陳舟少将:今年の国防予算について

 

プロフィール

陳舟(Chen Zhou)少将

1953年12月生まれ。1969年12月に入営。現在、中国人民解放軍軍事科学院国防政策研究センター主任、中国国防白書起草作業専門家グループの長で、階級は少将。

最近、「国防予算増加率約10%」という2015年予算案に関連するニュースが中国内外で反響を呼んでいる。中国国防費の持続的な増加に対して、外国メディアは不安を示し、中には中国の国防費増額はアジア地域の安定と国際秩序に脅威をもたらしていると報じた。そこで、人民解放軍軍事科学院国防政策研究センター主任・陳舟少将にインタビューし、中国はなぜ継続的に国防予算を増額するのか?国防費の使途は何か?次第に増強されている中国の国防力は世界の安全にどのような影響をもたらすか?について見解を聞いた。

世界レベルに及ばぬ

――国防予算は今年ほぼ10%増額されますが、世界的に見るとどのレベルでしょうか?

 陳舟少将 現在、世界各国の平均的な国防費が国内総生産(GDP)の2%前後であることから見ると、米国は4%前後、ロシアは4~5%であり、その他の主要な大国はみな2%以上を維持している。中国はここ15年来の国防費はGDPの1・3%~1・5%であり、今年の数字も大きな変化はない。

 ここから、中国の国防費は世界の主要国に比べてかなり低い水準であり、世界的なレベルに及ばないことが分かる。。

――今年のGDP成長率予測は昨年より低い7%にされましたが、国防予算は2011年以降5年連続二桁の増額です。これは経済発展よりも国防力増強を重視しているとは言えませんか?

陳 昨年のGDP成長率は7・4%で、国防予算増加率は12・2%だった。GDPは10兆㌦(約62兆5000億元)を超え、国防費は8082億元(約16兆1640億円)だった。この対比から、中国の国防費はその1・3%だったことが分かる。従って、経済成長の鈍化、国防予算の増加という表面的な現象だけ見て、中国が国防を重視し、経済を軽視していると断言することはできず、経済建設が依然として中国発展の中心だと考えている。

 前述したように、国防費の増加率が幾らであろうと、実際の支出は経済総量(GDP)の1・4%前後である。これは中国国民経済発展にふさわしい必要額である。中国の国防費増額に関する海外の論評について言えば、中国の絶えず成長しているGDPとの関連で見なければならず、両者は「水位が高くなれば船も上がる」という関係である。長年、国防費に関心を持って見てきた立場から客観的に言えば、中国の国防費は適度で合理的な成長傾向を保っている。

国防・安全に見合う

――主にどの分野に使われますか?

陳 主に以下の6項目の「不変需要」に充当する。①国家主権、安全、発展による利益の擁護②国家安全戦略、軍事戦略の発展に対応③世界の新軍事変革に対応④国家経済・社会の発展に対応⑤国防・軍隊改革の深化に対応⑥軍隊任務の開拓・発展、もっと多くの国際的義務引き受けに対応。

 国際情勢の千変万化、中国社会の急速な発展に伴って、われわれが向き合っている安全環境に変化が生じ、それに対応する国防需要にも変化が起きる。例えば、テロ行為のエスカレート、分裂主義勢力の蠢動{しゅんどう}など、中国が直面している安全環境は非常に複雑であり、国家安全、国民利益の擁護の任務はますます重くなっていることから、国防費増額と国防・安全の需要は見合っている、と言える。

 このほか、中国は国際的に大国としての責任と義務を果たさなければならない。ここ数年のアデン湾の航路防衛行動、イランの化学兵器輸送行動、国際人道主義支援行動、国連平和維持行動(PKO)などに出動し、中国軍はますます多くの非戦争軍事任務に参加し、世界的な舞台で活躍する度合いが高まっている。中国がアジア地域の安定と世界平和のために貢献するためには必要な国防費で支えなければならない。

――国防費の使用とその管理はどのように行っていますか?

 陳 国防費は科学的、規範的に、厳格に管理されている。改革の深化に伴って、軍隊はさらに国防費の管理システムを強化しつつある。昨年、軍隊は模擬訓練機材の選択、病院財政・経済管理などの項目について、試験的に成果評価を実施し、経費の効率的使用の管理制度を構築し、その理念を経費配分、使用、監督の節目にしっかり適用し、予算編成・執行を規範的に行い、経費支出責任を明確にし、「金を使った場合はその効果を問い、効果が低くければ責任を問う」ことにして、戦略的な計画細分化において、国防予算と連携している。

 

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