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技とモラルを次世代に | ||||
今年51歳の鄧守超さんは省指定の無形文化遺産・大洪拳の5代目伝承者だ。幼少の頃から父の憲文さんに武芸を習っていたという。鄧さんによると、大洪拳は徐州の代表的な伝統武術で、数千年の歴史がある。三晃膀とも呼ばれ、質朴簡素で力強く、武術らしさにあふれている。門下生の中からは他国の侵略に抵抗し、暴虐を取り除き善良な民を守る豪傑が数多く現れた。鄧さんは「私の祖父は民国時代に幅広く弟子を取り始めましたが、武芸を伝授するだけでなく、武芸者の持つべきモラルを身につけさせようと注意していました。武芸をマスターしても道徳が欠けていれば、必ず社会にとって大きな害悪になります」と話す。鄧さんの2人の息子も小さいころから父親に武術を学んできた。江蘇師範大学で学ぶ次男は昨年、消防隊員と果敢に協力し、炎を上げる民家から一家4人を救出した。「私が心配すると思ったのか、息子は最初このことを話さず、テレビで報道されるまで私は知りませんでした。燃えた家は高さ4、5メートルで、あの子は小さいころから練習していた武術と丈夫な体を頼りに、数秒間で2階の窓から入ったんです」 大洪拳をより広く伝えていくため、鄧さんは沛県に大洪拳武術学校を開いた。地元出身者のほか、全国各地から来た生徒も多く、全校生徒は数百人に上る。ここで学ぶ子どもたちは武術を毎日稽古するだけでなく、9年制義務教育の定める文化科目を学ばなければならない。鄧さんは「武術を習得するには苦しみに耐える必要があります。もし子どもが苦しみを恐れたり、父母が子どもに苦しい思いをさせたくなかったりすれば、絶対に続きません。前の世代の武術家は武術の鍛錬には『三つの情熱』が必要だとよく話していました。つまり学生の情熱、先生の情熱、父母の情熱です。それがあってこそ武術をしっかり身につけられます」と説く。進んで苦しい修業に励む多くの生徒を指導してきたことに鄧さんは満足を覚えている。沛県中学校のある生徒は毎朝5時半、稽古に参加するため、雨の日も風の日も鄧さんの学校に通い続けている。彼の教え子からは全国武術大会の優勝者も現れている。
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人民中国インターネット版 2015年6月 |