため、環境保全などに関する優れたノウハウを持ち、豊かな経験が積み重ねられて、成熟した技術が生まれてきた。公害根治、環境保護などの分野において中日相互協力を通じて必ず大いに成果を上げることができるとともに、堅実な土台である民間交流や学術交流なども一層活発になれば、中日関係は現在より明るい明日を迎えてこられと期待できよう。
経済の好景気と裏腹に、中日関係が悪化する一途を辿っている。一方的な釣魚島の国有化によって領土問題が一気に過熱化したこと、防空識別圏による飛行機異常接近とのニュース、中国の庶民の憤慨を呼ぶ靖国神社参拝等、といったような好ましくない出来事が頻発して、憂慮すべきである。問題が起こるとき、解決方法を熟慮しなければいけない。様々な摩擦を解決するための「行方」は「和而不同」に求めるべきである。つまり、「大きな共通点を見つけ出し、小さな異なる点を残しておく」という「和」の思想に基づいて、互いに相手の立場に立った上で、客観的かつ冷静に相手の考えを分析しながら、winwinの解決方法を講じることを呼びかけたい。なぜかと言うと、アジアの大国としての中日両国は、それぞれの優勢を持ち、中日関係の行方はアジア地域の発展に関わることであるためでる。中日両国は相互信頼の関係を深め、いま直面している難局を打開するための環境を整え、それぞれの優勢を発揮させ、補完関係を強化していく中で、緊密な協力関係を発展させることができる。
「和」の観念を掲げ、様々な摩擦や対立等の解決に臨んでいれば、継続的友好、発展を維持できるゆくえを見出すことができる。微力ながらそのために、私が頑張っていきたい。最後に、周恩来総理の生前に中日両国関係についておっしゃった「二千年友好、五十年対立」という言葉を以て、小文を結ぶ。 |