人口構造の調整が必要に | ||||
聞き手=張樺 中国人口学会副会長・中国人民大学社会モデルチェンジ・社会管理協力革新センターの翟振武教授は中国の計画生育政策の制定に参与し、同政策が中国にもたらした変化を経験、目撃した人物として、中国の人口と計画生育政策について自らの見解を示している。
計画生育の効果無視できず ――どのような背景のもと、中国に計画生育政策が実施されたのでしょうか。 翟振武(以下「翟」と略す) 1950~60年代、死亡率が急速に低下したと同時に、女性一人当たりの出産平均が6、7人だったため、出生率は常に高水準を保ち、中国の人口増加率は急速に高まりました。60年代は基礎人口6億人の上に、年間平均出生数は2700万人でした。毎年、2300万人以上が純増しており、人口増加率は2・5%にまで上がったため、資源、環境、経済に大きな負担をもたらしました。 当時、中国だけではなく、世界的にも同じような状況だったと言えます。急成長する人口が発展に与えたマイナスの影響は、国際社会から多くの注目を浴びました。1974年、ブカレストで開催された国連世界人口会議では、計画生育政策を推進し、加速する人口増加に対する制御を呼びかけました。 その後、インドと中国は、計画生育政策の実施を提唱し始め、中国の台湾地区は「家族計画」の実施に成功しました。 ――計画生育政策を「一人っ子政策」と呼ぶ人もいますが、これは正しいのでしょうか。 翟 正確だとは言えません。中国の計画生育政策には、「一人っ子」「一人っ子半」「二人っ子」「三人っ子」などの政策があります。 計画生育が実施され始めた時、「晩、稀、少」、つまり、遅めの出産、間隔を空けた出産、少なめの出産が提唱されました。1980~1984年は「一夫婦に子ども一人」、つまり「一人っ子政策」が提唱されました。1984年になると調整が行われ、体が不自由、または何らかの欠陥がある子どもが生まれた家庭では2人目を産むことができるようになりました。農村部では「一人っ子半政策」、つまり1人目が女の子の場合、2人目の子どもを産むことができます。その後は「双独2子」、つまり夫婦両方が一人っ子である場合、2人目の子どもを産むことができます。片田舎の山地、辺境地域などは「二人っ子政策」が実施されています。放牧地域、少数民族が集中する地域にある農村は「三人っ子政策」が実施されています。チベット自治区では、計画生育政策は実施されませんでした。 ――中国の計画生育はどのような成果を遂げましたか。 翟 中国が計画生育政策を実施したのは1970年代初期のことでした。四十数年間、中国では、累計4億人超の人口が抑制され、人口増加の加速を食い止めることができました。現在、13億人を基礎とし、年間出生数は1600万人、純粋な増加は650万人前後で、平均出産数は1・5~1・6人に減少しました。人口による資源、環境への負担が大いに緩和されると共に、国民の教養が向上し、中国、そして世界経済・社会の長期的かつ健全な発展のために大きく貢献しました。そのため、その功績は無視できません。
出生性別比の不均衡が続く ――現在、なぜ「単独2子」政策の実施が必要なのでしょうか。 翟 長期にわたって人口増加率が低下している一方で、中国の人口構造における問題がますます浮き彫りになってきました。現在、中国の高齢化は日増しに深刻化してきており、労働力不足も出始め、中国の家庭構造も少しずつではあるものの変化しています。特にここ20年の間、中国の出生人口性別比の不均衡が続き、家庭での高齢者扶養、そしてリスクに対応できる能力の低下を引き起こしました。 既に変化した人口状況に適応し、人口の長期的かつ均衡的な発展を促進するために、計画生育政策を改善し、調整する必要があるのです。 ――「単独2子」の普及による人口の急激な増加を懸念する人もいますが、その可能性についてどのようにお考えですか。 翟 政策の実施後、全国の出生数と人口総数は一定の割合で増加すると考えられます。推計によると、これから5年間は、出生数が毎年約1、200万人増加するため、蓄積された生育欲求が満たされ、今後2、3年の間に、ちょっとしたベビーブームが起こると考えられます。しかし、コントロール、受容できる範囲内にあるため、経済、社会の発展と公共事業に対し大きな衝撃や影響を与えるほどではないでしょう。
全面的な緩和政策には時間 ――「単独2子」政策を第2子出産の全面的緩和への道しるべと見なす人もいますが、どうお考えですか。 翟 長期的に見ると、すべての夫婦が子どもを2人育てられるとなれば、大多数の国民の生育欲求を満たすことができるでしょう。そして、高齢化の進行をいっそう遅らせ、人口構造を改善することができます。しかし、今すぐ「2人目出産」政策を全面的に緩和するとなると、現在ある人口構造と生育ニーズなどの条件の下で、将来的な人口総数は15億を超え、しかも政策実施後、短期間の内にベビーブームが起こり、年間出生数は3000万、さらに3500万を超えると考えられます。 総合的に考えれば、今の段階で「2人目出産」政策を全面的に緩和することは人口の長期的かつ均衡的な発展のためにはならないと言えるでしょう。
人民中国インターネット版 2015年1月
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